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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
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高嶺の山百合2

こんにちは。

味醂です。


お待たせいたしました。

気が付けばエルフ 第18話公開いたします。

分割話になってしまってますので頑張って書き上げました。


どうぞお楽しみください。

 高嶺の山百合2



 白く塗られた格子にはめ込まれたガラス越しに映るのは、シリウスの夜景だ。

 中層の教会近く、立地の良い場所を選んで作られたこの宿は、シリウスで現在一般開放されている宿の中で最上級とされている宿の一つだという。

 コネクションが無ければ立ち入れない上層区では一般経営の宿は無く、貴族の貴賓を迎えるための迎賓館しかない。

 そのために貴族位やコネクションを持たない有力者や豪商などは、一般開放された宿に宿泊するのだが、この宿はそういった客層をターゲットにした宿であった。


 五階建てのその建物の四階のおよそ半分を贅沢に使って造られたこのダイニングは宿の自慢の一つらしい。



 部屋に用意されていたインビテーションカードをダイニングの入り口で係の者に渡すと扉が静かに開かれた。

 三人揃ったところで案内係がよく通る声で告げるのだ。


「エリス・ラスティ・ブルーノート嬢御一行様、入場いたします。」

 と。


 案内係の人が恭しく一礼してから、私たちをテーブルへと案内していく。

『敢えて出来るだけ他のテーブルの間を縫って』である。


 なんなの、この演出?

 うっかり表情を出してしまわないように気を付けて、あちらこちらから漏れる感嘆。勿論会釈をしてくれる他のゲストに愛想よく会釈を返すことも忘れない。

 針の筵のような行進は席までの短い間だというのにその距離がやけに遠く感じられたのは言うまでもないだろう。



 ダイニングの中でもとりわけ展望のよい、特等席に設えられた円卓に、私たちの席は用意されていた。


 席に着いたからと言ってそのまま椅子を引いて座ってはいけない。

 そのまま横に立てばテーブル専属の給仕が椅子を引いて座らせてくれる。


 サラが着ているのはAラインに近い真っ赤なドレスに黒いレースの手袋だ。

 ドレスの胸元と裾にはやはり黒いフリルが控えめにあしらわれている。

 アッシュグレーの髪にはティアラが飾られている。


 元々背の高いサラが着ることで余計に縦のラインが強調されて、モデルさんのようだった。



 一方リーリカの着ているのは黒い胸元がVカットになっているイブニングドレスだ。

 裾はドレープを重ねてあり、丈はやや短めである。

 黒く綺麗なショートウェーブの髪には白いコサージュが飾られており、普段の落ち着いた雰囲気からまた変わって、可憐な印象を与えている。



 私はといえば――これ説明しなきゃダメなのかしら?


 プリンセスラインの薄紫とピンクの中間くらいのフリルとドレープたっぷりの、もうこれほとんどウェディングドレスなんじゃないの?ってくらいのドレスで、背中部分は紐を交互に通して留めているデザインなので、感覚的には裸に近いのだ。

