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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
14/144

秘策

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第14話を公開いたします。

どうぞごゆっくりお楽しみください。

 秘策



「それでは長らくお世話になりました」


「お世話だなんてとんでもない。貴女たちを引き留めたのは元々私だし、それに随分と余計なことをさせてしまって心苦しい位だわ。晩餐会パーティーの日取りが決まったらベロニカへ伝えておけばいいかしら?」


「はい、それで結構です。私たちもこれから一度彼女のところに顔を出しに行きますので」


 当初三日の宿泊予定は伸びに伸びて、結局のところ私とサラは一週間ほどグローリー男爵家にお世話になっていた。

 長かったような短かったような……とにかく怒涛の一週間であったのは間違いない。

 ミリアちゃんも見送りをしたがってくれたものの、私塾があるために最終的にはそちらを優先した。

 どうせまたすぐに会えるしね。

 ベロニカさんに執事のセバスさん、ほか数名に見送られ私たちはグローリー男爵家をあとにすることになった。



「「それでは失礼します」」


 とサラと声を合わせて会釈をする。


「では参りましょう」


 と、これはリーリカさんだ。

 私たちは来たときと同じようにリーリカさんの後について上層区を歩いて行く。


 後ろから眺める彼女の歩く姿は相変わらず美しい。


 緩やかに下る坂をゆっくりとした速度で歩く。

 最初来たときは気持ちに余裕がなく、見えなかったものも、色々見えてくる気がするのはわかるけど、一度歩いた道は次は近く感じるという感覚はいつも不思議に思う。


 そんなことを考えていればもう教会だった。


 リーリカさんが門番に何やら説明している。

 私とサラは冒険者章を見せるだけで通過させられた。


 リーリカさんも門を通過して、それまでと変わらずに先導してくれる。

 どうやらベロニカさんの洋品店まで一緒に同行してくれる様だ。


 この時間のこの時間の中層は賑やかだ。

 冒険者が多く街に繰り出す時間を狙って広場では、既に彼らの胃袋を掴むべく多くの屋台が店を開けている。

 そんな広場も久しぶりに来た為だろうか?余計に騒がしく感じる。


 広場を通り抜け、商店路地までくると流石にこちらはまだ静かだった。



 ほどなくして私たちはベロニカさんの洋品店に到着したのだった。


 ◇ ◇ ◇



「そちらの方は首尾は上々というところね」


「あぁ、グローリー男爵家にいる間に何人か、個別に呼んで打診していたようだけど、反応は良かったと思うぜ」


「そうね、私からみても皆さん興味深々といった感じだったと思います」


「サラ様もエリス様もお美しいですから。皆様それはもうお喜びになられていましたので、晩餐会にはきっと沢山の方がいらっしゃるかと思います」


 ベロニカさんのお店の奥で私たちは報告をしていた。

 滞在期間が延びると知った彼女は追加でいくつかのドレスを送ってきていて、それぞれについての感想や意見なども。細部にわたってメモを取っていた。


 まずロゼッタ婦人と交友のある数人の方の反応をみた結果は上々である。

 好感触と感じた婦人はグローリー男爵の凱旋晩餐会をダシにして、そこで洋服のお披露目をすることに決めたようだ。

 つまりは、ファッションショーを行うというものだ。

 本来の主役はグローリー男爵のはずなので、それに乗じたらなんだか不敬な気もするけれど、みんな気にした様子はない。


 ベロニカさんの方はといえば、ある程度この流れを予測していたらしく、既に大量のデザインと型紙を用意していた。

 店舗手前にある作業部屋では数人の針子さんたちが既に制作に取り掛かっている服もある。


「こちらの方でもある程度用意は進めていたのだけれど、この分だともう少し数を増やしたほうがよさそうね」


「皆様流行には敏感ですから、おそらくは宵越しになるかと」


 リーリカさんが言う宵越しというのは、通常行われるパーティーは夕方6時頃から10時頃までの4時間程度が多いそうなのだけど、真夜中を超えて開かれるものをそう呼んでいるとのことだった。



「そうなるとサラさんとエリスちゃんの二人だけでは少し大変ね。お屋敷のほうは給仕で手一杯でしょうし……」


 ベロニカさんは何やら指折り数えたりと考えながらそんなことを言った。


 この世界の洋服は着替えるのも一苦労なのだから、それを考えればひっきりなしに着替えても間がもたない。


「あー、そこについてなんだが……ちょっといいアイデアがあるぜ?」


 そんなことを言うのはサラだった。

 サラがリーリカさんへ視線を向けると


「そうですね、メインはお二人にするとして、間を取り持つとっておきの方法をエリス様が既にみつけておいでです」


 はい?


