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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
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無自覚な代償

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第15話公開いたします。

それではお楽しみください。

 無自覚な代償



 ベロニカさんの洋品店で『営業会議』?を終えた私たちは冒険者ギルドに来ていた。

 時刻でいえば多分11時前後だろうか?なにせ時計というものをまだ私はこの世界で見たことが無い。

 見たことが無いだけで、時間の概念があるのだからきっと有りはするのだろうけれど。


 なんだかんだで大金が入ってきそうな話はまとまったものの、私の本分は冒険者なのだ。

 そのままプロモーターとしてもやっていけそうな気もするし、ベロニカさんもそれを薦めてくれてはいたのだけどサラの事もあったし、なにより私はこの状況を等身大のゲームのように楽しんでみようと思っている。


 前の世界ではそれほど熱中しなかったゲームだけど、別に興味がなかったわけじゃない。

 実際に魔物と戦うのは怖いけど、なにかと煮詰まってしまった現状に鬱屈して、無気力に過ごしていた私には命を懸けたこの世界での生活が刺激的だったのだ。


 それに私の中に確かに芽生え始めている力は、ただお金を稼ぐだけのためのものではない。

 魔物と戦うための力なのだから。



 それにしても……


 この場違い感はなんだろう?



 否。嘘です。

 原因はわかってます。

 周囲の目を集めてしまっているのは間違いなく、私たちである。

 それくらいの自覚はある。


 今までのつけていた装備のインナーなどにベロニカさんの作ったブラウス、そして裾をジャキジャキと切り刻んだようなワイルドなカットの黒染めの大型マントを羽織っているサラ。


 私はといえば最初にこの世界に来たときに着ていた服にベロニカさんが作った白いマントと、服と同じ風合いに染められた、小さめのツバのないマリンキャップに似た帽子。


 その二人と連れ立って歩いているのはメイド服を着たリーリカさんだった。


 これで目立つなというのは無理がある。

 周囲の奇異の視線もものともせず涼しい顔の二人。

 私の視線に気が付いたのかリーリカさんはこちらを向くと


「エリス様、依頼(クエスト)の受付とPT(パーティー)申請に参りましょう」

 と依頼票を手にカウンターへするすると歩いていく。


 どうしてこうなったし。


 痛む頭を抱えながら私は彼女たちについていくのだった。


 ◇ ◇ ◇


「そ、それでは皆さんの冒険者章をこちらにおいてください」


 カウンターの中のお姉さんはこころなし顔を引きつらせている。


 わかります、その気持ち。


 水晶の前におかれた三つの冒険者章。

 そう、驚いたことにリーリカさんは冒険者章を持っていたのだった。


 私がもっている冒険者章は銀色の台座に、赤い石がはまっているが、サラとリーリカさんの冒険者章は金色の台座に青い石がはまっている。

 サラもリーリカさんの冒険者章をみたときはへぇ、凄いな。なんて驚いていたようにおもう。


 なんでも冒険者章は三種類の台座、


 金と銀が絡んだ六芒星のようになっているもの。

 金の台座

 銀の台座


 の3種類にそれぞれ下から赤石 黄石 青石の組み合わせがあり九つのクラスに分かれているそうだ。

 上位3種の金銀混合の台座の持ち主は、その形から星持ちなどとよばれており、どの色でも第一級の冒険者という認識らしい。

 つまり二人は第二級のなかでもかなり上位の冒険者だという事実を、今更ながら私は知るのだった。

 ちなみにメンターとして活動するには、銀台座青石以上で、LV12以上の者に限られるらしい。

 なんでもLV12を超えるとLV成長率が一定化するのだそうで、そこの前には壁があるそうで、特にLV10の壁を超えるのが最初の難関とされているらしい。


 そりゃそうだよね。

 メンターシステムには助けられたけど、相当な額を一時的と言えギルドが負担するのだから、いい加減な人ではメンター制度を悪用してしまうかもしれない。



 それと、今おこなっているPT申請というのはメンターとメンティーの場合は自動でリンクされるのだけど、依頼遂行中にPTがばらばらになったりしないようにする為に必要らしい。

 今回はリーリカさんも加わったので改めてこの手続きが必要になったというわけだ。


 そんなこんな考えてるうちに冒険者章は水色の光の糸で結ばれた。

 私たちはそれぞれの冒険者章を受け取ってギルドを後にするのだった。



 ◇ ◇ ◇


 城門を抜け南へと続く道を歩く。

 しばらく歩いていると5mくらい先でなんだか地面が蠢いた。


「ほら、エリス出番だぞ」


 そう言いながら私は前に押し出される。

 地面からにじみ出るようにしてでてきたのは……なんだろう??


