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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
19/144

高嶺の山百合3

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ第19話公開いたします。

3分割された高嶺の山百合編の最終話となります。(勿論本編は続きます)

それではお楽しみ下さい。


 高嶺の山百合3



 最初に出されたのはスープだった。


 スプーンに掬い一口啜る。

 肉系の濃厚なコクを程よく緩和してくれる、ジャガイモに似た芋を裏ごししたスープだ。


 給仕さんが料理を出すときに名前なども教えてくれるのだけど、耳慣れない為に覚えられそうにない。

 とろりと柔らかい舌触りがゆっくりと味を口の中に拡げてくれる。


 すぐに続けられるのはオードブル。

 丸みのある四角いお皿に可愛らしく盛り付けられた一口大の料理たち。


 酸味の利いたドレッシングが掛けられた生野菜のサラダ。

 干した果実をスライスしたものに乗っているのはこちらの世界のチーズらしい。


 濃縮された甘みに程よい塩気とチーズの香りがよく合っている。


 何かをすりつぶし、スープを加えて練り上げたパテには薄くスライスされたピクルスのようなものが載せられていた。


 半分ほどナイフで切り取って一緒に食べてみる。

 コリコリとした漬物の食感に、混ざりあうように濃厚なパテが絡み合い、強すぎる酸味を口の中で緩和させてくれる。


 ひとくち大のサイコロステーキ。

 シンプルに塩コショウで味付けされたそれに添えられているのは、ラズベリーに似たフルーツソースだ。

 あまり見たことがない組み合わせだけど、これが意外に美味しかった。


 野趣あふれる酒場の山盛り料理もいいけれど、こんな上品な食事もまた格別だと思った。

 なにしろ17年間の人生できちんとしたコース料理を食べる機会なんて、数えるほどしかなかったのだ。

 TVなどでそういった料理を見るたびに、羨望のまなざしで見ていたのは言うまでもない。


「グローリー男爵家で頂いたお料理も凄かったけど、ちょっとジャンルが違うのかしら?」


「そうですね、男爵系で供していた料理は西の大陸から伝わった料理を元にアレンジしているものだそうですよ?こちらのお料理は東の大陸から伝わったとされる典型的なものですね」


 思い起こすと、グローリー男爵家で出された料理は、強いて言えばイタリア料理に近い。

 小麦を主体とした生地を加工したものに、絡めて食べるような料理が多く、煮込み料理も多かった。


 そうこうしてるうちに運ばれてきたのはパンだった。

 小さく丸いその可愛らしいパンはとてもふんわりと柔らかく、大輪咲のバラのつぼみの様だった。


 そして次にやってきたのは白身の魚のムニエルらしい。

 サラの話によれば、食欲旺盛ですぐに大きく育つその魚は現在では主に養殖されているらしい。

 この世界で養殖という技術があるのには少々驚いたものの、よく見ればこの魚をから揚げにしたものを、街の酒場で食べた事があることに気が付いた。


 こちらで出てきたムニエルには、香草を刻んで作られた熱々のオイルソースが目の前で掛けられ、視覚に、聴覚、嗅覚で楽しめるように工夫されていた。


 丁寧に骨抜きしてあるとのことで、食べるのも楽ですぐに私のお気に入りになった。


 グラスに注がれるのは甘い香りの葡萄酒だ。

 ワインをはじめとした果実酒はこちらの世界でも一般的らしい。

 ぶどうの皮につく天然酵母が次第に糖分をアルコールへ分解してく過程で出来るのがワインであり、さらにそのアルコールが分解されて発酵が進むことでビネガーとなる。


 衛生面や諸種の事情でそのままでは飲めない事の多い水の代わりに、日持ちがよく、喉の渇きを潤すためにアルコール類が多く普及しているのは当然といえば当然だった。

 生水であればすぐに腐ってしまうし、一応あるものの上下水が十分に発達していないために、井戸水であっても危険なのだ。


 そういう意味もあり、基本的に一般の市民には入浴といった習慣はなく、精々蒸しタオルで身体を拭うのが一般的だという。もっともこの宿やグローリー男爵家には浴室もあり、バスタブでの入浴が可能だったりするわけで、一部の上層階級にはそれなりの普及をみせている。


 もっともそれを使用するには、バスタブにたっぷりのお湯を用意するの必要があるのだけど。


 ちなみに男爵家でバスタブを見つけた私は、準備が間に合わないという理由を聞いて、バスタブを魔法で水を満たしたのだ。

 そこに用意してもらった焼石を入れてもらい、適当な温度になるまで温めて用意したのだった。



 口直しのワインを片手に談笑していると運ばれてきたのは肉料理のようだ。

 これはなんだろう?


