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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第四章 厄災の緋眼
125/144

王子達の歓迎

こんにちは。

味醂です。


なんだか上手く投稿できず遅れましたが……


気が付けばエルフ 第125話公開です。

お楽しみください。

 王子達の歓迎




「良いか? 上手くやるんだぞ? マルチナ」


「分かっておりますわ、アーレス様」


「頼りにしているぞ? マチルナ」


「お任せください、ブレスト様」


「「では二人とも打ち合わせ通りに」」


「「はい」」



 それはほんの少し前。「城門の見張り塔の上で、何やら怪しげな人影がいくつかあります」と覗き窓から前方を窺っていたリーリカは、そんな事を言い出した。


「シーラさん、何やら城の方で不穏な動きがあるかも知れません、十分注意してください。今のうちに防護板を跳ね上げておいた方が良いかもしれません」


「しかしブランドル公国城館へ赴く際に、そのような不躾な事をするのは些か問題になるのではありませんか?」


「確かに一理ありますね、ではもし何か不穏な動きがあった際には、すぐにでも防護板を跳ね上げて、その影に隠れられるように準備だけしておいてください」


 なにやら物騒な事を言い出すリーリカとシーラさんの二人に、私は厄災の緋眼の待ち伏せという場面を真っ先に思い浮かべる。


「サラ、どうしよう? もし緋眼が先回りしていたら、国王やサラのお兄さんたちの身に何かが起きているかもしれない」


 この借りはいずれ、と去っていった緋眼の後姿を幻視しながら、私もいつでも臨戦態勢になれるようにと準備を整える中、サラだけは「まあ、大丈夫だと思うぜ?」なんて呑気な事を言っていた。


「リーリカ、怪しい人影はどうなったかしら?」


 どんどん大きくなる城館に、更に緊張感をあげながらじっと前方を凝視しているリーリカは、時折あちらこちらへと視線を移すと


「先程の場所には消えているようですが、一人くらい残っているかもしれません。最低でも二人以上の影がチラリと先程見えていましたので……監視塔や他の物陰などに十分ご注意を」


「城門開きます!」


 接近する馬車に城門前に立つ衛兵が何やら合図をして、ゆっくりと城門が開き始めると、シーラさんはその報告をしてくれた。


「停車した後、まずはわたしが出ますので、エリス様とサラ様は出来るだけドアから離れた位置に、できるだけ影に入るようにしてください」


 ピリピリと緊張感を増すリーリカの声に、私は黙って頷くと出来るだけドアの影になるような位置へと移動する。

 やがて馬車は城門を潜り抜け、前庭の奥の車寄せに停車すると静かにリーリカはドアを開け、ゆっくりとタラップに足をかけたとき。


 何かが弾かれる音と共に、風を割きながら近付く何かの音が、私の耳にハッキリと聞こえてきたのだった。


「リーリカ!」


 そう叫ぶ頃には、既に何かを鋭く風を切り裂く音をさせながら、一刀の下に切り捨てて、それが飛んできた方向へ鋭い視線を向けたまま、リーリカは大声で叫んだ。


「何者です!? いきなりこのような真似、いかにブランドル公国の王城だとて、許されることではありませんよ!」


 怒気を孕んだその叫びに、返答はなく、代わりに今度は二回、何かを弾く音がした。


「二本!」


 今度は先にそれだけでも告げれたことは、私にとっては上出来だろう。


 リーリカはくるりと回転しながらに、まやも一刀の下に今度は二本の矢を、きっちりと斬り払う。

 リーリカの足元に落ちたのは、鏃の代わりに先端に丸いものを括りつけた、訓練用の矢。

 その様子を端目に見止めたリーリカは、やや緊張感を解きながらも


「どうやら緋眼ではなさそうですが、冗談にしては少々度が過ぎるますね……サラ様、なにか心当たりはございますか?」


 リーリカに冷たい言葉を投げかけられたサラは、軽く眉間に指を当てながら、一つ大きくため息をつくと立ち上がり、馬車の外へと飛び降りると――


「チナルナ!! お前らバレバレだから諦めて出てこい。それにそんな矢が当たらないのは今ので分かったろ? 矢の無駄使いをするんじゃない」


 そう叫ぶサラの声に、やがて姿を現す人影二人。

 どちらも給仕服を着た、でも、同じ顔の二人がまるで鏡にでも姿を映すかのように並んでいた。


「「お帰りなさいませ、サラ姫様」」


 恭しく礼をとる二人にサラは


「おい、マルチナ、マチルナ、首謀者の顔がないようだが?」


「首謀者、ですか? 一体何のことでしょうサラ様。 ねぇ、マチルナ?」


「そうですね、マルチナ。わたくしにも全く何のことだかわかりませんわ」


「お前たちが忠義心に溢れているのはわかってるが、それがあいつらの本意なんだな?」


「「申し訳ありませんが、まったく何のことだか」」


 最後には綺麗に声を重ね合い、そんなことを言う二人のメイドは、悪びれることも無く、ただ静かにその場に佇んでいる。

 その様子に少々苛立ちを見せるサラは、最後通告とばかりに大声を張り上げて


「アーレス兄様、ブレスト兄様、自分たちのメイドに罪をお仕着せて、保身に走るというならばアタシにも考えがある! 今後二度と口を利くことはなくなるが、それでもいいのか?」


 静まり返る前庭に、どこからともなく靴音が響き渡り、やがて息を切らして姿を現したのは、またしても二人の人物だった。


「「サラ、誤解だ! 後生だからそんなつれない事を言わないでくれ!!」」


 先程までの見事さはなかったものの、またしても声を揃えて懇願するその声に、サラは無言で近付くと――固く握りしめた拳で二人の頭を容赦なく殴りつけるのだった。


「ああ、リーリカも構わず殴っていいぞ? アタシが許す。 あとエリスもシーラももう大丈夫だから出て来いよ」


 悶絶する二人を冷たい目で見つめるリーリカは、ぷいっと横を背けると、私の横に来て控えるのだった。


「予定外だが丁度いい、こんな状態で申し訳ないが、私の兄のアーレスとブレストだ。一応こんなのでもこの国の王子だから、茶目っ気が過ぎるとどうか笑って許してやってくれ。あとこの二人は、アーレスとブレスト付のメイド、双子のメイド、姉のマルチナと妹のマチルナだ」


 依然悶絶する二人の王子と、深々と頭を下げる二人のメイドという、なんだかやたらとシュールな光景が、私が初めて訪れたブランドル王城での出来事となったのだ。



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