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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
22/144

部外者の責務

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第22話を公開いたします。


注意:後半パートの内容に人道的に不快感を招く恐れのある表現があります。


作中★ ★ ★でマーキングしてありますので、

☆ ★ ☆まで読み飛ばしていただいても結構です。


それではお楽しみください。

 部外者の責務



 もうほとんど日が暮れる頃、私たち三人はなんとか目的の集落へと辿り着いた。

 山間のこの集落では場所によっては既に真っ暗なのだが、集落の入り口辺りは山から少し離れており、まだなんとかといったところだ。



「よし、エリス。まず依頼で村や町についたら、村長や町長の家を訪ねるんだ。」


「そうしたら、やっぱり人に聞いたほうが早いわよね?」


「そうだな、まずはあそこの家にでもいって聞いてみるとしようか」


 うっすらと光が漏れている家に向かって歩く。

 この辺りはみな一軒家のようで、家の周りは垣根で囲われていた。


「生活状態は比較的良いようですね。庭もきちんと手入れされていますし。」


 リーリカがそんなことを言う。


「だな。そもそも冒険者に討伐依頼を出せるだけの集落だ。事前に判っていたとはいえ、思ったよりずっと羽振りは良さそうだ。」


「庭先だけでそんなことまで判るの?」


 私が疑問に思って聞いてみるとリーリカが答えてくれた。



「エリス様。まず生活状態の良くない集落では、暗くなれば灯は落とします。この集落ではほとんどの家々で灯を起こしてますので、少なからず油なり脂には苦労していません。」


 なるほど一理ある。

 私のいた世界でも、倹約生活は電灯のこまめなスイッチオフ!ってのがセオリーだった。


「でも、それと庭の手入れはどういう関係があるのかしら?」


「そうですね、たとえば、そこの庭の奥にある畑ですが、おそらく植えられているのはマメやイモ類でしょう。庭の畑の作物は麦などでなければ税収の対象となりません。主に家人が食べるための食物には目溢しがあるということなのですが、その畑も綺麗に手入れがされ、それを守るための垣根も、きちんと手入れされている。これだけ条件が揃えば少なくとも食べることに不自由しているような段階ではないはずです。」


 うーん、マンション住まいだった私にはイマイチしっくりとくる説明ではないけれど、言わんとするところは判らないでもない。


「うーん、そんなものなのかしら?」


「そんなものです。これだからエリス様は……ほんとうにどんな生活をしていたのでしょう?」


「ははは。。」


 説明したとこでイメージできないだろうと思った私は、とりあえず笑ってごまかすことにする。



 こうしている間にも刻一刻と日が暮れている最中なので気を取り直して戸口をノックした。


「すみません、どなたかおられますか?」


 しばらくしてドアが少し開かれ、中年くらいだろうか?この家の人と思われる女性が顔をだしたのだ。


「こんばんは。冒険者ギルドから依頼をうけてこの集落に来たのですが、村長むらおさはどちらにお住まいでしょう?」


「あれまぁ。また随分と可愛らしいのがきたもんだね。ちょっと待ってなよ?」


 そういってドスドスと踵を返して家の中に引っ込んでしまった。


 やがて



「ほら、あんた、グータラ転がってないでさっさと村長のとこに案内しておいで!!」


「あん?こんな時間にどこのどいつだ?」


「どこのどいつだじゃないよ、このアンポンタン!あんたらがギルドに依頼出したとかで冒険者がきたんだよ!しっかりしとくれよ。」


「バヤカロウ、先にそれを言え。」


 家の奥からあんまり聞きたくないような会話が聞こえてしまったのだった。

 耳がよすぎるのも、どうかとおもうなぁ。


 しばらくして出てきたのは無精髭だらけの顔に、うっすらと赤みを湛えた男だった。


「おう、すまねえな。あんたらがギルドの使いか。村長の家はこっちだ。ついてきてくれ。」


 そういってスタスタと先に歩いて行ってしまう。


「あの男……汚らわしい目でエリス様のお身体をジロジロとみてました。殺りますか?」


 あの、リーリカさん?急に黒いオーラ発して目が本気マジなんだけど?

 そんな物騒なこと言うのよそうね?


 なんてことも言えないので


「気のせいだってば。」


 そう言って男に続いて庭から飛び出すしかなかった。



 男について集落の奥の方へと進んでいく。

 途中完全に日が暮れてしまったので松明に火を灯したら、さっきのオジサンが松明をもって先頭を進んでくれた。


 ほら、そんな悪い人じゃないじゃない?


