無自覚な傍観者たち
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ 第23話 公開いたします。
それではお楽しみください。
無自覚な傍観者たち
集落に到着した翌日、村長の家の前には十人ほどの村の男たちが集まっていた。
被害にあった畑は早朝のうちに村長に案内してもらって確認ずみだ。
村長に並ぶ私たち三人と向かい合う様に集まった彼らに向かってサラが声を張り上げる。
「あたしはサラ。いいか、今回のゴブリン狩りは私が指揮を執る。」
そういいながらサラは首にかけられたギルド章を掲げる。
金枠のギルド章に気が付いたのか、それまで多少ざわついていた村人も静かになった。
「まず確認だが、村の者はゴブリンを見つけても極力交戦を避け、逃げること。どうしても交戦が避けられない場合に備えて他の者から遠くに離れないことを肝に叩き込んでおいてくれ。」
村の男たちの顔を見回すサラ。
異論が出ていないことを確認して続ける。
「皆には二人一組になって、ゴブリンが巣を作っていそうな場所を探して貰う。まず被害にあった畑周辺方向に絞ろうと思うが、誰かそこから山の方角に向けて、岩屋や洞穴に心当たりのあるものはいないか?」
すると数人の者がボソボソと相談し始める。
やがて一人が口を開く
「あの辺りは岩山で、結構な洞穴がある。沢と古い枯れた沢にいくつかある筈だ。」
「では、村の者は二組四人づつに分かれて、それぞれの沢に入ってもらいたい。残りの一組は私たちと共に……そうだな、どちらの沢が数が多い?」
「枯れ沢だ」
だれかが答える。
「そうか、では私たちと、案内役に一組、捜索に二組は枯れ沢を、残りの二組は沢を頼む。武器は必要だが小回りの利く使いなれた鉈などにしてくれ。奴らは結構はしっこいからな、なまじ得物が大きいと邪魔になる。」
「見つけた場合は直ちにここへ。見つからなかった場合も昼には全員ここで一回集合だ。」
それぞれが動き出したところで村長に声をかける。
「それでは村長さん、私たちは彼らと枯れ沢の探索に向かいます。申し訳ありませんがお昼の炊き出しをお願いしてもいいですか?」
「勿論だとも、協力させてもらおう。」
「お願いします。それでは行ってきます。」
そうして村長や奥さんたちに見送られながら、ゴブリンの巣の捜索は始まったのだった。
◇ ◇ ◇
ゴブリンの膂力はそう高いわけではない。
その貧弱な体格からすれば、ジャンプ力などには優れるものの、力も弱く打たれ弱いのだ。
その代わり彼らは狡猾な知恵をもち、時には罠を作ることさえある。
故に、藪の中を進む私たちはそういったものも警戒しながら進まなければならなかった。
私たちに同伴してくれた二名はこの村の中でも特別若い。
若いと言っても、既に成人として認められており所帯も持っている訳なのだけど。
同年代といって差し支えない若さだ。
もっとも、エルフを目にした時、そのエルフの年齢を正しく測れるものが居るかどうかは、また別であり、同じ理由から彼らに同じ感想を期待するのも無理な話だった。
それにしてもこの奇妙な一行はどのように見えているのだろうか?
