#2 悪運
やばい。これはやばい。
「…ナンテコッタイ」
俺、久城 響。
俺は今A4の紙一枚と小包に高揚している。
紙には五月に応募したゲーム雑誌の抽選結果が書かれている。
そう。
当たったのだ。
一生買わないと思っていた電子機器が。
当たったのだ!
リンクギアが当たったんだぜ!
さて、当たったはいいが一つ問題がある。
ソフトが無い。
本体、メモリ、その他もろもろはあるが、ソフトが無い。
どうしようか。
「いや、その前にどんなソフトがあるのかすら知らねーや」
ま、それもそうだろう。
今や世界人口の一人につき3.5台程の携帯所有割合の中、俺は一つも持ってない。
それ以前に家には電子機器が無いのだ。
唯一挙げるとするならば。
洗濯機・冷蔵庫・電子レンジ
以上!
俺は頭を壁に打ち付ける。
馬鹿だろ?笑えよ。
「ハハハハ、お前なにやってんだよ」
声のする方を向くと見知った悪友が窓から顔を出している。
「ついにトチ狂ったか。響」
「うるせー黙れ。オロスぞ。翔」
「おぉ怖い怖い」
八条 翔。
お隣さんの腐れ縁。
準ゲーマー。
「ちょっとうるさいわねー。ドキメモに集中出来ないでしょ?」
後ろの窓からから声がする。
二条 真美菜。
こっちも腐れ縁。
廃ゲーマー。
三件並んで家が建っている為、特に真ん中の家に住む俺の部屋は、年中蒸し風呂みたいな気温だ。
そしてみんな揃って二階の自分の部屋。うるさい。
「それで?響がトチ狂った訳でも無く壁に頭を打ち付けた理由ってなんだよ」
…これはやばいパターンの予感。
「別に。抽選に当たって悲しくなっただけだ」
「普通は喜ぶと思うんだけど?それ…」
「お前はドキドキメモリアルに集中してたんじゃねーのかよ」
「興がそれたのよ。それにこんなに蒸し暑かったらゲームが壊れちゃう」
「…なぁ、窓、閉めていいか?暑いんだが」
「お前の場合は閉めたらさらに蒸し暑いぞ」
無駄に正論だからさらに腹が立つ。
「で?なにが当たったのよ」
あ、それ聞いちゃいます?
「え…と…リンクギア…」
「「はぁ⁉︎」」
うわぁい⁉︎右耳と左耳がガンガンするよ⁉︎
「ちょっと待ってろ!今そっち行くから!」
「あ、あたしも!」
二人が窓をまたいで部屋に入って来た。
今の時代にケータイ持ってない人ってすごい不便でしかないんだよね。