 しばらくしてついたのは、大きなお屋敷だった。



 庭に入ったとこには精悍な犬の石像、いや、これは狼かな?が祀られており、お供え物までされていた。


「長!冒険者ギルドからの御客人を連れてきたぞ!」


 着くや否や戸口をガンガンと叩き、勝手に開けて大声で叫んでいる。


 なんとも騒がしい呼び方であった。

 案内してくれた人は、悪い人ではなかったようだが、ガサツな人だったようだ。



 ◇ ◇ ◇



 村長の屋敷に案内された私たちは屋敷の一室をあてがわれ、そこに今夜は泊まることになった。

 板張りの簡素な床に、寝台が2つとテーブルが一つ。


 村長が寝台の数が足りない事をしきりに詫びていたけれど、気にしないように伝えた。


 果たしてうまく伝わったかは、定かではないものの。



 夕飯はこれから用意してくれるとのことで、素直に言葉に甘えることにした。


 道中の暇つぶしに、そこらへんの草花を手当たり次第に鑑定していたところ、どうやら食用になりそうな野草などがあったので採ってきていたのだけど、それを渡すと早速夕食に調理して出してくれるという。



 手伝いを申し出た私たちだったのだけど、寝台の数が足りず申し訳ないところにトンデモないってことで明日からの準備に取り掛かっていた。


「どうだ?毒消しは分けれたか?」


「うん。とりあえず毒消しを2つずつ、ポーションを3つづつひとまとめにしたわ。」


「よし、万能ベルトにセットするときは、例えば暗闇で見えなかったり、視力を奪われている時でも分かるように、左右に分けてセットするんだ。」


 サラによると、今回の相手はゴブリンが相手とのことだが、もし営巣されていれば、上位のホブゴブリンが発生している可能性があるのだという。

 なんでもゴブリンというのは、はじめは瘴気の滓、つまりはこの世界に満ちている魔素が不活性化して腐ったようなもの。

 その瘴気の滓から生まれてくるのだという。


 一定数のゴブリンが周囲に生まれると、彼らは営巣し、さらなる繁殖のための準備をする。

 その準備中に最も力と知恵をつけたゴブリンがホブゴブリンへと進化して、いよいよ亜人狩りが始まるのだという。

 そうなってくると、ゴブリンは毒武器に塗り付けて使用するようになるのだという。

























 ★ ★ ★


 つまりは、人間や亜人の女性を攫い、力ずくで犯すのだ。

 女性しかいない私たちのPTにとってちょっと看過できない部分でもあった。


 話がそこに至った時、リーリカがこんなことを念押しした。



「いいですか?エリス様。今回はほぼまだそのような事態までは発展していないはずですが―」


「もし、巣のがあったとして、その中に犯された女性がいた場合は、必ず―」


「一思いに首を切って楽にしてやるのが、情けです。」


 ゴブリンに犯されると、精神に錯乱をきたす脳内麻薬が分泌される、妊娠するまでその分泌は続き、廃人になるのだという。

 ゴブリンの体液……つまりは精子には、そういった毒性があるのだという。


 仮に自我を保てていたとして既に手遅れで、腹を食い破られるまでの余命だというのだ。






















 ☆ ★ ☆


 なんともおぞましく、悲しい話だった。

 話を聞いていたサラも、黙って頷いている。


「討伐任務は駆け出しの冒険者だけで行うという事はありませんが、冒険者として生きていく以上一度や二度、そういった経験をするのは避けて通れない道なのです。」


 極めて真剣に語るリーリカや、黙ってその様子を見ているサラに、その経験を問うなんてことは、間違ってもできなかった。

 そんな判り切ったこと、なにも蒸し返すことはないのだから。



 たかがゴブリン退治と、心のなかで侮っていたかもしれなかった。

 決して強くはなく、退治もそれほど困難ではないゴブリン討伐に、わざわざ冒険者、つまり外部の者が選ばれる理由、その本当の意味に今まで私は気が付けないでいたのだから。



 その後いただいた心づくしの郷土料理の折角の味も、申し訳ないことに私はほとんど覚えていないのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第22話をお読みいただきありがとうございます。

話の内容が重く、不快感を与えてしまった方、申し訳ありませんでした。


話の趣旨的に全部省略してしまう訳にもいかずマーキングとスペースで保護したのですが重要な部分でもあります。


次話はいよいよゴブリン討伐の開始となります。


それではまた次回、気が付けばエルフ第23話でお会いしましょう。

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