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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
21/144

思惑と現実と

こんにちは。

味醂です。


お待たせいたしました、気が付けばエルフ第21話を公開いたします。


ごゆっくりとお楽しみ下さい。

 思惑と現実と



 北の街道をどんどん進み、やがて川に出たところで今度は川に沿って上流へと進路を変える。

 短い下草に覆われた川の土手は道と呼べるほどは踏み固められていない。

 その為か土手の上を歩く私たちの前には度々魔物がその行く手を阻んだ。


 その大半がグリーンスライムと呼ばれる若草色の半透明のスライムで、出るたびに私が魔法ウィンドエッジで倒していた。


 そのほかに出てきた魔物といえば、身体の太さが30センチほどもある大きなベビの魔物で、サラがアッサリと輪切りにしてしまった。

 ドロップした蛇の皮は色々な素材になるらしく、いい値段で取引されているそうだ。


 そういえば私の世界にもベビ革のお財布なんてあったっけ。

 わたしはちょっとそういうのは好みではないけどね。


 そうそう、変わった魔物といえばビッグフロッグが出たのだ。

 土手の茂みから私たちの前に飛び出してきたそれは、なんというか巨大なカエルだった。


 どれくらい巨大だったかと言えば……座り込んだ状態で1メートルくらいはありそうな高さだ。

 私が顔を引き攣らせていると


「それでは久しぶりに少し準備運動でもしてみましょう」


 なんてリーリカが前に歩み出た。


「エリス様、あの魔物は毒液を飛ばしてきますのでご注意を。」


 追い越しざまにアドバイスをくれる。



 大ガエルに対峙する、メイドさん。

 なんてシュールな光景なんだろう?



 どうやらカエルのほうもリーリカを相手と認識したようで、

 ゲココ。なんて鳴いている。


 カエルがゆっくりと、その大きな口を開けたと思ったその時。

 リーリカは身体を低く駆けた。

 そう思ったときには、何かが地面にベチャっと落ちてくる。


 一瞬カエルから目を離しただけだというのに、リーリカは既にカエルの脇に『こちらを向いて』立っており、ただ握りこんだこぶしをカエルの頭の上に「乗せている」ように見えた。


 一方カエルのほうは、大きく口を開けたままただじっとしているだけだ。

 ダラリとカエルの開かれた口から何かが滴り落ちる。

 それを避けたのか?リーリカがカエルから横に飛びのくと、カエルはサラサラと灰になってしまったのだった。


 ナニソレ?怖い。


 全く、何したのかもわからなかった。

 そう、最初に地面に落ちてきたのは、カエルの長く伸びた舌だということは判ったのだけど。


 私にはカエルがいつ舌を伸ばしたのかも、リーリカがそれを恐らくは斬り飛ばし、カエルに何をしたのかさえ

 私にはみえなかったのだ。


 そもそもリーリカって武器なんて持っていただろうか?


「準備運動にもなりませんね。これでは。」


 そんな事を言いながら戻ってくる彼女の手には、黒くそして僅かに反った棒のようなものが握られている。


「なかなか見事なもんだな、さすがは二級冒険者ってとこか」


「恐縮です。お見苦しいものをお見せしてしまいました。つい反射的に斬り飛ばしてしまい申し訳ありません。」


 どうやら舌を斬り飛ばしたことを言っている様だったけど


「その、どうやってカエルを倒したのかしら?私には何が何だかわからなくて。」


 私にはそっちの方が気になったのだ。


「暴れられても厄介なので、これで脳を一突きにしました。」


 そういって手に持った黒いそれを左手で握ると、ゆっくりと「抜いた」。

 それは私の持っている知識に照らし合わせるならば、短刀とよばれるものだ。


 違う事といえば鞘だけでなく、その刃も黒く、しかし鈍く光るその刀身にはダマスカス紋、確かそう呼ばれる紋様が複雑に浮き上がっている。


「持ってみますか?」


 なんて言われるので受け取ってみると、刃渡り30センチもないようなほとんど懐刀だというのに、ずっしりと重かった。


「ダークダマスカスの短刀なんて珍しいじゃないか。」


 サラも興味がわいたようでしげしげと覗き込んでいる。


「故郷に伝わる1本です。私が故郷を出るときに、餞別に頂いたものです。」


「それにしてもそんなものどこに持ってたのかも、いつ抜いたのかもわからなかったのだけど?」


 率直な疑問をぶつけてみると。


「そんな事恥ずかしくて、エリス様にはお教えできませんわ。」


 なんて俯いて、意味深なことを言われてしまった。

 ほんと一体どこに隠し持ってたっていうのよ!?





