#8 ウルファング討伐①
「ごめん待った?強化にてこずっちゃった。でもおかげでフルMAXになったよ…ってスグル、どうしたの?顔、青いよ?」
「…聞かないでくれ」
もうあんな恐怖は味わいたく無い…
人って死にそうな時、あんな気分になるのか…
まだ気持ちわるい…
「大丈夫?気分悪いならログアウトでもする?」
マミナ、あなたは天使ですか?
「ほっとけ。そのうち良くなるだろ」
ショウ、この悪魔の化身め。
少しは慈悲ってのが無いのか。
「ま、それはそうとして、よ。早く討伐行きましょ。スグルのレベルを上げないと」
「そうだな…死ぬなよ?スグル」
「その前に殺されそうになった事について詳しく」
「アーキコエナイ」
ムカつくわぁ…
マミナは何のことだか分からず首を傾げている。
「じゃ、行こうぜ。とりあえず、ウルファング討伐でいいんじゃ無いか?」
「そうね。その辺が丁度いいわね。スグルには」
ウルファング…?
狼みたいな感じのモンスターか?
そんな事を考えてるうちに、二人によってクエスト受注の手続きがされて行き、最後にパーティーに誘われた。
「それ、Yesを選択してくれる?そしたらクエスト受けるから」
【パーティーに参加しますか?Yes/NO】
俺はYesを選択した。
【パーティーに参加しました】
【クエストを受注しました】
俺がパーティーに参加するのと同時にクエストを受ける。
「さ、いきましょ。すぐそこの森だからそんなに遠くないわ」
そう言ってマミナが歩き出す。
「そんなに急がなくてもウルファングは逃げ…るのか」
追いかけるようにしてショウが移動する。
離れると確実に迷子になる俺は急ぎ足で二人について行く。
そういえば随分と昔にも同じような事があった。
「なんだよ。ニヤニヤして。気持ち悪い」
「あ、いや。昔の事を思い出してたんだよ。変わって無いなぁ…って」
「そうか?俺達は変わってないかも知れんが、一番変わったのはスグルだぞ?」
「かもな」
何と無く、思い出す。
楽しかったあの頃を。
「こらー!そこのイチャついてるホモ二人!腐女子湧く前にさっさと来なさい!置いてくわよ」
「「誰がホモだっ」」
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「よし、到着したぞ。スグル」
「ここがウルファング主な生息地〈東の平原〉よ」
「すげーな。これ本当にゲームか?」
草の青臭い匂いとか、そよ風とか本物そっくりじゃねーか。
「じゃ、あたしとショウはあっちの木陰で見てるから。サクッとやっちゃって来てよ」
「お、そうだな。スグルがどういう戦い方をするのか気になるし」
「え、大丈夫なのか?俺、絶対死ぬぜ?」
「あたしは全然構わないわよ」
「グダグダ文句言ってないでさっさと行ってサクッとやってやられてこい」
「お、おう…」
なんか不安しか感じないけど仕方ない。
二人の言うようにサクッとやって来るか。
俺は腰に付けてある (宮藤さんに貰った) ホルダーから二丁拳銃を取り出して構える。
遠くに狼が見える。
恐らくあれがウルファングだろう。
もっとよく見ようとして目に力を入れるとウルファングが近くに見えた。
ユニークスキル〈鷹の目〉Lv.1
【レア度:B 遠くの物を見るスキル。使い続けるとレベルが上がり、敵に麻痺効果を与えたりする事が出来る】
初めて使って見たけど目が疲れる。
幸い、ウルファングは一体だけだし、行ける…かな?
ゆっくり、一歩づつ近づく。
1m近づいた辺りでウルファングがこちらに気付いた!
「え、ちょ待っ…‼︎」
ヤバイヤバイヤバイ!
勝てる気がしないっ‼︎
全力でこちらに襲いかかってくる。
まずは一発、トリガーを引いた。
偶然、それはウルファングの頭に命中し、襲われる直前で仕留める事が出来た。
ほぅ…と一息ついていると、レベルアップのお知らせが一気に三回届いた。
「おお、レベルが上がった。これは嬉しいな」
この調子ならクエストクリア、出来るんじゃないか?
そう考えて、俺は次の獲物を探す。
意外と早く見つかった。
「次は三匹…か」
どうやら揃ってお食事中の様子。
丸々と太ったウサギみたいな動物を食べている様だ。
よく狙って…撃つ‼︎
……が、外した。
さっきは両手で支えたからそうでも無かったが、一回撃つ度に腕が後ろへ飛ぶから狙いが付けにくい。
「ってうわ、こっちキタァ⁉︎」
えぇい仕方ない、こうなったら充分に引きつけて撃つしか…
その刹那。
ウルファングが飛びかかってきた。
「…⁉︎」
相手の予想外の行動に不意を突かれ、対応が遅れた。
もうダメだと、諦めた瞬間、体が己の意思とは無関係に動く。
まず、飛びかかって来たウルファングを避けるように体制を低くし、右拳銃で顎の下から一発撃ち込む。
その流れで二匹目の前に踏み込み、左拳銃で真正面から撃ち抜く。
そして二匹目の死体がシステムの海に溶けて消える前に踏み付け、高く飛んだ。
少し離れた位置にいた三匹目は空からの弾丸の雨に呑まれて崩れ去る。
そして、そこで俺の意識は途切れた。
俺が目を覚ましたのは、マミナの膝の上。
ショウとマミナが待っていると言っていた木の木陰だった。
「あ、スグル起きた?」
「……マミナさんマジ天使」
不覚にも、時々マミナが可愛く見える時がある。
「え、なんか言った?スグル。もしかして寝ぼけてる?」
「何でもない。ありがと、もう大丈夫だから」
あんまり長くあそこにいると、またショウにやられそうだからな。
まだちょっと目眩がするけど立てないほどじゃ無いし。
「おー、起きたかスグル。気分はどうだ?」
「最高最悪、なんだかオイシイ展開があった気がするが、まだ頭がクラクラする」
「だろうな。スタミナない癖に上級者みたいな動きしやがって」
「悪い。身体が勝手に動いたんだ」
「そりゃ、防衛本能が働いたんだろうな。昔みたいに」
「…かもしれん」
…そういえばレベルが上がってたっけ。
確かメニュー欄に職業スキルがあったから、ポイントでも割り振るかな。
俺はメニューを開く。
自分のステータスの中にSP振り分け欄があり、職業ごとに取得出来るスキルが違う。
ただ、職業を変えると職業スキルは使えないので注意が必要となる…そうだ (宮藤さんが言ってた)。
さて、何を取るか…
人間って何かと戦う時、自分と互角の相手だと遅く見えるらしいです。
って事は響とウルファング (Lv:1) は…