 胸元から四方に流れるようなカラーライン、ベースになっているのは白のスカートだ。

 長い銀髪はアップにされて、蝶を模した銀の髪留めで留められている。



 じつはこの三着のドレスは宿で貸し出してくれたものだが、ベロニカさんの作品だった。

 部屋に入った時には部屋付きの給仕とともに用意されていたものを、支配人の許可を得て「装備化」したものだ。

 おかげで着心地は大変よくなっているのだけど、まさかこの格好で夕食を食べることになるとは思いもよらなかった。


 当初リーリカは断固としてドレス着用を拒否し、自分が給仕をすると言い張ったのだが、支配人と、私の説得でなんとか折れてくれた。

 ドレスを見た時点で晒し物になることはまぁ、覚悟してたのよね。

 道連れは多いに越したことはない。



 席につくと食前酒が配られた。

 どうやらプラムににた果実酒のようだ。


 グラスを掲げ、宣言する。


「私たちの新しい旅立ちに、乾杯」


 やがてメニューが届けられ、高嶺の百合での晩餐会は始まったのだった。


 ◇ ◇ ◇



 私たちが通された客室は五階の一角にあった。


「まさかスィートとはね。」


「はは、いい部屋だろ?そうだ、風呂もあるぞ?」


 サラが指定したのだから当然なのだろうけど、サラは以前にもこの部屋を利用したことがあるのだろう。

 ますますもってサラの過去が気になってしまう。


「いらっしゃいませ、お嬢様方。本日皆様のお相手をさせていただきますリフィルと申します、なんなりとお申し付けください。」


 部屋の中に控えていたのは部屋付きの給仕さんだ。

 当然これに抗議したのはリーリカだった。


「それではリフィルさんはサラ様のお世話を、わたくしはエリス様のお世話をいたしますので。」


「それは困ります、本日はお嬢様方のお世話をするように言われておりますし、リーリカ様もお召し物を着替えて頂きディナーに参加して頂きませんと、私の職務が果たせません。」


 稀に見るメイドさんvsメイドさんの図だった。


 その後紆余曲折あったのだが、なんとか説得されたリーリカだったのだが、条件として私の入浴の給仕だけは譲らないということだった。


 なんでそこに至るのか……そもそもお風呂くらいひとりで入れるというのに。

 私の心の嘆きもむなしくそこで決着する。

 決まってしまった。

 手打ちである。


 こうなったら私にできることは同じ境遇をもう一人作ること。


「じゃあ、サラ先にお風呂行ってきてね。リフィルさんお願いしますね」


 と先手を打つこと位だった。



 サラにも道連れになってもらうんだから。


 ともあれ、まだ見ぬリーリカのドレス姿は私としても見たいものの一つだったのだ。


 ◇ ◇ ◇



 こちらの世界にきてから極端に歩くことの増えた私は湯舟の中でそのまま沈んでしまいたい気分だった。

 後ろではリーリカが優しく髪を梳いてくれている。


「ねぇ?リーリカ?」


「なんでしょうか?」


「リーリカも一緒に入りましょ?風邪ひいちゃうわ」


「いえ、私は大丈夫ですので」


「だったらもう私も一人でお風呂入ることにするわ?それでもいいのかしら?」


「……失礼します。」


 リーリカがおずおずと入ってくる。


「今度は私が髪梳いてあげる」


「……はい。」


 彼女が珍しく、しおらしく従う。


「リーリカの髪は綺麗な黒髪なのね。この世界に来てから見た黒髪はリーリカが最初よ?」


「そんな、私の故郷では、黒髪は穢れを呼ぶと忌み嫌われるのです」


「そんなのあるわけないじゃないの。私もこっちの世界に来る前は、黒髪だったのよ?」


「――え?」


「むしろ、私の民族は、黒髪であるのが普通だった。」


「そんな民族がいるだなんて……」


「だからその綺麗な黒髪をそんなに悪く言ったら、私は悲しいわ?」


「はい……以後気を付けます。」


 リーリカは私よりは小柄だ。

 身長は160センチまではないだろう。


 ちょっと遠いのでリーリカを後ろから抱きかかえて自分の膝の上に乗せた。

 水の浮力も手伝って簡単に抱きかかえられる。


「ひゃうっ」


 こういう時のリーリカはなんだかとても新鮮だ。

 グローリー男爵の家でもそうであったように、攻撃的な反面、脆かった。


「ほら?暴れてたら髪が梳けないでしょ?」


 黒光りする美しい髪に毛先から丁寧に櫛を通していく。

 湯舟に落ちた私の長い髪は水面に拡がって、中で動くたびにリーリカの身体に纏わりついている。

 そのたびにリーリカが身体を震わせるものだから余計に悪循環らしい。


「ほら、髪梳けたよ?」

 そういって優しく頭を撫ぜる。


「………………」


 後ろから顔を覗き込むと、少しのぼせたのか頬には朱がほんのりと差して、どことなく目は虚ろだ。

 心なしか息遣いも荒い。

 こんな状態では自分で身体を洗うのも無理そうだと勝手に判断して―


 私はさっきまでのお返しとばかりにリーリカの身体を洗ってあげることにしたのだった。




こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第18話をお読みいただきありがとうございます。


気に入って頂けたらブクマや評価いただけると大変嬉しいです。

今回は本編については敢えて語りません。


高嶺の山百合はあと1話続きます。

それでは次回は気が付けばエルフ 第19話でお会いしましょう。



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