#41 旅立ちの日
「……どーすっかなぁ…」
2mの巨大魚との駆け引きに勝利した野郎を、尊敬の眼差しで見つめる少年の影が、一つ。
ショウは、その影に気付きながらも、食材集めとポイント収集に励んでいた。
あ、また釣れた。
やっぱり、エサって大事なんやね。
釣り上げた瞬間に叩っ斬るので、食材は取れるわポイントは貯まるわで実に都合が良い。
「………おい、そこの」
「………」
「…バレてねぇとでも思ったか。気が散るから隠れるか出てくるかにしてくれね?」
しばしの間……そして、出てきた。
どうやら、初心者らしい。
初期装備に申し訳程度の剣を装備していた。
「おめぇさん、俺になんか用か?」
「……ぇ」
「えって事はないだろ。俺を観察してる奴等とは違う目つきだ」
「……ぁう…」
…ふぅ、とため息。
こういう子どもは苦手だ。
何がって、キョドって用件が伝えられないからだ。
「あのさ、俺今忙しいんだけど。早くしてくんね?」
「ぇと…あの……」
「…………」
「友達を助けて下さいっ‼︎」
「……あ?」
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助けて下さい、なんて…いつ以来だ?
いや、そもそも頼られた記憶が無い。
「こっちです、早く…」
「急かすな。んで?俺に何をしろと」
「ええと……解毒…を、お願いします。ポーションも治療薬も無くって…」
解毒って…放っておいても治るハズだが。
「クシナダちゃん!」
「……あ、スサノオくん…ごめんね、私が不甲斐なくて…あの、あなたが助けてくれるんですか?」
友達って、女の子かよ……
年齢は、そこでオロオロしてる少年と同い年か?
これが現実世界だったら、間違いなくポリの世話になってたな…
「まぁ、な。治した所で、俺にはなんのメリットも無いが……こいつが、ウロウロと鬱陶しかったからな」
アイテムBOXから解毒ポーションを取り出し、振りかける。
しかし、効かない。
どういうことだ。
「おめぇさん、何にやられた?これはなんの毒だ?」
「…多分、植物毒……空腹状態になってしまって……それで、お腹の膨れそうなものを」
「だとしたら、今の解毒ポーションで取れるハズだ。他に、何かやらなかったか?スキルとか」
スサノオ、って言ったっけ?こいつ、おそらくは俺と同じ【守護兵士】だろう。
そうで無ければ、魔法使いなどに助けを求める。
あいつらは、生産職もやってるからな。
そんでもって、このクシナダって子は多分【兵糧師】だ。
【兵糧師】は【魔法使い】と【守護兵士】の融合職で、生産職に長けている。
さらに魔法や、一部の職業スキルも使えるので回復役としては人気の職業だ。
すなわち、解毒などは朝飯前ということ。
通常は、毒物かどうかを判断してから食べるのだが…まぁ、掛け合わせで有毒化するパターンもあるし、そこについてはとやかく言うつもりはない。
今はそんな事、どうでも良いが。
おそらくこの毒はポーションでは取れなかったのだろう。
だからこそ同じ、もしくは同じだった【守護兵士】の俺に助けを求めた。
その判断は概ね正しい。
なぜなら。
「クシナダちゃん、確か【耐久保護】を使ったよね?」
「スサノオくんも、ね」
やはりか。
なぜなら、これはバグだから。
「やっぱそうか。だったら、お前はもうその毒に慣れるしかないな」
「え⁉︎」
「こいつは、バグを起こしたんだよ。次のアップデートまで、こいつはこのままだ」
通常、物体にはそれぞれの耐久値が存在する。
【耐久保護】は、その耐久値を一定時間、減らなくなるスキルと表記されている。
しかし実際は、耐久保護では無く現状維持の方が、効果としては伝わりやすい。
つまり【耐久保護】を使うと、耐久値はもちろん、付加効果も一定時間は減ったり増えたりしない。
ある意味チートスキルだ。
では、そろそろバグの起こし方を説明しよう。
【耐久保護】を同時に重ね掛けさせると、お互いがお互いを保護しあい…結果【耐久保護】は永遠に消えなくなる。
その際、一緒に付いた付加効果も永遠に消えなくなるため、使用には十分に気をつけなくてはならないのだ。
「……って事だ。お前の友達は、次のアップデートで修正されない限り、解毒は出来ない」
「…そんな」
「諦めろ。こいつは、ここで終了だ」
「……っ」
たかがゲームだ、次がある。
