#38
ある方がアンナの外伝を考えてくださり、ただいまその外伝をいろいろ手を加えて出させてもらおうかと検討中です。
本当に読者の方々には感謝をし足りないですが、その才能が作者にとって本気でほしい・・・・
小説の才能を目覚めさせてくれる魂魄獣が来ないだろうか・・・・・切実な思いです。
SIDEカグヤ
・・・・ついにこの時期がやって来た。
「夏休みがきたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『叫ぶほどですかね?』
アンナにツッコミを入れられたが、なんとなく叫びたかっただけであるとカグヤは思った。
学校入学してから初めての夏休みとなり、終業式を終えて夏休みがついに到来したのである!!
とはいっても、夏休みの期間は1ヶ月ほどでありものすごく長いわけでもない。
けれども、その期間内で自身の実家へと帰郷する人は数多くいるのだ。
カグヤの場合は、首都ロウソリアンから実家のシグマ家の領地までは馬車で2日ほどの距離なので物凄く遠いわけでもないので、往復時間をあまり計算に入れずに夏を過ごせるのであった。
ただし・・・・
『ものすっごい夏休みの宿題の山がありますよね・・・』
「これを一カ月で終わらせるのは大変そうだよなぁ」
馬車の荷台に詰めた宿題を思い出し、苦笑いをするアンナとカグヤ。
10歳児にこなせるのかと言いたくなるような膨大な量の宿題は、精神的にきついところがあるだろう。
「あははは・・・まぁまぁカグヤ、一日少しづつ毎日こなしていけば大丈夫だよ」
「そうそう、僕たちだってこれをカグヤ以上に毎年こなしていたんだからね」
カグヤの様子を見て、励ますかのように兄のエリザベスとスイレンが笑って話しかけてきた。
現在、カグヤたちは夏休みなので久しぶりに家へと帰宅するために馬車に乗っているのであった。
なお、兄二人のそれぞれの魂魄獣はその手元で手入れをされていた。
エリザベスのすり鉢の物質型魂魄獣「コギリーン」、スイレンの枝切りばさみの物質型魂魄獣「デッドリーカットマン」はそれぞれ気持ちよさそうに・・・・目を細めているのか?
『気持ちよさそうにしてますよ。物質型はああやって手入れをされることによって、快楽を得るんです』
「言い方がなんか卑猥なような気がするんだけど?」
というか、丁寧に手入れする兄たちと、気持ちが良いのかわずかに動いているのすり鉢と枝切りばさみの光景ってなんかカオスなような気もするなぁ。
まあ、相変わらず元気そうなのはいいことである。
それに、エリザベス兄さんは薬の事で現在なんとこの国の国王から胃薬の注文が来ているようで、国王愛用の薬の製造で学業と共に忙しく過ごしているのだとか。
・・・・ついでに、その胃薬に使用する薬草の配分は俺も手伝いました。うん、ちょっとだけ噂に聞いたらシグマ家の事で胃を痛めていたりするらしいからね。
なんとなく罪滅ぼししたくなったんですよ・・・・シグマ家出身者として謝りたい。
・・・・だが、カグヤが現在この国の国王であるダースヘッドの胃痛原因トップに立っていることを本人は自覚していないのであった。
兄二人はおとなしいのでそれほどでもないが、問題を起こすレベルで言えば・・・カグヤの方が圧倒的であったからである。
(言わないほうが良いんでしょうけど、トラブルメーカーってカグヤ様のような人の事を言うのでしょうか?)
