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VRMMO始めました。  作者: 星野すばる(旧:★すばる★)
第二章 俺と魔族とドラゴンと
30/64

#29 魔王の子

主従契約の事もあって、ヴェルのステータスを覗けるようになったので。


「フーン…何がなんだかわからんが、魔法は習得済み…か」

「ドヤァ」

「それは言葉で言うものではありません」


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


【ヴェル:Lv5】


スキル:無し


ユニークスキル:無し


【水魔法:レベル2】

水源を作り出せる


【風魔法:レベル2】

風を吹かせる


【土魔法:レベル1】

地面を柔らかくする


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


これはひどい。

言葉に出来ない…

土魔法なんて、完全に農業専門じゃねーか。

…いや、〈カフェ・スグル〉には欲しい魔法だけど。


「どう?褒めても、良いのよ?特別に頭なでなでしても、いいのよ?」


なでて欲しいのか?

素直に言えよ…


「じゃ、スグル。あたしとショウは、またクエスト回ってくるから。戻ってきたら、ゲーム内夕食と現実(リアル)夕食お願いね」

「え、俺も行くの…?」

「おう、行ってこい」


足取りの重そうなショウは無視して、俺はヴェル、ノヴァと共に見送り、キッチンへと戻った。


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


「着いたぞ。ここが(やつ)()の隠れ家だ」


目の前の、真新しい建築物を見上げる。


「本当に、こんな所に魔王がいるんですかねぇ…」

「あぁ、〈軍知神・アモン〉が、最後に使った魔力が、微量ながらここから出ている」

「そんなの、どうして分かるんです?先輩」

「俺のユニークスキル【魔眼】を使ったのサ。お前も取ってみろ?面白いくらいに使えるぞ?」


俺のこの眼にかかれば、どんな小さな魔力でさえ見ることが出来る。

…さて、最後の決戦と行こうじゃないか。

俺は、その扉に手をかけた。


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


2階の一角。


「…んっ…」


俺とヴェルは、身体を密着させていた。


「…あぁっ!」

「大丈夫。もう一度最初から…そう。誰だって初めては難しいんだ」

「そっ…そんなこと言ったって…っ…」


ガチガチに硬くなったソレを、穴の中に入れる。

そういう事を、俺はヴェルと一緒にやっている。


いや、決して何かやましい事をしているわけでは無い。

魔法の練習をしているだけだ。

とりあえず、カチコチに凍った氷を、コップの中に入れる練習をしている。

これが結構難しいもので、俺が震える手を抑えてやらないと氷の成形すらままならない状態だ。


『スグル、お客が来てるぞ』

「お、マジで?またマミナじゃないのか?」

『いや、今度は違う。初めて感じる魔力の質だ』

「そうか、ありがと。悪いがヴェル、また手伝ってくれ」

「仕方ないわね、後で何か作ってよ?」

「へいへい、分かりましたよ」


ヴェルを連れて、俺は1階に降りて行く。

なにしろ、初めてのお客だ。

失礼の無いようにしなくては、いけないな。


「いらっしゃいませ、2名様でしょうか?」

「白々しいぞ、貴様」


…おぉっとお?何かミスったか?


「申し訳ありません、何かご不満でしたか?」


こういう時は、とにかく早く誠実に謝罪した方が解決する。


「白を切る…か。良いだろう…貴様のその化けの皮、剥ぎ取ってやる‼︎」


言い終わるや否や、腰に装備してあったライフルをぶっ放した………ってうわぁぁぁぁ⁉︎⁉︎

思わず、俺はカウンターの裏に飛び込んで隠れだが、不思議なことにいつまで経っても弾丸が飛んで来ない。

恐る恐る、カウンターから顔を出して見てみれば、ノヴァが弾丸を止めていた。


『スグル、大丈夫か?』

「…あ、あぁ。大丈夫だ」


さしずめ、重力操作でも使って弾丸を止めているんだろうが。

無茶しやがる…


「チッ〈(ドラゴ)(ニクス)い〉、か…めんどくせェ…ブラウン、ギルマスに連絡しろ。あの魔王、竜族の血を引いてるってなァ」

「え、あの、先輩…その事ですけど、さっきギルマスから連絡が「ごちゃごちゃうるせェ。さっさと連絡しろ」…はい…」


あいつら、何の話をしている?

ドラゴニクスって何の事だ?

