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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第二章 消えた常闇の巫女
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二章 プロローグ

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第37話 第二章 プロローグ 公開いたします。


#第二章の更新は1回/1日 程度を予定しております。


それではお楽しみください。

 第二章 消えた常闇の巫女


 プロローグ




 湿り気を帯び、澱んだ空気で満ちている石造りの部屋。

 そこかしこに乱雑に積まれた木箱は半ば朽ちており、足元や石壁には得体のしれない何かが静かに這いまわっていた。

 部屋の中央には小さな丸テーブルが一つ置かれており、その上にはワイン一本が入る程度の木箱が置かれている。


「間違いないのだろうな?」


 闇色に染められたフード付きのローブを纏ったものが問いただす。


「そりゃぁもう。間違いなく『東』で手に入れた一級品でございます。私共信用こそ第一の商売。そこに偽りは御座いませんとも」


 何も見えないローブの中から、鋭い視線だけを突き立てられながら、やせ細った無精髭の男は言った。


「フン。いいだろう。」


 無造作に置かれた革袋を開けてジャラジャラと様子を確認した痩せた男は


「この品を手に入れるため、手前どもかなりの無理を致しまして、つきましてはもう少し……」


 そこまで言ったところで、痩せた無精髭の男は声を詰まらせる。

 いつの間に抜いたのか、自分の喉元に突き付けられる刃物に身を仰け反らしながら。


「過ぎた欲は身を滅ぼすと知れ。だがいいだろう。お前がどうなったところで知ったことではないからな。」


 失敗した。

 そう後悔していた無精髭の男だが、目の前に置かれた2つ目の革袋を見て、心底安心した。


 目の前の木箱をローブの内側に抱え込むと、ローブの人物は闇にとけるように姿を消したのだった。



 その様子を確認すると、痩せた無精髭の男は2つの革袋を握りしめ、急いでその場を離れるのだった。



 息を切らせながらいつもねぐらにしている路地に転がり込んでくると、痩せた無精髭の男は懐から酒瓶を取り出し一気に煽った。

 だらだらとその髭を酒に濡らしながら、空になった瓶をその辺に転がすと先程受け取った革袋を開く。

 金銀銅の輝きに息をのみ、だらしなく口元を緩めると、更に追加でせしめとった革袋も開けた。

 中に見えたのは金の輝き。


 クソ、これならもっとふんだくれたんじゃねぇのか?


 そんな事を考えていると、ゆらりとその金貨が動いた気がした。


 目をこすりぽかんとしたその顔に、突如袋から飛び出した何かが、男の顔を覆いつくした。


「!!!!!」


 慌てもがく男が、自分の捨てた瓶に足を取られて、尻餅をついたとき、ビチャっと排水溝から飛び出した何かにその首を絡めとられ、抵抗するまもなくあっという間に排水溝の中に引きずり込んでしまった。



 スライムイーター。比較的おとなしい巨大な巻貝に似た魔物。

 下水などに発生するスライムを探して海から排水溝などにたまに迷い込んでくるその魔物。

 臆病で人を見ればすぐに逃げ出す上に、排水溝の掃除にもなると放置される事が多いその魔物は、好物のスライムを見つけたときばかりは、その隠れた獰猛さを存分に発揮するのだという。



 ◇ ◇ ◇




 城塞都市シリウスから東へおよそ5日。

 東の海と呼ばれる外海に面した岬にそれはあるらしい。


 ノーザ王国・王都リオン


 北の大陸にいくつかある国家の中で比較的歴史は浅いものの、それでも現在最も国力をつけたと言われてから随分と久しい。


 建国は数百年前に遡るが、初代は貿易王として名を馳せた王が開いたとされており、擁する港の整備に力を入れ、他大陸の国家などとの貿易によりグングンと国力を伸ばすとともに、勢力を伸ばした国だ。



 高台に聳え立つ王城から港へと貴族街区、商業区、平民街区、港湾区となっており、港から真っ直ぐに伸びる大通りには荷を積んだ荷馬車が忙しく行き交っていた。



 そんな王都リオンと城塞都市シリウスのほぼ中間、物流の中継都市として力を付けたのがナラシーである。

 元々はキャンプ地であったその場所も、いつしか街となり、数年前には独立商業都市を名乗り、王国からの離脱を試みて、国をちょっとした内乱状態に陥れた元凶の都市であるが、その目論見も失敗に終わり、現在ではとある貴族により統治されている。