今回はダメでも、次回頑張ればいいんだ。
そう思いつつ、その場を去ろうとした時。
「…まだ、諦めない…っ‼︎」
「…は?」
「お兄さん、スキルが原因だって、教えてくれてありがとうございました。あとは……オレがやる」
「お前……」
………なるほど、そうかよ。
こいつァ、トンだマセガキだな。
「……クシナダちゃん、今治すから。絶対、二人でイベントクリアしよう」
「…どけ。お前の力じゃ無理だ」
「…お兄さん、帰ったんじゃ無かったんですか?」
「気が変わった。バグ修正は無理だが、手が無いわけじゃねーからな。ま、ちょっと実験台なってもらうのさ」
【守護兵士】の上位スキルの一つに【根性】と言うスキルがある。
使うと、それまで付加されていた状態異常が消えるスキルだ。
「この子に、スキルを付加させてみる。だが、多分それでも駄目だ。【耐久保護】に邪魔されて、一秒もしない内に打ち消されるだろう」
「それじゃ、意味無いじゃないか…」
「逆を言えば、コンマ何秒は毒が消えるんだよ。そこに、バグを折り込めば、どうなる?」
「…あ」
そう、つまりはこういう事だ。
【根性】を使い、毒効果を消す。
そして【根性】が消えない内に、【耐久保護】の重ね掛けでバグを起こせば、上手く行けば事実上は解毒出来る事になる。
毒を喰らい【根性】で解毒。
毒が消えれば【耐久保護】が毒効果を戻す。
そんなバッドエンドレスが高速で働けば、苦しみを感じる前に次のループへと向かい、あるいは…
「俺一人じゃ、無理だ。手伝ってくれるよな?」
「うん」
「…いい返事だ。ええと…クシナダちゃんは【耐久保護】を使ってくれ。俺は【根性】を使うから…あー、えと…スサノオ、お前は【耐久保護】を使え…そんじゃ、行くぞ?…せぇのっ‼︎」
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「ありがとうございました、お兄さん」
「ん?あぁ、別に良いよ。ただの気まぐれだから」
中学生にもならない少女にお礼を言われた。
スキル付加は何度目かで成功し、予想通りの結果となる。
…ま、解除不可と言われたバグに対処法が存在したことが確認された訳だし、妥協点と考えるか。
「あの、お兄さん…名前を教えてくれませんか?あと、出来れば何かお礼がしたいのですが…」
「お、オレも!クシナダちゃんを助けてくれたお礼がしたい!」
「名前?俺はショウって名前だ。いやしかし、お礼って…別に良いよ。何も困って無いし」
「ダメです!助けてもらったら、恩返ししないと!」
うわぁ……こいつ、超ガンコタイプだ…
ガンコな奴は、知り合いに二人いるが、そんなのは一人で十分だ。
だが、こういうガンコ者は一度決めると絶対意見を変えないのも事実だし…
そうなると、あっちが納得するまで付き合うしかないのか……
「…あー、それじゃあな……えと…そうだ!この辺に、ダンジョンとか特殊クエストみたいなの知らないか?」
「…うーん、知ってますけど…一緒に攻略させてもらえますか?」
「構わねぇぜ?俺的にも、回復役は欲しかったんだ。願ったり叶ったりだ」
「本当ですか!あああ、えと、えと、ふつつか者ですがよろしくお願いします!」
それは、トツギーノする時に言うセリフだよって事は黙っておく。
だって、スサノオがプルプルしながら何かを訴えてるんだもの。
こんな楽しい事、やめられるかよ。
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「ショウさん、こっちです。もう少しですよ」
海岸から離れ、クシナダちゃんに手を引かれるままに林の中。
ここ、海岸エリアは一つの孤島となっている。
海岸沿いに歩けば、五時間程度で一周出来てしまう小さな島だ。
しかし、それはあくまでも孤島の大きさの話であって、肝心の海エリアと合わせると、海空・海面・海中を含めて探索可能なので……まぁ、とてつもなく広い。
そして、島自体は涼しそうな緑でいっぱいの山が存在し、掲示板によると小さな集落や簡単な廃坑も存在しているらしい。
「そんなに引っ張るなよ。ほら、スサノオが妬いてるぜ?」
「スサノオくんが?私に?一体何を焼くんです?」
「第三次t(ry…なんでもない」
「ふふふ、変なショウさんですね」
人の色恋沙汰に、口出しはしないが……
クシナダちゃん、めっちゃええ子やん?