周囲を見回してみれば、おおよそ冒険者らしいのはサラしかいないのだから。
少なくとも、前の世界のイメージならば、異世界ファンタジー×エルフとくれば冒険者のイメージはあったはずなのだけど、現実的に見てみてしまうと、その認識は間違っていたのではないだろうか?という疑問すら湧いてくる。
やけに絡んでくる蔦を短剣を片手に払いながら、この足場の悪い藪を進む。
「足元がゴツゴツしていて歩きにくいわね」
「そうですね、体重のかけ方に注意したほうが良さそうです。」
愚痴をこぼす私にリーリカはグラグラと動く足元の岩をグリグリしながら応える。
「元々水の流れていた沢が藪で覆われた場所らしいからな」
サラが言いながら案内役の二人を見ると、彼らはコクコクと首を縦に振った。
どうにも『脅し』が効きすぎてしまっているようだ。
不自然なほどに緊張感を漂わせ、前方で必死で鉈を振る彼らを見ながら私は心の中で溜め息をつくのだった。
◇ ◇ ◇
山狩りのために村長からの使いがやってきたのは、昨夜のことだった。
村長の屋敷の前で待っていると良く見知った奴が来た。
「よう、アル。お前のとこにも知らせがきたのか?」
「ああ、昨夜な。ジャンのとこにもか?」
「ああ。」
ジャンと俺はこの村で生まれ育った十五年来の幼馴染だ。
俺たち二人はつい最近、同じく幼馴染だったフィアとリアとそれぞれ所帯を持っていた。
「急な呼び出しだたからな、おかげで昨夜はすっかり邪魔されちまった。」
「ハハハ。そいつは残念だったな。うちはジャンにもしものことがあったら……なんてせがまれちまった」
「バテても知らねぇぞ。」
むしろバテて爆発してしまえ。
心の底から祝福を送ってやる。
やがて他の村の者も集まって、山狩りの号令が掛けられる。
どうやら俺とジャンの二人は冒険者達の案内役のようだ。
屋敷を出発した俺たちは枯沢の場所を指示しながら後ろから付いていった。
途中まで他の村の者もいたが少し前からは最も近い洞穴に向かうらしく俺たちは奥の滝跡の洞穴を目指すことにした。
それにしても……前を行く三人はなんと全員女だ。
サラと名乗った強気な大女。
むかつくことに俺やジャンよりずっと背がある。
おまけに引き締まった体に凄腕の冒険者とくれば妬ましい。
そして長い髪のエルフの女。
こっちはどうやら駆け出しの冒険者らしい。
そのわりに随分と上等な服を着ているし、サラもあれこれと世話を焼いている様だった。
なんだこいつ?
そして輪をかけるようによくわからない奴。
確かメイドと呼ばれる給仕服姿の女だ。
三人の中では一番小柄で、あまり見たことのない顔立ちをしていた。
髪の色に至っては黒ときたもんだ。
こいつもしきりにエルフ女を気にかけては、時折手を貸したりしているのだ。
ほんとこいつら大丈夫なのか?
しばらく藪を進んでいくと大きめの段差が着いた。
「崩れるといけないから体重の軽いあんた達から登ったほうが良いな」
ジャンがそんなことを言っている。
別にどっちが先だろうと構わないだろうに。
そんな事を思ってると不意に脇をジャンが肘でついてくる。
ジャンをみると顔をクイッと段差の方に向けてニヤニヤしていた。
釣られてそちらを見たときにすぐに納得した。
「このスケベ。」
小声で言ってやる
「案内してやってるんだ、ちょっと視姦くらい大丈夫だろ。」
そんな返事が返ってくる。
段差を上る三人の女たち。
縊れた細い腰から緩やかに、ふくよかに丸みを帯びる尻。
何食わぬ顔で近づけば中身を拝めるかもしれない。
真っ先にスルスルと登ってしまった大女はこの際良いとして、おもむろに岩に近づくとそこには白い太腿とそれに続く小ぶりだか確かな膨らみが見えた。
こんなメイドに夜伽の相手でもさせてみたいものだ。
下半身に熱い何かが集まるのを感じながら、手を掛ける場所を探すフリをして場所を少しズレる。
今度はエルフ女の長いスカートの中をこっそり拝もうとした時だった。
グシャ。
不意に音がしたと思えば、首筋に冷たい感触を覚えた。
「オマエたち、大目に見ていれば図に乗って。それ以上その下賤な視線をエリス様に向けたら……」
俺は理解した、段差を登ってたはずのメイドがジャンの上に飛び降り、冷たいナイフのようなものを自分の首にあてているという事に。
「――その汚らわしい汚物を切りとってから殺しますよ」
冷たく言い放つそのメイドの目を見たときに、俺はもう殺されてしまっているのではないかと思ったほどだった。
冗談なんかじゃない。こいつは本気だ。
目を回しているジャンを起こし、段差の上の岩の上で俺たちは『土下座』。
そうメイド女が言う、方法の謝罪をさせられたのだった。
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ 第23話をお読みいただきました皆様、ありがとうございます。
ブクマ等頂いてる皆様にも感謝です。
中々ストーリーが進行せず申し訳ありません。
後々のストーリー骨子自体は既にありますが、書き出してしまうとついつい入れたくなってしまう場面などがあり、第一章の設定文字数を少々修正しないといけないほどです。
それではまた次回、気が付けばエルフ 第24話でお会いしましょう。




