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VRMMO始めました。  作者: 星野すばる(旧:★すばる★)
第四章 竜使い達の死乱舞/ドラゴニクス・デスワルツ
61/64

#60 擬人化

 ヴェル:レベル20

 未振り分けSP:60P


 スキル

魔眼(デスアイ)】Lv.20

 魔力感知と魔力線を視認する。

魂魔庫(タマゴ)】Lv.78

 魔力が無限になり、防御力がかなり低下する。

 他者に魔力を与えられる。


 ユニークスキル

【料理人】Lv.25

 料理が作れる。

 弱点発見


 魔法

【火魔法】Lv.5

 灼熱の炎を操る。

【水魔法】Lv.5

 水流を操作し、従える。

【風魔法】Lv.5

 気体操作。空気振動による攻撃が可能。

【土魔法】Lv.5

 創造(クリエイト)。物体を生成し、使用する。ただし、本物よりはるかに劣る。

【雷魔法】Lv.3

 球電作成。その他身体能力の向上。

【虚無魔法:有利得瑠(ウリエル)

 白の空間を生み出し、その内部を零に戻す。そこから新たな世界を創り出す。

【虚無魔法:無二消全(ムニケス)

 黒の空間を生み出し、その内部を無に帰す。本人の意思とは関係なく全てを消し去る。

【虚無魔法:有二得全(ウニエス)

 七大魔法の一つ。強欲の体現。


 ▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


「おぉう……マジかよ」

「…んぅ」


 ベッドの上で、ヴェルの頭を撫でながら寝かしつける。

 かなり久々ではあるが、愛娘のステータスチェックだ。


「各属性習得に加えて、虚無魔法を兼ね備えている……ホント、すげえ才能だよな」


 そう言って、スグルは頭を振った。


「いや、努力の結果…だな」


 無防備な顔で寝こける少女は、特に警戒する訳でもなく頭を撫でられ続けている。


「…むにゅ」


 それどころか、撫でられる手が心地いいのか自分から擦り付けるほどだ。

 ……どこかの変態が俺と同じ状況なら、とうの昔にサカっていただろうな。


「…しかし、この【有二得全(ウニエス)】ってのはなんだろうな。強欲の体現って説明じゃ全然わかんねぇ」

「そりゃ簡単だぜ大主人。大罪魔法シリーズの一つじゃねぇか」

「うん?大罪?って言うとアレか、暴食とか色欲とかの」

「あぁ、間違いねぇよ」

「へぇ、一体そりゃどんな魔法……」


 …待て待て、ウェイトスグル。何をナチュラルに不法侵入者と会話してんの?

 まぁ俺の知りたい事を知ってそうだし?聞くだけ聞いて最後はKO-BANまでご案内してあげよう。

 さぁ視線をメニューからグイッと外して犯人の顔がドーン!


「どっぺるげんがぁぁぁぁ!」

「やかましいっ!主人が起きるだろっ!」


 ケモミミの生えた俺が、いた。


 ▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


 キュウ:Lv.9

 未振り分けSP:24


 スキル

【幼獣化】Lv.1

 各ステータスに制限が掛かるが、代わりに魔力の消費を抑えられる。

【成獣】Lv.1

 成獣後は存在するだけで魔力を消費するが、代わりに各ステータスにブーストがかかる。

【魂魔庫】Lv.85

 魔力無限になり、防御力がかなり低下する。

 他者に魔力を与えられる。

 成獣ブースト:消費魔力代用

【幻術】Lv.21

 相手に幻を体感させる。

 成獣ブースト:擬視化

【変幻】Lv.20

 自身の体を違う物に見せかける。

 成獣ブースト:擬体化


 ユニークスキル:無し


 魔法

【火魔法】Lv.5

 灼熱の炎を操作する。

 成獣ブースト:冷気

【水魔法】Lv.2

 水質浄化。

 水源を作る。

 成獣ブースト:治癒

【風魔法】Lv.2

 気温感知。

 風を起こす。

 成獣ブースト:真空

【土魔法】Lv.1

 穴掘り(ディグ)

