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呪法薬のもう一つの効果

「ルシアナ様、本当なのか、全部解決するっていうのは!?」


 どうやら眠っていたらしい団長は、寝ぐせだらけの髪のままルシアナの前に現れて尋ねた。


「いえ、まだ解決するとは限りません。でも、もしかしたら魔物と戦う必要が無くなるかもしれないんです。森の賢者様を呼んだのもそれが聞きたかったからです」

「ウキ?」


 森の賢者が、団長の寝ぐせに掴まって尋ねる。

 いつも頭の上に乗っている森の賢者だが、団長の寝ぐせは彼にとってちょうどいい手綱代わりらしい。


「森の賢者様、味覚改変の呪法薬のことですが、本当に変わるのは味覚だけなんですか? 他に変わってしまうものもありますか?」

「ウキー、ウキ」

「食べ物の味っていうのは、舌で感じるものだが、でも舌だけで感じるものじゃない。味覚というのは、口に入れた時に鼻に抜ける空気による嗅覚と舌で感じる味覚の両方で一つの味となる。味覚改変の呪法薬と便宜上言ってはいるが、嗅覚も変わるそうだ」


 やっぱりそうか――とルシアナは思った。

 最初に感じた違和感は、団長が調合した呪法薬を飲んだときだ。

 とてもいい匂いがした。

 あれは、ルシアナの香水の匂いの成分の一部が反転し、いい匂いに感じたのだろう。

 そして、今日、気絶したリザードマン。

 今回、下級ポーションが一本多いという報告を受けた。

 それはルシアナの失敗だった。

 リザードマンに投げた下級ポーション――あれは下級ポーションではなく、味覚改変の呪法薬だった。

 バジリスクが現れたと聞いて慌てて薬を入れたときに間違えた。

 本来なら、薬を使う前に絶対に薬の確認をするのだが、あの時はリザードマンに怪我を負わされ、慌てて気付かなかった。

 でも、今にして思えば、薬液の色が下級ポーションと違った気がする。


 ルシアナにとって悪臭の香水がいい匂いに感じたように、魔物たちを引き寄せる、つまり魔物たちにとって最高にいい香りのはずの墓守の黴によって発せられるフェロモンが気絶するほどの悪臭に感じたのかもしれない。

 あくまで推測でしかないが、それが正しい可能性は高い。


「でも、ルシアナ様。それって、一本につき一匹しか効果がないんだよな? 確かに強い魔物にだけ狙って使えば多少は効果があるかもしれないが、それで一気に解決ってのは無理があるんじゃないか? さすがに俺一人で作れる呪法薬の数は限度があるし」

「いえ、それに関しても。先日、冒険者の一人が、眠りの呪法薬を、ミストポーションの代わりに使ったことがあります。同じように、焼いた石の上に掛けて使えば。屋外ですから、持続時間は少ないですが、しかし室内で使うよりも広範囲に効果を発揮させることができます。気絶させることはできなくても、逃げ出すくらいは」

「…………すげぇ」


 団長がポツリと呟く。


「つまり、それができたら、魔物を一網打尽にできるってことかっ!? 俺の薬が村を救うのか?」

「いえ、違います」


 ルシアナは団長に間違いを指摘する。


「あなたの薬がこの国を救うのです」


 自分の薬が国を救う。

 そう言われ、団長は歓喜に震えた。

 これまで、青年団の団長という肩書きだけ見れば若者のまとめ役ではあるが、だが、しかし、青年団の中で最年長というだけ。しかも、そろそろ年齢的にも青年と呼べなくなってきたので、団長の役職を他の者に譲ろうかと思っていた矢先。

 自分に舞い込んできた思わぬ言葉。

 トラリア王国の救世主になれる――しかも、それを彼が尊敬してやまないルシアナ本人から言われたのだ。

 嬉しくないわけがない。


「ルシアナ様、俺、頑張ります!」

「はい。では、早速ですが、明日の朝までに呪法薬を三十本作ってください」

「……え? あの、ルシアナ様、俺、昼間ずっと戦っていて、そろそろ疲労が限界で」

「ファーティグリカバリー」


 ルシアナが団長に魔法を掛ける。


「疲労回復の魔法です。副作用として眠気が無くなり、翌朝の疲労が酷いことになりますが、頑張ってくださるのですよね?」

「…………」


 一瞬、団長はその言葉に呆然としたが、直ぐに不敵な笑みを浮かべて言う。


「ええ、勿論、やってやりますよ! ルシアナ様、森の賢者様、見ていてくださいね!」

「ウキ」

「え、眠いから一人でやっていてくれって、そりゃないよ、賢者様」


 団長は少し拗ねたような表情を作りながらも、呪法薬の調合に取り掛かると約束した。

 

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