討伐依頼
こんにちは。
味醂です。
お待たせいたしました 気が付けばエルフ 第20話公開いたします。
ツイッターアカウントを取りましたので、執筆状況などはそちらにも呟いてみようかと。
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それではお楽しみください。
討伐依頼
「よし、それじゃ今日は討伐任務の依頼についてだな。」
討伐任務、そう改めて言われると心なしか緊張してしまう。
サラやリーリカの話によれば、対象は必ずしも魔物とは限らないという話だった。
ありていに言ってしまえば山賊団や盗賊団といったものらしいけれど、私のような駆け出しに縁のある話ではないのだけれど、それでも仮の話、もしそうしなければならない事態に直面してしまったとしたら……
果たして同じ人間である彼らを私は相手にすることはできるのだろうか?
ともすれば、殺してしまうかもしれないというのに。
殺人は悪だ。
それはこの世界でも同じ認識だった。
しかし、この世界は犯罪者にとっては決して優しくないらしい。
それは話を聞いてるだけでもわかる。
盗賊などに身をやつした者は、捕えられればほぼ確実に処刑されるか、永久に労働奴隷として一生を終えることになるのだそうだ。
そう、この世界には奴隷制度というものが普通にあったのだ。
この街にも、奴隷を扱う商人が数人いるのだそうだ。
この世界において、一般的に奴隷は2つに分類される。
金銭的に破綻、もしくは困窮により売られていく労働奴隷。
なんらかの犯罪を犯して、捕えられ、処刑を逃れた犯罪奴隷。
表向き性奴隷のようなものは認められていないものの、それはあくまで労働奴隷に限った話だそうで、犯罪奴隷に関しては保護は及ばない。
例えそれが年端もいかない子供であろうと、その別はない。
そういったみせしめ要素を強く認識させることで、人々は治安を維持しているのだった。
高度な警察機構が機能するには、それを支えるインフラが必要不可欠だ。
そういったものが諸々と不足しているこの世界では、恐怖による抑止力を最大限に活用しなければ、弱肉強食の混沌とした世界になってしまうのだろう。
古い時代には、もう少し刑罰も緩く、刑務所のような施設もあったらしいのだが、食い詰めた者が軽犯罪を犯すということが増えすぎたために、厳罰化がなされたらしい。
それは国を超えほぼ世界中に概ね同一の認識として根付いて、もう久しいのだという。
もうこの世界で生きていくしかない私は、色々と認識を改めなければいけないのかもしれなかった。
「顔色が悪いぞ、エリス。大丈夫か?」
色々と思い詰めた表情をしてしまっていたのだろうか?
サラが心配そうに覗き込んでくる。
「討伐任務といっても魔物相手以外の任務は通常、駆け出し冒険者は受けることが出来ませんので安心なさってください。」
私が考えてたことが判っているかのように、リーリカが優しく慰めてくれる。
「今回の依頼はゴブリン退治だな。ここから一日ほどの距離の村に出没しては、収穫物を奪ったりと暴れているらしい。報酬は6銀貨」
「よくある依頼内容ですね。」
「そうだな、とにかくまずは必要な物資を買いに行くとしよう」
そうして私は初めての討伐依頼を受けたのだった。
◇ ◇ ◇
城塞都市から徒歩でおよそ一日ほどの距離に、名もない一つの集落があった。
神の使いの狼が住むといわれるその山の、裾野に開かれた集落は、肥沃な土と自然の恵みに支えられ、これまでも大きな飢饉に見舞われたことはなかったそうだ。
田畑を荒らすイノシシやシカ達も、滅多に姿を現すことはなく、それも狼様のおかげと信仰の対象となったのはごく当たり前の流れだった。
長らく何事もなく、ただ昨日と同じ一日が平和に過ぎていく。
そんな暮らしに影が差したのはここひと月ほどの事だった。
「おい、また畑が荒らされてるぞ!」
若い村人が声を荒げて集落に駆け込んでくる。
「また小鬼の仕業か!?」
「ああ!間違いない、奴ら柵を壊して畑から野菜を奪っていきやがった!」
ゴブリン
人間の子供ほどの大きさで、見た目は醜悪な闇の住人である。
性格は狡猾で、残忍。
淀んだ瘴気の中から生まれるとされている魔物であるが、時折人間や亜人を攫っては乱暴し、子供を孕ませることで増えていくのもよく知られている。
攫われた女は自害もできぬように拘束し、気が狂い死ぬまで犯され続けるのだ。
そして腹を食い破って生まれてくるゴブリンの最初の犠牲者となる。
「早く手を打たないと、女どもに被害が出る!冒険者を雇って討伐しよう!」
誰からともなくそんな声が上がり、早馬で依頼を出したのは十日ほど前の話だった。
◇ ◇ ◇
ギルドを出た私たちは、まずベロニカさんのお店に寄り討伐に出かけることを伝えた。