これで、十八歳以上だったら、間違いなく手を出してたね。
「着きましたよ。ここが、私とスサノオくんしか知らない…掲示板にも載っていない集落です!」
「フーン…ここ、掲示板にも載ってないのか……ぁ⁉︎」
連れて来られた集落は、なんだか日本神話に出てきそうな街並み (?) だったのだが。
そんな事より、目を引く物が存在した。
CDOでは、パスタやケーキなどを作るにあたって使用する小麦がある。
それらは全て同じ種類の小麦から作る事が出来るのだが……
今だに、稲と呼ばれる植物が見つかっていない。
だがしかし、今目の前で栽培されている植物は。
「うおぉぉ!米だぁああ‼︎」
「えっ?えっ?えっ⁉︎」
「クシナダちゃん、マジ感謝!マジ天使ィ‼︎」
思わず、万歳三唱してしまった。
クシナダちゃんやスサノオは、ナンダナンダと、状況を把握出来ずにいる。
そうこうしてるうちに、大騒ぎしている俺たちを、集落の人達が気付き始めた。
なんだか、暗い空気が漂っていて、ちょっと居心地悪いな…
とにかくここは、速やかに平静さを取り戻して、好感度を上げ、栽培されている米を分けてもらうのが、最善策だな。
「お騒がせして申し訳ありません。俺たちは怪しい者ではありません。何か、お手伝い出来ることはありませんか?」
そう伝えると、この集落の長と見られる初老の男が出て来て。
「…お手伝い、とな?」
「ハイ。例えば、新しい井戸を掘るとか、邪魔な大岩を退けて欲しいとか」
「……なら、凶悪な魔神を倒して欲しい、と言ったら?」
凶悪な魔神…?
モンスターの事か?
もしそうなら、討伐クエストだな……ま、いいだろ。
「えぇ、喜んで。もとい、それは俺たちの本業なので」
「おお!左様か‼︎さすれば、今宵はここに泊まって行きなされ。馳走いたそう。ささ、こちらへ……」
お、おお?
空気が明るくなったぞ?
しかもなんか、歓迎されてるっぽい?
ま、白いご飯が食べられるなら、なんでもいいけど。
あわよくば、稲の苗を貰うなり買うなりしてなんとか入手出来れば……桃源郷のグレードアップ間違いなしだな!
「皆の者!今宵の奉納祭りは盛大に行うぞよ‼︎かの邪神〈ヤマタオロチ〉の最期と見た!」
「「「「おおおおお‼︎」」」」
……。
………。
…………。
………………………。
…………ん?
今、なんて言った?
ヤマタオロチ、って言ったか?
ヤマタオロチってまさか、日本神話に出てくる最恐最悪の邪神じゃないよな?
〈ヤマタノオロチ〉じゃ、ないよな?
