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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
17/144

高嶺の山百合1

こんにちは。

味醂です。

気が付けばエルフ 第17話を公開いたします。


申し訳ないですが分割話になってしまいましたので少々短いです。


 高嶺の山百合1



「はい、こちらが報酬になります。」


「ありがとうございます。」


 冒険者ギルドのカウンターで依頼の報告をして報酬を受け取る。

 半日を費やして手にした報酬はおよそ2銅貨。


「なんというか、今日は赤字だね。」


「そりゃな、本来こういう依頼は他の依頼のついでで受けておくものだ。」


「駆け出しの冒険者にとっては貴重な依頼なのに変わりはありません。採る場所を数か所抱えて日替わりで日課にしているものもいるくらいです。」


 なるほどそれもそうか。

 ちょっと色々とあって感覚が麻痺してるけれど、一人で行けるようになれば毎日1万程度の収入を得ることが出来るこの手の依頼は決して無駄ではない。

 もっとも装備や宿泊費に大半が消えてしまうけれど、平行していくつか依頼を受けられるのあれば十分貯えに回すことも可能なんだろう。


 薬草採取の帰り道、ちょっとばかり魔物との戦闘を期待したりしたのだが、結局無事に何事もなく街までついてしまった。


 経費を精算して報酬を分けると、結局一人頭の取り分は50小銅貨程度だった。


「サラ様には少し申し訳ないですね。」


「いや、いいさ、報酬を分け合うのもPTの醍醐味だ。それにエリスのおかげでこっちも随分と稼がせてもらってる。」


 無論本業ではないほうの報酬ではあるが。



 ちなみに、冒険者同士の過度の過去の詮索はタブーとされている。

 私の場合、状況が状況なのである程度は話をしているけれど、その辺を説明されるついでに暗に聞くなと言われたようなものだ。


 サラもリーリカもどちらも過去が気にならないわけがない。

 年齢だって二人ともまだそんなに行ってないはずだ。

 よくて二十代半ば、サラなんか下手したら二十歳にもなっていないかもしれない。


 それでいて上位の第二級冒険者というのだから気にするなというほうが無理だ。

 いずれ話してくれる日がくるのだろうか?


 私はそんなことを考えながらギルドを後にした。



「とりあえず今夜の宿だな」


「そうね、そろそろ荷物をおきたいもの。」


「とりあえずはこの間の宿に行くか?」


「そうね」


 行先も決まったとこで早速広場を横切り宿に向かう。

 路地を一本奥に入り、右手に曲ったところには……


 うずたかく積まれた瓦礫があった。


『小鳥の囀り亭はしばらくの間休業します』


 そう書かれた張り紙の宿。

 そしてその宿の前に積まれているのはどうやらテーブルや椅子の残骸のようだった。


「あら?改装工事かしら?」


 その様子をみてリーリカの方を向く。


「さぁ、わたくしには判りかねますが……サラ様?」


 サラはなんだか苦笑いを浮かべているだけだった。


「さて、こうなってるなら仕方ない。他の宿あたろうぜ、そうだな新たなPTの門出だ、今日くらいはいい宿に泊まろうぜ。」


 なんて言いながら私とリーリカさんの肩に両腕を掛けてグイグイと押していく。


 そうして連れてこられた宿は見晴台近くにある立派な宿だった。

 入口にはベルボーイが控えており、私たちが近づくや否や


「ようこそおいでくださいました、シリウスの山百合亭へようこそ。」


 とドアを開けてくれる。

 エントランスに敷かれた赤い絨毯。

 さりげなくおかれた調度品もよくみれば非常に精巧なものが多い。


 私たちが持っていた荷物もさりげなくベルボーイさんが受け持ってくれ、今はカートにのせて私たちに付従っている。


 サラは迷うことなくロビーカウンターへ行くと


「支配人はいるかい?」


 と気軽に声をかけている。


「あ、エリス達はそこのソファーでちょっと待っててくれ」


 サラの声に合わせてベルボーイさんが案内してくれる。


 一方カウンターの中にいた受付嬢は


「少々お待ちください。」


 そう一礼してバックヤードへ引っ込んだ受付の人は、すぐに一人の老紳士を連れて戻ってくる。


「おお、これはサラ様、本日は如何いたしましたか?」


 なんて言われている。


 なんか、すっごくアヤシイ……



「支配人、急で悪いが部屋を用意できるか?できれば上のあそこがいい」


「サラ様がそうお望みならば是も非もございません。」


「じゃあ、頼むよ。」


 そういうとサラは支配人とおぼしきその老紳士の前に何かを置いた。


「サラ様からお代を頂くわけには……」


「しー、いいから受け取ってくれ。ちょっと訳アリなんだ」


 サラはなにやら小声でこちらを窺いながら支配人と話している。


「なるほど、ではお気持ちだけ頂いておきましょう。」


 そういって差し出された銀貨の中から1枚を残してサラに返した。


 小声で話す二人だが、実は私凄く耳がいいのだ。

 すっかりと聞こえてしまっていた。

 リーリカのほうを窺うと彼女も胡乱げな視線でサラを見ているが、やがてため息をつくと用意されたお茶を飲みだした。


「さぁ、エリス様も冷めないうちにどうぞ。この街で一般開放されている宿の中では最上級の宿の紅茶です、美味しいですよ。」


 色々と言いたいとこだけど、諦めて目の前のお茶を楽しむことにした。

 カップを手に取ると白磁でできたカップのようだ。

 絵付け染めで繊細な模様が描かれている。


「この世界にも白磁のカップがあるのね、素敵だわ」


 思わず呟いてしまう。



「一般庶民にはあまり出回らない高価な品です、もっともエリス様もずいぶんと慣れ親しんだ物のようですが。」


 なんて言われてしまった。

 藪蛇である。


 そんなことを思ってると


「お、美味そうだな。」


 渡りにサラだった。


「とってもおいしいわ、私紅茶大好きだもの。この茶葉ならミルクで煮出してもきっとおいしいと思うの」


 これでも一時期凝ったのだ。すこしばかり紅茶にはうるさい。


「ほう、それは異な飲みかたですな、詳しくお話を伺ってもよろしいですかな?」


 いきなりすぎてビックリした!

 と、私の動揺をみたのか慌てて彼は姿勢を正してこう続けたのだ。


「失礼、驚かせてしまいましたな、私はこの宿の支配人を務めさせていただいております、フランツという者、見目麗しいお嬢様方にお会いできて光栄です。以後お見知りおきを。」


 先程の老紳士だった。


 私はあわてて立ち上がると自己紹介をする。


「初めてお目にかかります、私エリス・ラスティ・ブルーノートと申します。サラさんにはお世話になってまして」


 いけないなんかボロがでそうだ。

 なんて思っていると


「わたくしはエリスお嬢様にお仕えさせていただいておりますメイドのリーリカと申します。」


 すかさずフォローしてくれたリーリカは流石といったところだった。



 簡単な自己紹介が終わると私は『ロイヤルミルクティー』について色々と聞かれたのだった。

 てっきり社交辞令かと思ってた。


 丁度説明を終えるのを見計らっていたようにベルボーイさんが何かをフランツさんに耳打ちする。



「それではお部屋のご用意ができたようです、皆様こちらへお越しください。」


 そうして私たちはサラの指定していた件の部屋へと通されたのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第17話をお読みいただきありがとうございます。

ちょっとずつブクマ入れて頂いてる方も増えているようで、大変励みになります。

今後ともよろしくお願いします。


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