若干ズレてはいるが、常識人(?)であるアンナは心の中でそう思った。
・・・しかし、アンナは知らなかった。
自身が魔女の姿となった時にそこはかとなく漏れ出る妖艶さを感じ取った者たちがいることを。
その者たちが結集し、いつの間にか大規模なファンクラブが人知れずに出来上がっていたことを。
そして、ファンクラブがこっそりと周辺で起こり得たかもしれない騒ぎを取りつぶしていたことを。
自分は常識人の方だとアンナは思っているのだが、その美貌がすでに常識を破っていたことに気がつくのは・・・・果たしていつになるのだろうか。
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SIDEリース
「ふぅ・・・久々の実家か」
馬車に乗りながら、実家であるソード男爵家のことを考えてリースは溜息を吐いていた。
家の中ではリースの扱いはいいものではない。
そのうえ、いつバレるかもわからないようなことをさせられて学校に通わされているのを不満に思ってはいるのだ。
ただ、今はまだ家の中でのリースの発言権は強い物ではないし、なりを潜めるしかない。
けれども、こんな秘密を抱えてどれだけバレずに済むのかと考えると気が重くなるのであった。
『ニャァ、ニャーオン』
リースの姿を見て、心配するかのようにニャン太郎がその膝の上に載って来た。
自身の主であるリースを気遣い、少しでも励まそうとするニャン太郎なりの気遣いであろう。
「ふふふ・・・心配してくれているのかなニャン太郎は。大丈夫だ、僕は・・・絶対にいつの日か実家を飛び出して自由になって見せるからね」
『ニャァ!』
リースに頑張れと言うかのように鳴くみゃん太郎を見て、リースは思わず微笑む。
そして、学校で出来た友人・・・・カグヤとミルルを考えると少しは気分が良くなったのであった。
(・・・本女?あれは知らん。友人ではなく傾国の魔性の女だろあれは)
ただし、アンナだけは友人と認めてはいなかったが。
喧嘩相手というか、馬が合わない相手というか。
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SIDEミルル
「ふぅ、暇ですわね・・・」
その頃、ミルルは王城にある自分の部屋のベッドの上で寝ていた。
この夏、別にミルルは特にやることもない。
舞踏会やらのイベントがないわけでもないのだが、第5王女であるミルルはさほど重要な位置にいないので、特に出席する必要性もないのだ。
そのため、宿題を地道に解いていくことぐらいしかこの夏にやることはなく、暇であった。
『ミルル王女様、それでありましたらどなたかご友人の家にでも遊びに行ったほうが良いのではないでありましょうか?』
ミルルの退屈そうな様子を見て、魂魄獣であるナイトマンはアイディアを出す。
「それもそうですけど・・・・・友人ね・・」
学校内にいる友人として、真っ先に考えられるのはカグヤとリースの二人であろう。
元々はカグヤの力を不安視して監視する役目として自ら一緒にいたのだが、いつの間にかそのことを忘れて、友人として普通に接していたのである。
それ以外で友人と呼べるような相手はいないこともないが・・・・貴族の女性の友人環境は厳しいものだ。
ぶっちゃけ言って、貴族同士の争いよりもはるかにドロドロしたものに等しいだろう。
自分たちが女であることを活かして、自身よりも高位の家に玉の輿狙いで接触を図るモノや、追い落とすために相手の婚約者を奪ったり、気に食わないから陰湿ないじめを仕掛けようとする者さえいるのだ。
その中に、王族としてのミルルが入ると機嫌取りをするような輩が多いのだが・・・実際に友人として見てくれているのかが疑問に思える。
真の意味で友人として見てくれているのは、おそらくあのカグヤとリースの二人だけではないだろうかとミルルは思うのであった。
「でも、遊びに行くとしても何もなければ意味ないですわね」
『まあ、そうでありますね。じっくりと考えたほうが良いでありましょう』
ふぅっと溜息を洩らしたミルルに、ナイトマンは自身の主のためにどうにかできないだろうかと考えるのであった。
常識人って何を基準に常識人というのだろうか。
自分は常識あると思う人でも、周りから見れば常識外れなんてことがあったりもする。
そう考えるときりがないような気がしてきた。
・・・・そういえば、珍しくニャン太郎が腑抜けじゃない話だった。いつもならアンナにあんなことやそんなことをされて腑抜けているのに。