「あれは、何かしら?」


「ん?あれはスライムだな。ちゃちゃっとやっちゃいな」


 おお、冒険者の最初の獲物、スライム。

 もっとも私の場合はグランドマウスだったわけだけど。

 とにかく有名なスライムとの初戦闘となればこれは外すことが出来ないイベントだ。


 私は短剣を引き抜くとその位置のまま一閃するとともに


「ウィンドエッジ!」


 と叫ぶのだった。


 横並びに多分2体いたスライムが吹き飛びながら灰になる。

 同時にコアがポトトっと落ちる。

 いつの間にか拾ってきたのはリーリカさんだ。


「エリス様どうぞ」


「あ、ありがとう、リーリカさん」


 そういうと彼女は少し機嫌悪そうにして、


「リーリカと呼び捨ててください。と先程も言いました」


「いや、でも……」


 口ごもる私に彼女は続ける。


「サラ様の事は、サラと呼び捨てにされております。直していただけないならわたくしもご主人様と呼ばせて頂きますので」


 自分のメイドに脅迫されているの図。

 せめてそこはお嬢様と呼んでほしい―なんてことを言えるわけもなく。


「わ、わかったわ。リーリカさ、、」


「さ?」


「わかったわ、リーリカ。私の負け。これでいいでしょ?」


「わかって頂ければよいのです」


 こころなし機嫌を良くしたのか、フフンっと彼女はコアをポーチにしまった。


「それにしても近寄らないでいいとは魔法とは便利なものだな」


「明らかにオーバーキルですけれどね、さすがはエリス様、容赦のない」


 もう好きにして。


 心の中で叫びながら私たちはまた歩き出すのだった。



 ◇ ◇ ◇


 時は1時間ほど前に遡る。


 ベロニカさんのお店をでるときに、リーリカさんはこんなことを言ったのだ。


「それではエリス様、このあとはどうされるのですか?」


「そうね、私たちは採集の訓練をかねて西の森の方へ行く予定だわ」


「ポーション材料の採取ですか。わかりました。それではギルドへ参りましょう」


「えっと、リーリカさんは男爵家に戻るのでは?」


 てっきりそのつもりだと思っていた。


「いえ、私は既にエリス様の専属メイドになっております」


 ごめん、私の頭が付いていけてない。


「その、言っている意味がよくわからないのだけど」


 というと大げさな溜め息をついて彼女は説明をはじめたのだ。


 つまりは、私がグローリー男爵家で行った衣服の装備化が問題らしい。

 婦人に言われるままにほとんどすべての衣料品を装備化してしまったのだ。

 家人の衣料品は勿論、使用人の制服などまでも。


 皆大変喜んでいたのだが、グローリー家としてはそれを無償タダで済ますわけにはいかない。

 相応の代金を払うにしても、駆け出しの世間知らずな私に現金を、というのも余計な危険を与えそうで危ない。

 だったらどうするか?

 状況を打開したのはミリアお嬢様だったらしい。

 お嬢様曰く


「エリスお姉様は寂しくて泣いていらしたの。だからリーリカが添い寝してあげればいいのよ」



 婦人もそれは良いと、あれよあれよという間に話は纏まり、人選も腕利きの冒険者だったリーリカなら申し分ないだろうということで。

 男爵家が支払うべき100金貨相当の代金のカタに彼女を差し出してきたということだ。


「もっとも、ミリアお嬢様はそんないきさつが無くても私をエリス様の元に派遣するおつもりのようでしたが」


「「…………」」


 唖然とする私とサラ。


「そういう訳で、不束者ですが末永く可愛がってやってくださいませ、ご主人様」


 幾久しく……それは違う。色々、と。


 かといって追い返すわけにもいかない。そうすれば男爵家のメンツにかかわるのだ。


「せ、せめてそのご主人様というのはやめてほしいかな」


 私が言えたのはせいぜいその一言だったのだ。




こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ第15話をお読みいただきましてありがとうございます。

皆様のご期待に応えることが出来るように今後も頑張って執筆に励みたいと思っております。



さて、今回の本編ではいくつかの伏線を回収させていただきました。

同時に張られた伏線については詳しく書くことが出来ませんが、いずれきちんと回収できるように調整したいと思っています。


それではまた気が付けばエルフ第16話でお会いしましょう。

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