「サラ、これは何かわかる?」


 と聞いてみると


「多分ウサギの肉だな。」


 とのこと。


 可愛らしいウサギの変わり果てた姿を複雑な気分で見るものの、こうして食卓に上ってしまったウサギが生き返るわけではない。


 どうやら煮込み料理らしいそれを一口、口に運ぶと思った以上に柔らかく処理してあるようだった。

 渋みのある甘みの強いソースは赤ワインと蜜に煮汁を加えたものだろうか?


「じっくりと時間をかけて煮ほぐしたのち、煮汁でソースを作り、それを絡めて焼き上げるのです。」


 アクセントにレモン汁に似た柑橘系の果汁が掛けられており、見た目ほどしつこくない。


 こうして私たちは美味しい食事に舌鼓を打ちながら素敵な時間を過ごしたのだった。



 ◇ ◇ ◇


 夕食を終え部屋に戻ってきた私たちだが、サラ様もエリス様もドレスを脱ぐとすぐに寝てしまわれた。

 私も着ていた黒いドレスを脱ぐと、静かな寝息を立てているこの美しい妖精の懐へと滑り込んだ。


 背中に回される細く長い腕。

 そのまま任せるままに抱き寄せられる。


 柔らかな谷間に挟まれるように抱え込まれる。

 白く綺麗ですべすべとした感触とほんのり薫る甘い匂いが頭の芯を痺れさせた。


 目の前の柔らかな頂をそっと口に含む。

 吐息がこぼれる。


 優しく手で包み込むようにすると、舌先の感触が変化していった。

 そのまま顔をうずめながら手探りで頭を探し、艶やかな髪の感触を存分に堪能する。



 漏れる吐息にはいつの間にか自分の吐息も混ざりあっている。

 熱を増す身体の芯に身を震わせながら、この優しくも危うげな温もりをもっと感じて居たかった。


 故郷で忌み嫌われ、追い立てられるように冒険者となった自分を素敵だと言ってくれるこの妖精に、私の心はすでに捕らわれてしまっていたのだった。


 際限なく上昇する体温と湿度を更に求めるように、ほっそりとした腕を招き寄せて、私は指を咥え刹那の幸せに身体を震わせるのだった。


「卑しい私を許してください………………エリス様。」



 そうして私が眠りについたのは深夜の鐘が鳴り響く頃だった。



 ◇ ◇ ◇


 その夜シリウスの山百合亭の支配人は忙殺されていた。

 ディナーを終えた宿泊客が、サラやエリス達について聞いてくる。

 そういった人があまりに多かったのだ。


 元々大人数を相手の宿ではない為にそのほとんどの者が来たのではないだろうか?

 宿とは信用商売である。そう考えている支配人は彼女たちが着ていたドレスがこの宿の貸出品であることと、それを収めている洋品店について説明した。


 勿論彼女たちから聞いた情報を最大限に活かし、その洋品店と直接の繋がりがあるという事を。


 その反応をみるや、どうやら自分は恩人であるサラに更なる恩を受けてしまったようだ。


 彼女たちにもう少し逗留してもらう良策はないかと、あれこれと頭を巡らせるのであった。


 彼に妙案がもたらされることになるのは、翌朝の事であるが、今の彼にそれを知る術はなかった。

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ第19話をお読み頂いた皆様には尽きぬ感謝を。

また新規にブクマ登録をして頂いた方、既にして頂いていた方にもお礼申し上げます。


文章量と区切れる場所が、が色々とうまくいかなくて結局3まで引っ張ってしまった訳ですが、お楽しみいただけましたでしょうか?


一応R15 タグを組み込ませて頂いておりますがあくまで全年齢対象ということで表現がもどかしいと思われる方もいるかも知れませんが、そこはご容赦ください。


それではまた 気が付けばエルフ第20話 でお会いしましょう。

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