とか考えていると、クシナダちゃんが首を傾げて初老の男に尋ねた。
「あの、お爺さん?ヤマタオロチって何ですか?」
「おお、すまんかったな。主等は千年ぶりに現れた神徒じゃからの……それも含めて、ちとジジイの昔話に付き合ってくれ。そうじゃの、あれは遠い遠い昔の事じゃった……」
俺はこの時ほど、年寄りの話は長いと感じた事は無い。
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ずっと昔の事。
まだ神が存在していた頃の話…
この島には何百人もの人々が住んでおりました。
ある時、島に厄災の邪神が堕ちました。
邪神は、八つの頭を持った異形の体をしておりました。
邪神は島に厄災を振りまき続け、これ以上災いを望まないのなら、若い娘の生贄を寄越せと言いました。
島の人々には戦う力を持っていなかったので、邪神の言うことを素直に聞くしかありませんでした。
島の人々は見る見るその数を減らして行きました。
そんな時、村近くの川下から三人の神徒がやって来て、邪神を月夜見之剣に封印してしまいましたとさ。
めでたしめでたし。
しかし、このお話には続きがございました。
今からおよそ百年前、忽然と月夜見之剣が消え去ったのです。
解き放たれた邪神はかつての力を大きく上回り、若い娘の肉を欲しました。
でめたしでめたし。
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「…と言う訳で、主等には再封印をお願いしたかったのじゃが……よもや、邪神を打ち倒してくれようとは、なんと有難い事かの」
……。
すでにご馳走になり、昔話を一通り聞いていたのだが。
もしかして、余計な事を引き受けちまった感じ?
いや、そもそも生贄って…
「えと、爺さん?その厄災って…なんなんだ?」
「さぁ…詳しくはわかり兼ねますが、水害だと言われております」
水害か…まぁ、洪水かな?
上手く封印すれば、いろいろと使えるんじゃねーの?
枯れない井戸とか。
いや、もしかすると…
「…あの、ショウさん?やっぱり断っても良いんですよ?」
「いや、受けるよ。ご馳走してもらったし、何より稲の苗はどうしても欲しいからな…あっ、爺さん。俺たちが邪神を打ち倒したら、田圃に植えてある植物をちょっとばかり譲ってくれねーか?」
「構いませぬよ。これから、村の人たちを奉納しなくなるのであれば、安いものです」
交渉成立だな。
こりゃあ、もう引けねぇよ。
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その日の夜、俺たちはヤマタオロチの巣食う場所へと向かう。
「うぅ…ショウさぁん…置いていかないでくださいよぉ…」
「あああ安心しろクシナダっ…おおおオレがとぅい、付いてる」
「随分とまぁ弱そうなガーディアンだな」
チワワみたく震える少年少女はさておき、邪神が住み着くと言われる洞窟へとやって来た。
滴り落ちる水滴、光るコウモリの目、吹き抜ける生暖かい風……
まるで肝試しだな。
夏だから仕方ないけど。
「あのぉ…今から戻っちゃダメですか?」
「それはダメじゃ無いかな?」
「ですよねぇ…」
そうこうしてるうちに、ヤマタオロチの潜むフロアへとやって来た。
「なぁ、ショウ兄。戻らないのは良いけど、どうやって倒すか分かってるのか?」
「最近の子どもは本とか読まないのか?ヤマタノオロチを倒す方法なら、幼稚園児でもわかるぞ?」
「バカにすんな!酒を飲ませて首切りだろ?でもさ、ヤマタオロチは千年前にそれで負けたんだぜ?そう何度も同じ手に掛かるかよ」
「ハッハッハ、そこが頭の使い方よ。まぁ、見てなって」
そう言って、俺は意気揚々とボスフロアの扉を開けた。
………
……
…
…
……
………
『「供物は」「持って」「来たのか?」「早く」「食いてぇよぉ!」「三人いるぜ?」「二人は不味そうだ」「俺の分も残しとけェ」』
これはまた、圧巻ですなぁ…
八首が揃って別の感覚を持っているとなると、話を聞くのも一苦労だな。
「まぁ、そう焦るなよ。酒でも飲んで、さ」
『「その手には」「引っ掛かんねーよ」「懐かしい手だぜ」「その時の我らは」「バカだったな」「痛かったぞ!」「やめてくり」「思い出したくない」』
「あの時は酒樽八つだったろ?今日は一つだ。よぉく見てみろ」
そう言って、アイテムBOXから酒樽を出す。
え、いつ入手したかって?
歓迎された時にちょっとな……飲むフリしながらアイテムBOXに入れた話は、内緒だぜ?
