#36 イベント始動
ーーーイベント開始定刻
普段は、スポンサーのCMや広告が流れているのだが。
イベント開始と同時に、大型ディスプレイにノイズが走った。
そのノイズと共に、宮藤さんの姿が現れた。
…筋肉ムキムキマッチョマンの姿で。
『プレイヤー諸君、貴様ら、見ているかっ⁉︎』
…なんか、もう…ツッコミ役が欲しいな…
…あ、俺がソレか…
『さて、余興も済んだ所で、初イベントの内容を説明しよう。内容はズバリ、サバイバル!イベント期間中、特設 会場の中でフィールド内時間1週間カンヅメという特殊環境の下、生き延びてもらう!臨時報酬や、ポイント順位等で、イベント限定アイテムやスキルを手に入れろ!!』
周囲からは、歓喜を主とした悲鳴のようなものが聞こえてきた。
いや、だがしかしである。聞き流してはいけない事が、あったろ?
「1週間…だと…⁉︎」「待て待て、俺明日バイトなんだけど?」「俺は彼女とデートが…」「リア充爆散しろ」
そう、一週間。
CDOの1日は約20時間だから、一週間は約8日。
一週間カンヅメはキツイ。
それぞれ現実に事情があるだろう、高得点を目指すなら、24時間体制でログインを続けなくてはならない。
あらかじめ、それを見越して公平なルールにしたつもりだろうが…
これでは、不満が出るのも当たり前と言える。
『プレイヤー諸君の中には、今回のイベント内容に不服があると思う。何しろ、ゲーム内時間とは言え、一週間カンヅメなのだから。だが安心したまえ!"特設 会場内時間で一週間"と言った筈だ。イベント内での一週間は現実での約2時間に相当する。それでは、イベントを始めるとしよう。安心してイベントに励みたまえ!』
そう言い残して、宮藤さんは大型ディスプレイの中から姿を消した。
それと同時に、俺の目の前にイベントへ参加するかどうかの、Yes or NOと言った選択画面が表示される。
おそらく、ここにいる他のプレイヤーにも同じ内容の選択画面が表示されている事だろう。
迷うことなく、俺はYesを選択した。
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「…ここはどこだ」
『知らんがな』
Yesを選択したあと、俺は見知らぬ土地へと飛ばされていた。
ノヴァも、この状況を上手く把握出来ていないらしい。
…まぁ、大体の見当は着くが。
「…っと、ヴェルは?」
『近くにはいないぞ。魔力そのものが感知出来ないからな』
「…おい、それはどういう…まぁいい。とにかく、ヴェルに〈念話モドキ〉で連絡してみる。どういうワケだか、ショウもマミナも、近くにはいないみたいだしな」
頭のなかで、ヴェルを呼び出してみる。
今度は、コールのイメージを付け加えて。
『あ、スグル⁉︎お願い、助けてっ!』
「おい、何があったってんだよ!開始早々厄介事か⁉︎そもそもヴェル、今どこにいる?」
『どこって…暑くない火山?』
「なんだそれ…」
『と、とにかく!早く来て!このままじゃウチ…』
『うへ、うへへへへ、でゅふ、ゔぇるたんはどこじゃあ^〜』
その瞬間、全てを察した。
ヴェルの置かれている状況が、いつになく危険だと。
ゲシュタルトの野郎、ヴェルにゲスなマネしたらタダじゃおかねぇ…
「落ち着け、ヴェル。今ヴェルが置かれている状況はすごく分かった。近くに知ってる、信頼出来る人はいるか?」
『変態の後ろに、ブラウンさんがいる』
「よし、ならブラウンに事情を説明して、守ってもらえ。そうだな、代償を聞かれたら、スグルがなんでもするって言えば大丈夫だろう」
『ん、分かった。ウチ、頑張る』
「よし、それから、そっちで何か食べられそうな食材があれば、土と一緒に採取してくれ。大丈夫、きっとヴェルなら、出来るから」
『ん、分かった。じゃ、ね』
今回はあっちから切ってきた。
なかなかの、飲み込みの速さである。
…さて、ヴェルが無事なのは確認出来た。ブラウンもいるし、大丈夫だろう。
次はショウとマミナだが…
どうやって連絡を取るか…
『チャット、とか良いんじゃないか?』
「え?チャット?…あぁ、なるほど、頭いいなノヴァ」
『んなこたねーよ』
早速、マミナにチャットを入れてみる。
以外と早く連絡が来た。どうやら、チャットや念話機能は使えるようだ。
「マミナ、今どんなところにいる?」
「どこにいる、って聞かないって事は、このイベントの内容が見えてきたようね」
「そうでも無いぞ?まだまだわからない事だらけだし、8割型は想像だしな」
「そうなの?まぁ、そのうちわかるでしょう。あたしはね、干からびた土地、荒野って言うのかな?そこに飛ばされたよ。そっちは?」
「こっちは、森みたいな所。周りが木ばっかりで、今いる所は平原みたいだ」
「なるほど、スグルも安全地帯みたいな所に飛ばされたのね」
安全地帯、か。
あながち間違いってわけでも無いのかな?
平原の中には、敵対MOBはいないみたいだしな。
「スグル、イベントの内容って、サバイバルだったわよね?」
「おう」
「なるほど、つまりは、生き残るために何が必要かを見極めることが重要って事ね」
「だろうな。おそらくは、衣食住を確立させない事には何も出来ないだろうな」
「そうね。ま、あたしはあたしでがんばってみるわ。じゃ、お互い頑張りましょ」
…次はショウか。
この調子だと、全員無事だろうが、一応連絡は入れておくか。
マミナと同じようにして、と……
「ショウ、死んだか?」
「死んでる前提で話すのやめようぜ?な?」
「今どんなとこにいる?」
「どこ、って聞かない辺り、お前もこのイベントの内容が…」
「その下りやった。マミナでやった。どんなとこにいる?……次にショウが放つ言葉に合わせて送ってやった。ドヤァ」
「………俺は今、海岸にいる。美味そうな魚がウヨウヨいるぜ?何匹か生け捕りにするか?」
「頼む。種類の多さと味によっては、マミナのあられも無い姿の生写真をくれてやろう」
「オールorナッシングの精神でやらせてもらいまウイッヒィィィィィ!!」
全てを得るか、全てを失うかの精神…ね。
…チョローン
マミナのあられも無い生写真
ただの寝顔です




