訓練の日々
こんにちは。
味醂です。
何とか間に合いました。
気が付けばエルフ 第29話公開です。
ごゆっくりお楽しみください。
訓練の日々
私たちがシリウスに戻ってからの数日は、至極ありきたりな依頼をこなして過ごすことになった。
薬草採集や食材調達に始まり、常時依頼などと呼ばれるドロップ素材の収拾など実に多岐にわたる。
冒険者というものは大きくわけて二種類で、旅をしながら移動して、都度行く先々で仕事をする者。
比較的大きな町などに拠点を置いて、丁度今の私たちのように細々とした軽度な依頼をこなして生活する者にわかれるのだという。
驚いたことに、サラは前者の冒険者であり、いくつかの都市を回りながら暮らしていたが、偶然私と出会い今はシリウスで足止め中だという。
もっとも歩いて数日の都市をいくつか回るだけだそうで、実際に年間の半分ほどはシリウスで過ごしているそうだ。
なんでも、秋になると西の方へ移動して、西の大陸か、もしくはその周辺の都市で過ごし、冬を超えるとここ北の大陸のシリウス周辺に戻ってくるのだという。
どうして?
と私が聞くと、アタシは暑いのが嫌いなんだよ。
と言っていた。
とはいえ、冬のシリウスはかなり寒いらしく、宿泊の際にも薪代を加算されるとかで、それを嫌って西の方面へ旅立つんだって。
もっとも数年前には、パーティーを組んでいたそうで僻地への遠征も多かったらしい。
まぁ、私なんかと違ってサラは、いやリーリカもなんだけど、辺境で凄い大冒険をしていた!
とか言われたとしても全然驚かないけどね。
さて、随分と話が逸れてしまったけれど、今私が何をしているかといえば……
野営の準備の訓練のために西の森の傍の草原にきていた。
「ほらほら、そんなんじゃちょっと風が吹いたら飛ばされちまうぞ!」
「あう……」
げしげしと張ったロープを蹴るといとも簡単にロープを固定していた楔が外れてしまった。
野営、つまり野宿するときに大事なのは、身体を濡らさない事だという。
長時間雨に打たれると、たとえ夏でも場合により体温が下がり切り死んでしまう事すらあるというのだ。
まぁ、低体温症って言葉は私も聞いたことがある。
それでも長時間雨に打たれ続けるような機会はなかっただけに、まさかそこまで深刻になるとは思ってなかったのが本音だった。
ではその危ない雨から身を守るにはどうするか?
簡単である。
テントを張ればよいのだ。
森の中なら、岩屋や巨木のウロを利用すれば簡単で楽なのだけど、これが周囲になにもない草原となると話は変わってくる。
その後しばらく悪戦苦闘していた私だけどついには音を上げた。
「サラ、ゴメン、降参。」
その様子にヤレヤレといった顔でサラはコツを教えてくれた。
「いいかい?まずは仮の骨組みで天幕を立ち上げたら、端に結わいたロープを天幕の延長になるように張ってくるんだ。そうしたら、そのロープと、真っすぐに交わるように楔を打ち込む。」
つまりは、ロープと楔が直角に交わるようにするという事らしい。
「そうしたら骨組みをきちんと固定して反対側も同様にロープを張るんだ。」
そんな説明をしながら丁寧に実演してくれる。
「まあ、最悪天幕にくるまって丸まっておくんだな」
一通り説明するとサラは身も蓋もない事を言って説明をおえたのだった。
「なかなか難しいものね。」
ほんのり心が折れかけて呟くと、サラに頭をぽふぽふとされた。
それをじっと見ていたリーリカは、おもむろに近づいてくるとムギュっと背中から抱き付いてくる。
「何も最初から上手くできなくたって、いいんですよ。」
そんな事を言いながら。
私の冒険者修行はまだまだ続きそうだった。
◇ ◇ ◇
結局二晩ほど野営をしてまだ早い時間に街に戻った私たちは、ギルドで素材を換金したのち、広場でお茶をしていた。
ただし、一度ベロニカさんのお店でしっかりと着替えさせられてから、だ。
今着ている服は、女性冒険者を意識したものだという。
