#37 情報収集
イベントが開催されて、各プレイヤーがイベントに慣れ始めた頃。
彼、宮藤陸は観戦に浸っていた。
彼は、プレイヤーにイベントを詳しく伝えていない。
ただ、サバイバル生活をしてポイントを貯めろとのみを伝えた。
ほら、既に優秀なプレイヤーはこのイベントの本質に気づき、手際よくポイントを貯めている。
だが、それでも。
「…面白いなぁ」
彼が興味を示すプレイヤーは、ほんの一部でしかない。
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よし、皆の安否は確認出来た。
ショウやマミナは、俺よりも遥かに強いから、心配無用だろう。
ヴェルは、まぁ、ブラウンさんがいるから大丈夫と信じる。
身内の安否が取れたところで、最近覚えた掲示板を覗く。
何においても、情報は命を守るモノだ。
知っている者と、知らない者では、それこそ天と地ほどの差が出る。
閑話休題、掲示板を開く。
ふむ、どうやら、現在確認されている世界は全部で四つらしい。
俺のいる森林、ヴェルのいる火山、マミナのいる砂漠荒野、ショウのいる海。
皆、見事にばらけたようだ。
次に、イベントの本質を見抜く。
宮藤さんは、ポイントを貯めろとしか言わなかった。
そう、何をすればポイントが貯まるのかは知らない。
答えはすぐに出た。
想像していた通り、イベント会場内のMOB討伐で貯まるシステムらしい。
「……掲示板には、これ以上の情報は無い、か…」
ならば、後は自分で気づくしかない。
まず手始めに、俺は安全地帯の中に生えている木で、なるべく高い位置に行く。
ノヴァに運んで貰ったのは、言うまでもない。
こうして見ると、なかなか広いエリアだと理解する。
ユニークスキル【鷹の目】を使い、エリアの地図を脳内に作成していく。
ーー出来た。
こう見えても、記憶力は良い方だと自覚している。
一度見たものは忘れない、とは言わないまでも、それなりに記憶が出来る。
その時、背後で爆発音が聞こえた。
誰かが戦闘を開始したのだろう。
その爆発音を引き金に、森林エリア各地で、金属音や爆発音が聞こえてくる。
『スグル、行かないのか?他の奴等は、もう始めてるぞ?』
「そうだな、行くか。じゃ、先ずは……あそこの、熱帯森林に行こうか。ノヴァ、任せたぞ?」
『おう!』
ノヴァの重力魔法に連れられて、俺達は熱帯森林へと向かった。
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流石に、火山帯なだけあって、周りは赤々とした溶岩で広がっている。
だけど、不思議と暑く無いのは、お祭りの効果なのだろうか?
「ゔぇるたん、何をそんなに考え込んでいるんでちゅか〜?」
「うっさい黙れキエロ、この変態」
「ふひひ、幼女に罵倒されるなぞ、この上無きレア体験ッ‼︎もっと罵倒してもええんよ?」
はぁ…慣れとは恐ろしいものである。
徐々に、変態の扱いが分かって来た。
「ブラウンさん、あそこの植物、採ってくれますか?」
ヴェルは、目の前の絶壁を指差し、採ってもらう。
もう何度も繰り返してお願いしている為、ブラウンさんはその生えている土ごと採取してくれる。
採って貰った植物のようなものは、思った通り食べられる果物の一つだった。
「ヴェルちゃん、これ食べられるの?」
「…うん、多分。根拠は無いけど、ね」
ヴェルは知らない。
スキルの効果によって、毒物か否かの判断がつくことに。
「美味しいの?」
「どうなんだろう…?ゲシュタルトさん」
「ん?ゔぇるたんが俺に何か用かな?」
「はい、アーンして下さい。採れたての果物を食べさせてあげます」
「もう俺、死んでもいいや。あーん」
心にも無い言の葉を並べたて、ゲシュタルトに毒味をさせる。
「美味しい、ですか?」
「うん、ゔぇるたんが食べさせてくれたものがどうしてッガフォア⁉︎げほがはごほ、かっカライッからすぎげほげほッ…み、水…」
実験台には、まだ死なれては困るので (死なないけど)水を与える。
感想は新鮮なほど価値があるので、今のうちに証言してもらう。
「美味しい?」
「げほ…はぁ…はぁ…わ、我々の業界ではご褒美、デスッ…‼︎」
「本当⁉︎じゃあ、これとこれと…あとこれもお願いしますね。あーん」
屈託の無い満面の笑顔で、ゲシュタルトさんに毒味をさせていく。
最終的に、所持していた全種類の植物を平らげた所を見ると、本当に頑張ったと思う。
ゲシュタルトさんの最後の言葉は、
「あいる、びー…ばっ……く……(ガクッ)」
そう言い残して、旅立ってしまいました。
死んで無いけど、ね。
「お疲れ様でした、ゲシュタルトさん」
気絶し、意識の無いゲシュタルトさんのほほに、軽く口付けをして、寝かせてあげた。
起きてたら絶対、ウチが無事では済まない。
あなたの努力、無駄にはしません。
どうか、安らかに…
「あー、ヴェルちゃん?別に毒味しなくても、私のユニークスキル【薬剤師】で毒かとか、味とか分かったのよ?ゲシュタルトの反応が面白くて言い出せなかったけど」
Oh……見事なまでの無駄努力と時間が生まれてしまった…
そうして、屍の無駄努力とブラウンさんの超優秀なユニークスキルより、採取した大体の植物の鑑定、及び味のデータ化が完了した。
さて、次はブラウンさんと一緒にモンスター討伐をしなくてはいけない。
もとより、そういう約束で植物採取を手伝って貰っていたのだから…
ゲシュタルト、南無〜
愛読いただき、ありがとうございます。




