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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第四章 厄災の緋眼
128/144

賢者の魔法

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第128話公開です。

お楽しみください。

賢者の魔法




「あくまで憶測の域を出ないのですが……」


そう前置きして、ブレスト王子が導き出した一つの仮説の説明を始める。


「エリス様の魔法が詠唱文に反応しないのは依然謎ですが、エリス様が以前数度使われたという魔法には心当たりが御座います。魔導紋を伴う大出力の魔法、賢者の魔法とも呼ばれた、古の賢者として伝説の残る、西の大賢者が使った魔法に非常に特徴が似通っていると思うのです。数百年の時を生きたかの有名な賢者もある時を境に歴史から消え去って、おそらくは既にこの世にはいないとされておりますが、賢者に連なる伝承は今も隣国ゾーンの国に多く残って御座います。噂によれば賢者がその知識をもって編纂したという知識の書なるものが、今も知識を求める者に、知識を授けたなんて伝説もあるくらいでして、些か眉唾ものではあるのですが、かの国が賢者の知識を復活させて、世に広めた物が多くあるのも事実です」


「賢者の魔法ですか」


「はい、詠唱と魔導紋により増幅されたその魔法の威力は、千の兵をも一瞬で葬り去ったともいわれてまして」


「では賢者の知識による世に広まったものというと、例えばどんなものがあるのですか?」


「エリス様もお持ちだとは思いますが……ご存知ありませんでしたか。それなら……サラ」


「ああ、これだな」


ブレスト王子に言われ、サラが胸元から取り出したのは、冒険者章だった。


「魔物のコアを加工した製品や、それらと水晶を組み合わせた製品、といったほうが良いかもしれませんが、それらは元々、西の大賢者が世にもたらしたものだと言われております。一度は失われたその技術ですが、八百年ほど前にゾーン公国が技術を復活させてから、特に多く世に広まりました」


「もしかして、ステータスのエンチャントもそうなのですか?」


「そうです。あれはコアの魔力を利用して、台座に刻まれた付与式に持ち主の魔力を刻むことにより、その者のステータスを知ることが出来る、魔法発動機ですね。厳密に言えば恐らくエリス様の言われるエンチャントとは、違うものですが結果から見れば遠からずです」


思ったより身近に有った賢者にまつわる品物に、意表を突かれはしたものの、私は先程から魔導紋という物が気になって仕方が無かった。

私がブラッドフライやシーサーペントを仕留めた魔法、あれは恐らく、トランスキャストの発動による魔法で間違いないと考えていたからだ。


謎の多い私のスキルだけれど、私は一つの可能性を、強く確信するまでに至っている。

多分私は、自身の想像力の範囲内で、その結果や仕組みをある程度イメージできるのならば、|あらゆる魔法を創造できる《・・・・・・・・・・・・》。


つまりは――クリエイティブ・マジック。


それだけをとればとんでもないスキルに聞こえるかもしれないけれど、この発動条件は未だに良く判っておらず、ただ直感的にイメージできた魔法は、そのまま行使が可能になるといったものが経験上多かった。


私が最も使っている能力――装備化は、おそらくアイテムに対する属性エンチャントの魔法なのは間違いなく、実際に装備化を行えば、気力だけでなくMPもきっちりと消費されるのだ。


そのことに気が付いた私は、まとめて目の前の服の山などを装備化しようと試みたことがあったけれど、これは残念ながら失敗に終わっている。

憶測だらけの考察だけど、本来その対象を手に取った時、どのように調整されるかを、形状などから無意識にイメージ出来ており、単一のものであればそのまま装備化は成功する。