 突然話を振られて意味不明だった。


 ベロニカさんは、まぁまぁ!みたいな感じで期待の目を向けているし、どうすんのこれ?



「わ、私そんな方法なんか……」


 言いかけたところでサラが私を指さしているのに気が付く。

 よく見ればリーリカさんも私を指さして……。


「二人して指さして一体なにがなんだか」


 困惑の私をため息交じりに見たサラはこんなことを言うのだった。


「エリス、いいからその服を脱げ」


「え?脱ぐってここで?」


「そう、今ここで」


 なんだか空気が変わったのを察知して逃げようとすると、いつの間に回り込んだのかリーリカさんが私の背後からがっしりと私の肩を掴んで逃がさない。



 色々おかしいと思う。

 いつの間にかサラもベロニカさんまでもその目に怪しげな光を灯して私に手を伸ばして迫ってくる。



「なんでこうなるのよぉぉぉ!」


 気が付けば私はあっという間に服を脱がされ、裸にされてしまったのだった。



 ◇ ◇ ◇



 ――白昼の乱痴気騒ぎが収まった室内で


「というか、そもそも着ていた服を脱ぐ必要なんてなかったんじゃないの??」


「それはなんというか、そのほうが話が盛り上がるかなと」


「エリスちゃん可愛いものね、肌も綺麗でほんとに食べちゃいたいくらいだわ」


「ご自分の美しさを歯牙にもかけないその謙虚さも、そこまでいけば妬ましい位です」


 答えになっていない気がする。


「きちんと言ってくれれば脱いでくるし、そもそも他の服でもよかった話じゃない」


「別にどこで脱いでも同じじゃないか。それにその服はお前にに合わせて作ってあるんだからその服で確認したほうがわかりやすいと思ってな」


「ここには女性しかいないのだし、気にすることはないじゃない」


「そうです、エリス様の裸なら既に身体中、細部に至るまで拝見していますし」


 さらっととんでもないことを言った人がいる。


「あら、非常に興味深い話だけど、そうね、まずはこの話を先に片付けてしまいましょう」


 そんな話を蒸し返すつもりなんかまったくないんだから!


「と、とにかく!ドレスを装備品にしてしまえば解決できる、ってことで良いのよね?」



 そう、サラのいうアイデアとはそういう事だった。

 ドレスの着替えに時間がかかるのは、伸縮性のあまりないこの世界の衣服で、個々の体型に合わせて作られているのが大きな原因だった。

 特にデザイン性を優先させたドレスともなると、気を付けて着ないと縫製を痛めてしまったりするのだから。


 ドレスを私が装備品化してしまえば、自然と着る人にあわせてフィットする。

 その利点を生かして、即興の試着会にまで発展させてしまえば、その間に休憩を挟んだりと充分な間を埋められるというのがサラの考えたとっておきのアイデアだった。


「しかしまさかそんなことが出来るようになるなんてね、ビックリだわ」


 ベロニカさんがそんな事を言ってるけれど、急に使えるようになった私はもっとビックリなのだ。


「装備化の魔法をかけてもらうのは非常に高額ですからね」


 と、これはリーリカさん。


「え?そうなの?街の冒険者たちも身に着けていると思うけど」


「いや、基本は身体にあう装備品を探して使ってるのさ。装備品属性の物だけで揃えてるなんて、お前くらいのものじゃないか?」


 そう言いながらサラは私のほうを見る。


 私が先程まで着ていた(ドレス)は今はベロニカさんが着ているので、今私が着ているのはこの世界に来たときに着ていた謎の服だ。

 シルエットこそ学校の制服になんとなく似ていたものの、細かい構成やらは全くの別物である。


 折角の機会なのでちょっと紹介しちゃおうかな?