 儚い夢をみた豪商の何人かは、その人生を全うすることなく闇に葬り去られるという結末を迎えた。



 リーリカの説明を聞きながらざっくりとした地理的な位置関係をイメージする。

 ちなみに、5日というのは1日に30km近く歩いての場合らしい。

 距離の単位がはっきりと決まっていないためにいまひとつ信用性がないのだけど。


「今回は荷物もあることだし、馬車での移動になるのかしら?」


「そうですね。ただしかかる日数はあまり変わりありません。一度ナラシーの街まで荷馬車を用意して、そこで一度乗り換えたほうが良いでしょう。」



「そのまま王都まで行く荷馬車はないのかしら?」


「ナラシーの先は山越えです。シリウスから発った荷馬車は一度ナラシーで休憩させないとなりませんので」


 なるほど、途中で荷物を抱えたまま馬に何かのことがあれば一大事よね。


「なのですぐに次の乗り換えの馬車が見つかるならば、ナラシーへの道中で一泊、さらにそこから王都への道中で一泊の三日程度で到着できるかと。」



「ほんとにあまり変わらないわね。」


「仕方ないですね、複数頭仕立ての乗用の馬車ではありませんから。」


 なるほど、そんなものかな。なんて考えながら私とリーリカは依頼された仕事の計画を練るのだった。




 ◇ ◇ ◇



 そもそも事の発端はベロニカさんのお店にいつも通り顔を出したときの事だ。


「あら、エリスちゃんにリーリカちゃんいらっしゃい。」


 機嫌よく私たちを出迎えてくれた彼女の前には、一着一着箱詰されたドレスの箱の山があった。

 どうやら納品先別にざっくりと仕訳をしていたらしいのだけど


「ちょっと悪いのだけど、いつもお願いしている御者さんが急病でね、あなた達に完成したドレスを届けてほしいのだけど。」


 その時もう少し私の頭が働けばよかった物の、うっかり


「勿論いいですよ?」


 なんて安請け合いしてしまったのが失敗だった。


 目の前に積まれているドレス、およそ50着の送り先は、王都リオンなのだそうだ。

 なんでもおよそ一月前に行われたグローリー男爵家でのあのパーティー、その時に売った80着のうち、60着ほどはオーダーで、そのうちの50着ほどが王都の本邸への納品を希望されたらしい。


 そして、あまりに小さく畳んでしまうと形が崩れてしまうドレスである。

 50個口のドレスの山は、それはもう壮観というしか他なかった。



 ベロニカさんの店から顔を引き攣らせながら、宿に戻ってきた私は支配人さんのとこに行くと思わずいい話が聞けてしまった。


 概要を聞いた支配人さんは、


「それならば下層で荷馬車を一度買ってしまって、帰りにナラシー辺りで売って処分すると良いでしょう。そして行きは馬持ちの冒険者を二組、一人はナラシーまで雇い、もう一人は王都まで雇うのです。帰りは王都のギルドで同様にナラシーまで雇えば効率がよろしい。」


 と。


 なんでもナラシーは中継地点であるために、代替えの荷車等はすぐに売れるのだそうだ。

 そりゃもし運送中に荷車が壊れたりしたら、新しい荷車は必要だもんね。


 それに馬持ちの冒険者とはその馬の維持に結構お金がかかるらしく、そういった護衛を兼ねた車曳を受けるのはよくあるとのこと。



 ちゃんと頑張って、早くサラに追い付かないとね。

 いつか必ずその日がやってくるという確信がある私は意気込みを新たに準備に取り掛かるのだった。



 そして、生涯忘れられないその夏は始まったのだった。

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第37話をお読みいただきましてありがとうございます。

予定より早く開始するために更新頻度が安定しにくいかもしれませんが、第二章は色々重いエピソードですが、完結まで頑張りたいと思います。


気に入っていただけたら嬉しいです。

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