私が着ているのは丈の短いローブなのだけど、インナーボトムはショートパンツになっていて胴はコルセットを改造したボディスーツのようになっていた。
コルセットにブラと片口の飾りを取り付けたといったほうが、形状はわかりやすいかしらね。
その上に貫頭衣型のショートローブを着込むのだけど、丁度片口の部分が半月型に空いていて、そこからインナーのショルダー部が飛び出てくる。
貫頭衣のうしろにはフードもついていて、クロークとしても使えるようになっている。
ローブとか着てるとなんだか魔法使いにでもなった気分になれる。
ってわたし魔法使いだったかもしれない。
サラのほうはといえば……なんともセクシーな
革製のビスチェに、超ミニのスカート。
そのうえにサイドスリットのパレオを巻いていた。
なんというか、防御力を無視しすぎている様な気がしてならない。
もっとも、攻撃力は抜群のようで……道行く男性をことごとく射抜いてるようだった。
そしてリーリカなのだけど、なんとこちらはシスターさんのコスプレにしか見えない。
どうみてもシスターさんなのだけど、妙に艶めかしいのよね、このデザイン。
かなり裾の広がる、巻きスカート状で、合わせの部分は結構露出が高い下半分の形状に対して、上半身はカラー付きのボタン止め。
これ、教会とかから苦情来ないのかしら?
なんて不安になってしまうほどだ。
そもそも一体どんな人が着るような設定なのか、ベロニカさんに聞いてみたい。
「あ、サラ、下着見えてるって。」
足を組み替えるたびにチラチラと見えてしまっているのに気が付いて、注意すると
「別に見たいやつにはみせときゃいいだろ?」
なんてことを言われてしまった。
そこまでハッキリと言われてしまうと、なんだかそれ以上言えなくなってしまう。
リーリカにアイコンタクトで助けを求めてみたものの、ついっ。と知らんぷりされてしまった。
私が晒し者の刑から解放されたのは、ベロニカさんのお店で働いていた子が呼びに来たお昼ごろのことだった。
あれ?そういえばこの子の名前まだ聞いてないじゃない。
◇ ◇ ◇
「ただいま戻りました。」
そういってお店のドアをあけると、数人のお客さんが来ていたようだ。
「三人ともお疲れ様。ちょっと奥で休んでて頂戴。」
ベロニカさんは接客中で忙しいらしいので、そのまま奥へと失礼する。
「こんなんじゃ体が鈍っちまいそうだよ」
奥に引っ込むなりサラは悪態をついていた。
その様子に苦笑いで応え、リーリカに
「リーリカは大丈夫だった?嫌じゃなかった?」
と聞くと
「いえ、ただじっとしているだけなので暇だっただけですね。嫌と言うほどのことでもありません」
なんて涼しい顔で言っていた。
涼しい部屋でしばらく待っていると、ベロニカさんが入ってくる。
彼女はにこやかに、告げるのだ。
「さあ、グローリー男爵家での帰還パーティーが二日後に決まったわよ!」
思ったより日程が短い。
「それで、準備は間に合うんですか?」
「えぇ。そりゃもう。ただあなた達には明日はしてもらうことがあるの。」
「それは構わないですけれど、一体なにをすればいいのでしょう?」
問いかける私にベロニカさんは笑顔を浮かべるだけで
「それは明日になってのおたのしみよ。」
とウィンクするばかりなのだった。
それ一番不安になるヤツだからね!!
勿論ツッコミは心の中に留めておいたのだけど。
一体ベロニカさんは私たちに何をさせるつもりなんだろう?
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ第29話をお読みいただきましてありがとうございます。
またブクマ支援、そして新たに評価を入れていただきました方、心よりお礼申し上げます。
自分で書きたくて書いている作品ではありますけど、反響のない創作物の公開・作成作業というのは非常に辛いものですので。。。
非常に励ましになります。
それではまた、気が付けばエルフ 第30話でお会いしましょう。