ダメだ、情報が少なすぎる…


「ノヴァ、今ヴェルはどこだ」

『ヴェル?キッチンにいるぜ?』

「よし、ヴェルにこっちに来ないよう、伝えてくれ。ノヴァのテレパシーなら、いけるだろ?」

『それなら、大丈夫だ。こっちの会話は常にあっちに伝えている』


つくづく、優秀だよ、お前は。

それなら、安心して出来る。

交渉開始と行こうか。


「お前ら、まさか攻略組か?」

「さァな。知ってどうする?仲間でも呼ぶなら諦めな」


教える気無し、か。


「悪いが、俺は往生際が悪いんでね」


外していた装備を付け直す。

二丁(ツイン)拳銃(ハンドガン)を手に取り、こちらに抵抗の意思があることを示そうとする。

が、やめた。

あくまで、平和的解決をすることにしたからだ。


「お前ら、まさかとは思うが。魔王討伐クエストでも受けたのか?あれは難しいぞ?」

「いえ、そうでも無いですよ?はじめこそ、難易度が高かってですが。先程より難易度が極端に低下…もが⁉︎」

「バッ‼︎おま、敵に情報与えてんじゃねェよ‼︎魔王のガキって言っても、俺らにはギリギリなんだぞ⁉︎」


俺の問いに答えたのは、どうやらブラウンと言う女性プレイヤーのようだ。

おかげで、こいつらが、少なくとも攻略組の本体では無い事が分かった。

なら、隠れる必要もなさそうだな。

そして、俺はカウンターから隠れるのを、やめた。


「観念したか、魔王のガキ」

「いや、俺は魔王じゃねーぞ?どうして俺が魔王のガキだと決めつける?」


いや、そもそもどうやってここに魔王の娘がいると分かった?


「そいつを教える義理はねェな。大人しく俺のライフルのエサになりなァ‼︎」


無数の弾丸が、俺の頭に飛んでくるが、動く必要は無い。


「…ノヴァ」

『言われなくてもやってるぜ‼︎』


弾丸は、ギリギリで止まる。

重力操作って便利だな。


「これ以上、打つのはやめておけ。人間」


ここまでの会話で、あいつらは俺が魔王の子だと思い込んでいる。


「ようやく本性を出したか。表にでな…ここじゃ、狭くて戦いづれェ」


なら、それを逆手にとって、俺が魔王の子を演じればいい。


「ふ、我に戦いを挑むとは…図に乗るなよ?人間」


簡単な事だったんだ。

初めからこうすれば、誰にも迷惑はかからない。


「スグル、行っちゃダメッ‼︎」

「「なっ……⁉︎⁉︎」」

『隠れてろって言ったよな?』


ヴェルがキッチンから飛び出し、あいつらと俺の間に割り込む。

せっかく、あいつらを店からつまみ出そうと思ってたのに、ヴェルが出てきてしまったから水の泡だよチクショウ…


「なんだ?この()()は。ブラウン、叩き出せ。外のアレには気をつけろよ」

「あの、先輩…」

「なんだよさっきからごちゃごちゃうるせェなァ‼︎言いたいことがあるならハッキリ言えやァ‼︎」

「ギ、ギルマスから、連絡がありまして…攻略組が魔王討伐を完了させたそうです」


討伐…完了?

…って事は、ヴェルはもう魔王の娘じゃ無くなったのか。

はぁ……疲れた……もう演技はやりたくねーな…


「そんなわけ無いだろ?俺の目の前に魔王がいるんだぜ?」


まだ言ってるよこいつ。

気づけよ。


「さっきも聞いたが、お前らはどうして俺が魔王だと思った?」

「それは、先輩のユニークスキルであなたの手から人ならざる者の魔力が「それ以上は言わせねェ」…もがもが」


なるほど、この主従契約のルーンか。

そういえばこれ、常にヴェルと繋がってるんだっけ。

ここからヴェルの魔力が漏れてるって事なのか…今度、包帯でも巻いておくか。


「ヴェル、家から逃げる時に何か貰ったか?」

「え?うん、アモンに魔石のネックレス貰ったよ?ほら」


魔石を首から出して見せる。

そんなもの持ってたのか。


「ヴェル、今度からそれはアイテムBOXにでも入れた方がいい。あと、ルーンの手に包帯でも巻いとけ」

「んー…うん、分かった。そうする」


こうして対策出来たのも、こいつらのおかげか…


「おい、魔王のガキ…と思われるガキ、お前は何だ、何者なんだ」


あ、ガキからは離れないのね…

2,3日とは何だったのか…

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