上機嫌に出迎えてくれた彼女によると、どうもシリウスの山百合亭から数着の衣装のオーダーが入ったようだった。
6着ほどの原価1.5銀貨、通常売価5銀貨のドレスに装備化を施し、60銀貨を、更に手数料の9銅貨づつを討伐依頼前に手に入れた私たちは、内心は非常に複雑なものだった。
少々頼みを聞いてもらう代わりに紹介料を引き下げたものの、それでも所持金は順調に増えている。
とりあえ今回の紹介料は私とサラでそれぞれ3銅貨を出して、リーリカにも配分した。
今回は三人で宣伝したんだしね、やっぱりみんなで分けるのが筋だし、気持ちがよい。
ちなみに当初装備化の手数料についても分けようとしたのだけど、それはサラに断固拒否されてしまった。
その代わりにせめてもの気持ちという事で、レプリカ品のショーツやブラジャーを何セットかプレゼントしたのだけど、そちらは二人とも素直に喜んでくれた。
なんでも早々に売り出したこの下着もなかなかの反響らしい。
特にブラジャーに至っては4銅貨と高価にも関わらず、バカ売れだとか。
流石にそれらは通常のサイズ別なのだけど、サラとリーリカには勿論装備化を施して渡してある。
身体にフィットする下着というのは着けているのを感じさせず、疲れも少なくて済む。
実際に以前の世界でもオーダーメイドの下着というものはあったし、そちらもやはり高価なものだった。
当然高校生の私に買えるような代物ではなかったけれど、従姉妹のコネで入学祝いにプレゼントされたことがある。
まぁ、、2年生になってもサイズが変わることなく、ジャストフィットしたままだったというのは笑い話にしかならないのだけど。
話がずれてしまったけれど、そんなこんなで私たちはベロニカさんの洋品店を後にしたのだった。
◇ ◇ ◇
街を出た私たちは北の街道を進んでいた。
途中長い長い、ひたすらに長い地味な上り坂になっており、既に足が攣りそうな位だった。
「ゴメン、サラちょっと休ませて。」
前を行くサラに声をかけた。
「なんだ、もう音を上げたのか?まだまだ先は長いぜ?」
なんてニヤニヤしている。
サラもリーリカも全然堪えてないようだった。
「まあ、そろそろ休憩してもよい頃合いでしょう。そこの岩で休憩としましょう。」
それでもフォローしてくれるリーリカがなんだか優しい。
「私のせいでゴメン。せめてお茶を用意するね。」
そういって荷物の中から銀のポットを取り出す。
「そんなものいつの間に買ったんだ?そんなの持ってたら重いだろう?」
「まぁまぁ、ちょっと見ててね?」
さあ、私の訓練の成果を見せるときだ。
こう見えてもちゃーんと色々考えてるんだから。
目を瞑ってイメージする。
熱くて、「美味しい水」。
唱える。
「ホット・ミネラルウォータ・ボウル!」
銀のポットからグツグツと音を立てながら湯気が上がる。
「へへ~、どう?凄いでしょ?」
そう、以前水を出したときは、ただ清涼で綺麗な水をイメージしたのだけど、純水でいれたお茶は正直美味しくなかったのだ。
そして、水を出すときに、温度もイメージすることである程度イメージした温度のお湯を直接出すことが出来ることにも気が付いた。
私ってすごくない??
「なんともまぁ、もう何でもありだな。今更だけど。」
「きっとエリス様はそのうち世の中の常識というものを、すべて打ち砕いてしまわれるんでしょうね。破壊の女王とでもお呼びいたしましょうか?」
おかしいな?なんか呆れられてしまった。
でもそれくらいでもうめげたりしないのだ。
「リーリカ、お茶の抽出はお願いしていい?」
「そうですね……」
そういって彼女はポットに手をかざして温度を確かめると、茶葉を入れてく。
ほどなくして充分蒸れたところでマグカップに注ぐと、なんともいい香りがするのだった。
「へぇ、この間のお茶と違って今度は美味しいんだな。」
「身体にいいミネラルが入ってる美味しいお湯を出したんだよ!あ、勿論リーリカの入れ方が上手いってのが大きいのだけど」
「スッキリとした味わいのお茶になりましたね。確かに前の味もそっけもないお茶とは大違いのようです」
しょうもない話をしながらお茶を飲んで、見上げる空はとても青くて。
今日も一日楽しく過ごせますように、そんなことを考えながら休憩時間は過ぎるのだった。
こんにちは。
味醂です。
気が付けばエルフ第20話をお読みいただきました皆様、ありがとうございます。
先月の5月23日に連載を開始いたしまして、6月1日の現時点で
累計PV 4,289アクセス ユニーク875人(2日遅れ)
と少しづつ反響も上がってきている様で嬉しい限りです。
今後とも応援よろしくお願いいたします。
今日中にもう1話書き上げたいところですがどうなることやら。
それではまた気が付けばエルフ21話でお会いしましょう。