『「それでも」「飲みたく」「無いね」「二の舞いは」「御免だぜ」「美味そう」「おいバカ」「ヤメロ」』
「なんだ、いらないのか…じゃあ、勿体無いから俺が全て頂こう」
「え、ショウさん?未成年者は飲めない仕様なんじゃ…」
「クシナダ、ちょっと黙って見てようぜ?」
ナイスフォローだ、スサノオ。
今は俺に任せとけ。
おもむろに酒樽へと顔を突っ込み、口に含む。
すると、喉を潤す前にシステムへと溶けていった。
「ぷはぁ…ひやぁ美味い…」
『「「「「ゴクリ」」」」』
「さて、もう一口もう一口っと…」
再度、酒樽に顔を近づける。
『「待て」「人間」「俺にも」「寄越せ」「樽は一つ」「首は八つ」「人間三人など」「首七つで十分だぜ」』
「あ、そぉ?なら、どうぞ」
『「では」「頂こう」「俺が」「全部」「飲む」「ふざけるな」「飲むのは」「俺なんだぜ!」』
突如として、一首が隣にいた一首の喉元に噛み付く。
『「痛ぇ!」「何をしやがる!」「誰が」「飲めるか」「決めようか?」「喧嘩は」「歓迎だぜ!」「やめろ!」』
「まぁ、時間はたっぷりあるからな。気が済むまで俺たちは食われるのを待つぞ」
…計画通り。
ぎゃあぎゃあと自分と喧嘩を始めた八首の怪物馬鹿を尻目に、悪魔の笑みを浮かべて見せる。
「外道」
「非道い」
「なんとでも言え、勝てば良いんだよ勝てば」
その、数時間後…
ボロボロになり、残り一首となったヤマタオロチ (もはやタダノオロチ)はアッサリとその首を狩られ、クエストはクリアとなった。
クシナダとスサノオは、手抜き感が半端ない表情でその行く末を見ていた。
「お、ドロップ品はかなり良いぞ!」
「ソーデスカー」
「おいおい、月夜見之剣だぞ?威力八百だぞ?もっと喜べよ!」
「…って言っても、一本だけじゃあねぇ…」
「二本泥ったから、一本やるよ」
「あざーす!ショウ兄、一生着いて行きます!」
「男って単純なんですね」
元気を取り戻した少年少女。
他にもいろいろドロップはしたのだが…
「これは、ここに納めた方が良いな」
「ショウさん、なんですか?それ」
「八又之宝玉だってさ。まぁ、消費アイテムじゃないし…ここに収めようかと思って」
そこには、かつて封印の月夜見之剣が刺さっていたのだろう。
おあつらえ向きの祠が建てられていた。
そこへ宝玉を奉納し、形だけでも合掌する…浄土繁栄を願って。
「ショウさん、何をお願いしてるんですか?」
「ん?んー…まぁ、家内安全とか浄土繁栄とか、かな」
「ショウ兄、俺もなんかお願いしても良いですかね?」
「あ、じゃあ私も」
クシナダちゃんは上品に、スサノオは手を擦り付けて願い事。
スサノオはどうせ、お小遣いアップとか色恋沙汰とか欲張りに願ってるんだろ。
二人の願い事も済んだので、踵を返し、祠を後にした。
集落に戻り、報告を済ませると、約束通り稲の苗を九十九個貰った。
個数指定はしていないから、これは完全に集落の皆さんのご厚意だと付け加えさせてもらう。
そして一晩は集落で過ごし、翌朝。
「本当にもう行くのかえ?もっとゆっくりして行きんしゃい」
「いいえ、俺たちは放浪者です。いつまでも留まる事は出来ません」
沢山の見送りを受けて、俺たちは集落を旅立つのだった。
▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎
その後、集落は永遠に水の枯れない村になった事は、誰も知ることは無い。
俺たちの旅はこれからだ!
次回までゆっくりしていっt(ry
…これ、前にもやった。
▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎
ご愛読ありがとうございます。
職業【薬剤師】がユニークスキルとして存在するのを忘れていたので【兵糧師】に変更です…