 地味に複雑な作りなのだけど、ベースになっているのは白いロングのワンピース。

 上半身はボタン留めになっていて、立ち襟の周りにはフリルが二重にあしらわれていて可愛らしい。

 胸元と袖口付近にはドレープと飾りレースのフリルが付いていて、スカート部分も半分くらいは段にフリルが付いている。


 その上には濃い緑でに染められた革製と思われる巻きタイプのコルセットスカートが重なって、正面部分は三角に下のワンピース部分が見えるのだ。

 上着はコルセットスカートと同じ色と素材の襟付きケープみたいな感じで、羽織っているように見えるのだけど、実は腕を通すバンドが中に有って歩いてるうちに落ちてしまうなんてことが無いようになっている。

 ケープもコルセットスカートも淵には金糸で飾り刺繍がされており、意味はわからないものの、紋章までついている。コルセットの留め具も恐らく本物の金らしかった。

 ケープの襟下にも留め具があって、チェーンを掛ければ前をゆったりと閉じることもできるようだった。


 この世界にきて一週間とちょっとだけど、改めて街の人が着ている服をみれば、この服が相当異質で上等な服なのは間違いないだろう。



「エリスちゃんのその服も複製レプリカを作ってみたいものだわ」


 私が服を確認しているとベロニカさんがそんなことを言う。


「同じものを作れそうですか?」


「そうね、無理とは言えないけれど、問題は材料ね。

 それだけ上等な織物と革を用意するとなると……材料だけでも1金貨、いえその金のボタンとかまで再現するならばそれだけで1金貨くらいかかるわね。そうすると2金貨として最低でも4金貨~5金貨になってしまうわ」


 この世界の1金貨はおよそ50万円くらいの価値だった筈である。

 提示されるとんでもない額に私は顔をひきつらせた。


「あの、参考までに装備化して全部再現したとするといくらになるんですか?」


 恐る恐る聞いてみる。


「そうね、大体の装備化の価値は、元の値段の倍を要求されるわ。だから5金貨で売るならば、10金貨を要求される」


「15金貨の服なんて買う人いるのでしょうか?」


 更に聞いてみる。


「いるわね」


 即答だった。

 ベロニカさんはハッキリと元居た世界で750万相当の服を買う人がいると言い切ったのだった。


 サラやリーリカさんの反応を窺うと、特段驚いた様子もない。


「まあ、いいじゃないの。とりあえずエリスちゃんが当面生活に困ることが無くなったのは確かなのだし」


「えと、それどういう事ですか?」


「今回の試着会で装備化してもらうドレスだけど、きちんと見合った装備化の手数料は払うわよ?勿論本来の約束の売り上げの1割の報酬も二人には払うわ」


 つまりはそういうことだった。

 元々売ろうとしていたドレス一着の予定価格は3銀貨ほど。

 これを装備化して1金貨程度に価値になるという。

 1着につき、6銀貨ほどは丸々私の取り分となるのだ。

 それとは別に私とサラには2~3銅貨がプロモーター料として入ってくるのだから相当な金額になるというのだ。


「金はいくらあっても困るものじゃないからな、稼げるうちに稼いでおくのが鉄則だぞ」


 サラは動じた様子もなくさらりと言った。


 ぐるぐると回る頭の私の目にはもしかしたら$マークが浮かんでいたかもしれない。

 目先の話に目を回す私がもう一つ、無自覚にもしでかしていたことを知るのはこのあとの事だった。

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第14話をお読みいただきありがとうございます。

今回ボリュームが大きくなってしまい、かといって分割させるのは混乱を生みそうでしたので、あえて1つの話という事で掲載させて頂きました。


PV数も少しずつですが増えているようですので、頑張って執筆していきたいと思います。

気に入っていただけましたらブクマ、評価など頂けると励みになります。


それではまた気が付けばエルフ第15話でお会いしましょう。

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