 とまあ、そんなことがあったのだった。


 ◇ ◇ ◇



 シリウスを出発しておよそ6時間ほど。

 その間に私たちは川を渡ったり、見渡す限り白い花の咲く平原を歩いたりとしてきたのだけど、同時に周囲の景色も随分と変わってきた。


 遠かった山々はだいぶ近くに見えてきたし、広かった川の流れは、いまや渓流のそれと言えるようになってきたりとしている。

 午後の日差しを受けてキラキラと煌く水面の奥、目を凝らすと沢山の黒い影が泳いでいたりするのだ。


 昼食は川底に横たわる巨大な岩盤に生える苔を一心不乱に食んでいる魚を、サラがひょいひょいとナイフを投げて捕まえたりして、それを河原で焼いて食べたりした。


 冒険中の荷物を最小限にするためには、こうした技術も必要という事で、私もチャレンジしたものの、すぐそこにうじゃうじゃといる癖にかすりもしなかった。


 食べきれなかった魚は飯盒の中に吊るして中にチップをいれ、燻製にする。

 あまり時間を掛けられなかったために、今夜と明日の朝にでも追加で燻煙すれば充分保存可能になるだろうとのことだ。


 前の世界では父は不在気味だったために、こういうキャンプ生活のようなことは経験なかっただけに教えてもらう事、すべてが新鮮で、ついでにどれひとつ満足に私には出来なかったのだ。

 実は結構へこんでいたりするのだ。




 川幅も狭まり周囲が切り立った崖になるころ、私たちは河原から這い出して、谷戸のあぜ道を歩いている。

 なんでも河原を歩かなくても来れるのだそうだけど、相当キツイ山越えになるのだという。

 天気も良いことからショートカットできる川沿いに来たわけだ。


 これって、旅の中雨とか降られた日には、一体どんだけ大変なんだろう?

 頭によぎって変なフラグを立ててしまったのではないかとしばらくドキドキしていたけれど、結局それは私の杞憂に終わったのだったけど。


 目的の集落までは、あと2時間ちょっとで到着できるそうだ。



 ◇ ◇ ◇



 明るい色調で整えられた内装のその部屋は、壁一面に衣装が吊り下げられていた。

 ここはシリウスが誇るシリウスの山百合亭のドレスルームなのだった。

 旅の間に持ち運べる衣装というものには限りがある。

 裕福な者は勿論、衣装をいくつか携えて旅をするのが一般的であるが、選り取り見取りというわけにはいかない。

 そこで上等な宿ではこういったドレスルームを備え、貸出衣装を用意していることが多いのだが……


「して、エリス様が装備化したというドレスはどれかな?」


 ドレスルームを訪ねてきた支配人はこのドレスルームの責任者である娘、リフィルに尋ねた。


「はい。正面の、ベロニカ洋品店で作らせたドレスおよそ20着、と男性物のスーツ15着ほどです。そのほかにアクセサリー、主に指輪、ですが、少々……」


「そうですか。」

 責任者に言われ正面を見ると、一際斬新なドレスが並んでいる。

 斬新が故に、着るものを選ぶのだ。

 適応サイズの幅が狭い。いや、狭かった。


 貸し出し用衣装はおよそ男性物で3~5銀貨、女性物で5~8銀貨程度の衣装が多い。

 平均6銀貨として、装備化費用は12銀貨。それが35着分である。

 指輪は1つ1金貨程度、つまり2金貨でそれが5つ。


 エリスの元の世界の価値観で説明すると、およそ2600万円程度の仕事をさせたことになる。


 彼女たちに昨夜用意した部屋はルームチャージで、正規料金は1泊で8銀貨ほど。

 ざっと二月ちょっとは貸し切れる額である。

 もっとも彼女たちから正規料金で部屋を用意する気はない。


 この宿がこうして今の地位を築けているのもサラのおかげなのだ。

 実際にすべてのスイートが埋まることも少ないことを考えれば二銀貨も貰えば十分なのだ。

 彼女たちも冒険で外泊することもあることを考えれば、一年程度はあれこれと言い訳をつけて逗留させる理由には困りそうになかった。


「そうですね。これはきっと話題になるでしょう。ベロニカ洋品店に追加で六着ほど、すぐにドレスをオーダーしておいてください。選別は貴女にお任せしますよ。リフィルさん。」


「かしこまりました支配人、では早急に。」


 そうして支配人は機嫌良さそうにドレスルームを後にしたのだった。



こんにちは。

味醂です。


まずは、気が付けばエルフ第21話をお読みいただきました皆様、ありがとうございます。

ブクマやコメント、また登録したてのツイッターをフォローしてくださった方々にも感謝を。


討伐任務にでたエリス達ですが、設定上依頼が発された集落まではおよそ50キロちょっとの設定です。

延々と歩いておよそ10時間かかる道のりですが、作者はとても真似できません(爆)


約50kmといえばフルマラソンの42.195kですが、それを2時間台で走ってしまうマラソン選手

凄いですよね。


それではまた次回、気が付けばエルフ第22話でお会いしましょう。

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