 成獣ブースト:奈落


 ▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


 キュウが成獣化したとか、ブーストってなんぞや、みたいな事は後で調べるとして。

 不法侵入者かと思ったそいつは、初めから部屋の中にいました。という、ありきたりなオチも置いておいて。

 ドッペルゲンガーかと思ったそいつは、化けたキュウでした。


「なんで俺がキュウの主人なんだよ」

「俺の主人はヴェルだけだが、ややこしくもヴェルの主人はスグルだろ?だから大主人」

「なるほど……で?何故にキュウが俺の顔をしてんだよ」

「変態の顔にしろ親友の顔にしろ、しなかった理由は一つだが……聞きたいか?」

「…言ってみろ」

「大主人を化かしてみたかった」

「そろそろ本気で殴っていいよな?」


 左手で拳を作り、右手は優しく少女の頭を撫でる。


「まぁ、冗談はさて置き」

「……冗談って言うなら、俺の格好して俺の声で喋るの、やめてくれないか?」

「…じゃあ、こうするか」


 音も無く、キュウがその場でバク宙をすると。


「…あら可愛い。どこの美少女?」

「女体化した大主人や」

「一気に吐き気がしたよ!」


 とても可愛らしい、ケモミミの生えた俺がいた。


「注文多いわね。兎でも頭に乗せよか?」

「そんな難民ホイホイしなくて良いから……もう良いから、話を続けてくれ」

「なんの話やったっけ」

「大罪魔法シリーズとその効果」

「せやせや、せやったね。アタイも詳しくは知らへんのやけど……ちと虚無魔法と違うんや」

「…って言うと?」

「ホンマは魔法名と効果は何年たっても同じなんやけど、大罪シリーズはちぃと特殊なんや。使う魔法使いがそれぞれ違う魔法名を紡ぐんや…でも、効果は変わらへんのや」

「……んん?意味がわからん」


 ため息を吐き、再び音も無くバク宙すると。

 ケモミミ女体化スグルがスーツ姿の美人教師風に。どこからかホワイトボードまで出して来て。


「第一回!チキチキ!キュウ先生の魔法講座ぁ!はくしゅー!」

「…うぇーい……?」

「えーっと今回、主人が『選ばれた』のは理由不明として、体現した効果は【強欲】や。アタイは、過去に三回大罪シリーズを見た事があんのや」


 ホワイトボードには、重要だと思われる単語がわかりやすく表示されていく。

 自動で。


「大罪シリーズは全部で七つ。それぞれ【強欲】【暴食】【色欲】【憤怒】【嫉妬】【怠惰】【傲慢】や。せやけど…」


 キュウの発言と共に表示されていった七つの魔法名。


「アタイがこの目で見たんは【暴食】と【怠惰】だけや。せやから、他の魔法に関しては情報としてしか知らんのや」


 ホワイトボードから、五つの魔法名が消される。


「まぁそれでも?大主人の知りたい事は語り尽くせるやろけどな」


 キュウは一つため息を吐く。


「アタイが大罪魔法を見たんは、過去に起きた魔導大戦中やった」


 ここでも出るか魔導大戦。どこに行っても技術を進歩させたり見せたりするは戦争なんだな。


「そん時に見たのは【怠惰】の魔法やった。叫んどった魔法名は…【ロングスリーパー】やったかな。効果は相手の魔力を吸い取って己の糧にするんや」

「そりゃすげぇ。必勝じゃねぇか」

「授業中のお喋りは、手を上げてからや」

「なりきってやがるチクショウ」


 二度目の私語にも注意し、スグルは黙りこくる。


「そん次が【暴食】や。見たんは大戦中と、こないだの塔ん時やな」

「はい先生、確認です」

「スグル君、どうぞ」

「はい、その塔の時のやつは人形使いで間違い無いですか?」

「せや、あっとる」


 もういない、胸糞悪い人形使いを思い出す。

 確か野郎は自分を〈絶対規制(バインドルールブック)〉とか名乗ってたような。統括管理書とも言ってたな。


「あん時の野郎はちと特殊やけど…効果は変わらへんかった。右手で魔力、左手で肉体を食ろうて、吐き出す魔法や。先代の魔法名は……確か【ショウタイム】やったで。塔のあいつは、魔法を魔導書(グリモア)に封じ込めて使っとったけど……効果に関しては、変わっとらんかった」