しかし様々な衣料品の山に対しては、そのイメージ力が足りないのだろうと自分の中で結論づけていたのだった。


とにかくそんな感じで、実際に試したことのあるものと、本能的に試すことを避けている魔法があるけれど、トランスキャンストに関しては、その発動事態は任意に行える。


ただし――発動した後は、ほとんど記憶も無く、半分夢を見ているような状態になってしまい、気力か魔力の尽きるまで、他の行動を行うことが出来ないのだ。

その不便極まりないトランスキャストを明確に発動したのはこれまで二回、ブラッドフライとシーサーペントの時なのだけど、その威力だけを見るならば疑う必要もないほどに、高火力のものだった。

最もどちらも最後は気を失ってしまった為、自分の目でその効果を見たわけでは無いのだけれど。


サイダの湖上で私が歌った唄というのが、それがトランスキャストによるものか、或いは他の何かだったのかは、今のところ不明であり、魔導紋は出ていなかったという話から、それはまた違うものだと、直感的には感じている。


もう少しきちんと制御できるようになったなら……私は緋眼に対抗する術を持つに至るのだろうか?


「ゾーンでより深い知識を得られる可能性は……?」


「無いとは言い切れませんね。いえ、むしろ得られる確率のほうが高いでしょう。しかし、知の書を見たものは、精神に異常をきたすとも言われており……」


私の問いに、言葉尻を曖昧にすることで答えるブレスト王子。

禁忌に触れる禁断の書。禁書とも呼ばれるその知の書とは、いったい何が書かれているというのだろう。


◇ ◇ ◇


私達の目の前にあるのは大きな肖像画だった。

それは椅子に座る貴婦人と、その横に手を繋ぎ立つ小学生くらいの女の子が、綺麗に着飾って


「わあ! 可愛い!!」


思わず上げたその声に、サラは少し恥ずかしそうにその絵の事を説明してくれた。


「それは母上が亡くなる前に描かれた肖像だよ」


「横に立っているのがサラなのね?」


「ああ。描いている間、動けない私の為に母上は色々な話をしてくれたんだ」


椅子に座った母を見上げる娘と、そんな娘を優しい眼差しで見守る母の、在りし日を描いたその肖像画は、母がコーディネートしたままの少しばかり少女趣味の彼女の部屋に、今も変わらず飾られている事に、私はなんだか温かいものを感じていた。


「ちょっと意外な部屋だったけど……とても暖かいいい部屋ね」


「そうだな、何度か模様替えしようかと悩んだけれど、なんだか思い出までもが塗り替わってしまいそうで、なんとなくそのままにしてるんだ。それに、この部屋と絵を見るたびに、私は同じ悲しみを少しでも減らすため、冒険者としての原点を思い出せるんだ」


母の死に誓ったその想いを、今も大事に抱えて生きるサラの姿は、悲しみを乗り越えるための、彼女なりの生き方なのだろう。


「サラの大事な原点がこの部屋に詰まっているのね」


その言葉に頷くサラは、肖像画の中に描かれた娘を見守る母によく似て、美しくも優しい笑みを浮かべいつまでも肖像画を眺めていたのだった。


◇ ◇ ◇


翌日私たちはブランドル城を発ち、ブランドル公国西側の隣国アクラ公国へと出発した。

漸く力一杯に走れる事に、エリとリリの二頭の機嫌も良く、馬車は快調に山道を進んでおり、上空にはゆっくりと飛ぶ飛竜の姿が見てとれた。

そのおかげで馬車を襲う魔物も今のところなく、非常に快適な街道の旅となっている。


私達は一度アクラ公国を訪れた後、緋眼の報告を済ませた後に、出来るだけ早くゾーンへと向かう予定で、そこでフレバー子爵の起源と、緋眼の情報を集める予定となっている。


厄災の緋眼が敵視するその血脈を知ることで、その根幹に何があるのか分かれば万々歳というところなのだけど、せめてその血族が狙われている事実だけでも伝えたかった。

しかし緋眼が何かを目論んで着々とその準備を進めていることは疑う余地も無く、果たしてそれが為されてしまえば何が起こるかなんて、到底理解の外にある訳で私達の心の奥底に、静かに影を落としたままなのだった。


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