「はい先生、そのグリモアは、全部で七冊あるのでしょうか?」

「それは、わからへん。せやけど、少なくとも【暴食】と【強欲】は解放済やろな」


 魔法の、大罪シリーズにそれなりの納得を得たスグルは、一番知りたい質問をぶつけた。


「はい先生。ズバリ、【強欲】の効果はなんですか?」

「……かなり難しい質問やな…言葉で説明するんは、難題やで…」


 キュウは言葉を切り、適切な文を構築する。


「…【強欲】は強い欲。アレが欲しい、コレが欲しい、底無しの物欲とも言えるんや……せやから、その効果は」

「………」

「…『己の欲しがる全てを手に入れる』……や。これ以外に上手い言い方が思い浮かばんわ」

「……いいえ、十分ですよ。先生」


 己の欲しがる全て。

 ーーヴェルの欲しい『家族』

 ーーヴェルの欲しい『力』

 ーーヴェルの欲しい『知識』

 ーーヴェルの欲しい『守るべきもの』

 ーーヴェルの欲しい『失いたく無いもの』

 その全てを、自分の前に。

 手の届く範囲に納める。

 見放してしまわないように。

 手放してしまわないように。

 手から零れ落ちないように。

 ……それはきっと時を、空間を、他のありとあらゆる(しがらみ)を超えて、ヴェルの下に届く。


「……だけどもそれは、俺から見れば『欲張り』なんだぜ」

「だからこその【強欲】なんだよ」


 これにて、キュウの魔法講座は終了した。


 ▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


 さて、少し余談だが後日談。


「……わぁすごぉい」


 翌日、少し遅めのログインをしたスグルの目には、繁盛するカフェの姿が映っていた。


「お待たせいたしました。ご注文の『冷製トマトパスタ』です」

「「「キャァァァァァァ!!!」」」


 …ケモミミの生えた、スグルをそえて。


「あ、おはようスグル」

「…あぁ、おはよう…ヴェル」

『すげぇ人気だよ、スグルは』

「正しくは化けたキュウだけどな」


 執事服を着たケモミミスグルは、爽やかな笑みを浮かべながら接客する。

 飛び交う黄色い声には、耳が痛くなりそうだ。

 …すると、キュウはスグルが来たことに気が付いたようで。


「おはようございます、大主人」

「…えぇ…おま、えぇ……関西弁はどうした」

「接客中ですので」

「お、おぅ……」

「今日はいかがされますか?何時ものように、私が厨房に立ってもよろしいのですが」

「いや、キュウはそのままウエイターやってくれ」

「かしこまりました」


 背筋を伸ばし、キュウは再び接客へ。


「ね、すごいでしょ?朝起きたらスグルがいて、ウチびっくりしちゃった」

「俺も、キュウがここまで化けるとは思って無かった。そういやヴェル、昨日の夜の事は……」

「…ん、大丈夫」

「そか……んでノヴァ、キュウの働きっぷりはどうよ?」

『そりゃあもう有能だぜ?キュウは。新しいメニューを考えたり、呼び込みをしたり。今はキョウカが外に出てるが、キュウが出た時だけ一気に客足が伸びるんだよ』

「そいつはすげぇや」


 そうして黄色い声を受けながら、爽やかに接客をこなすキュウを見つつ。

 今日という日は、何事もなく過ぎていったのだった。

需要と供給ですね。ケモナー歓喜。

ご愛読ありがとうございます。

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