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VRMMO始めました。  作者: 星野すばる(旧:★すばる★)
第二章 俺と魔族とドラゴンと
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#25 カフェ・スグル

テーブルの上に、食パンを使ったサンドイッチと揚げパンを並べる。

揚げパンは、切り落としたパンの耳を油で焼き揚げた物だ。

牛乳と角砂糖ビンを一緒に並べて、俺は自分の場所に座る。

「…ふぁ…おはよう、優…じゃ無かった。響」

「あぁ、おはよう」

「あれ、翔は?」

「まだ寝てるんじゃ無いか?」

「あ、そう」

寝巻き姿のまま、真美菜は俺が用意した朝ごはんの前に座る。


「…うーす…おはよう」

「なんだ、ずっと寝てれば良かったのにな。お前は夜の住人だろ?」

「…えらく昔の話を持ち出すんだな?」

「夢の影響だ」

さて、全員揃ったところで、朝ごはんと行きましょうか。

「いただきます」

「「いただきまーす」」

流石に、朝はテンションが低い。

今日はみんなどうかしたんだろうか?

何か変な夢でも見たのか?


「あたしね、今日変な夢見たのよ。昔の事を夢で見たの。だからさっき、響のこと優って呼んじゃったのかな?」

「へー、奇遇だな。俺も見たぞ、昔の事」

なんだ?

真美菜も翔も見たのか?

「俺も見たぞ。俺が執事やってた時の夢だった」

…ん?

あれ?

「なんか怖く無いか?俺や真美菜、翔が全く同じ夢見るとか恐怖の塊だな」


それとも、別世界の作者の陰謀か?

「別に不思議では無いだろ?リンクギア使って脳波を限りなく似せてるんだから」

「お、おぅ…」

アホの俺には全く分からんが、とにかく偶然では無いらしい。

「それより、響?今日はあたし達が片付けやっておくから、早くCDOに行きなさい」

「え?なんで?」

「今日からお店、開けるからよ。丁度メンテナンスもアップデートも終わって、一段落した頃だから、今日開けないとこの波に乗り遅れるわよ?」


ふむ、流行りとはそう言う物なのか?

「んー、分かった。じゃ、洗い物よろしく頼むぞ?」

「安心しなさい。めちゃくちゃ頑張るから、主に翔が」

食後のコーヒーを楽しんでいる翔の顔色が悪くなっていく。

頑張ってくれたまえ。

「あ、そうだ響。カフェの(キッ)(チン)にいろいろ置いてあるけど、好きに使って良いからね?あたしが全部用意したやつだから遠慮なんてしなくていいよ」

マジか。


「何から何までサンキューな。真美菜には全く、世話になりっぱなしだな」

「え、いや、その…そんな事無いよ?あたし、何にも出来ないし。響の手伝いが出来るだけで精一杯なんだから」

おぉう…

なにこれ可愛い…

「おぃてめーら。イチャつくのも大概にしろよ?響はさっさとゲームに行ってろ。片付けは俺たちがやっとくから」

「お、おぅ…よろしく頼んだ」

食後の片付けを二人に任せ、俺は二階に上がり、リンクギアを装着した。


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


青とも緑とも言えない電子の海を抜けて、俺はCDOの世界に降り立った。

「なんだ、こっちはまだ日の出して間も無いのか」

半分程、CDOの太陽が東の空に隠れている。

この分だと、開店準備が終わる頃には丁度良い時間帯になるんじゃ無いか?

「とりあえずは、キッチンに置いてくれてある、材料の確認だな」

真美菜の事だから、多分足りないとかそう言うのは無いと思うけど。

一応、な。


「うん、まぁこれなら大丈夫だろ」

冷蔵庫にはハンバーグ用のひき肉、卵、牛乳、バケット。

コンロの上の調味料棚には、砂糖に塩、酢、みりん、醤油。

更には菜箸(さいばし)から大窯に至るまで、何でもあった。

「よし、まずは珈琲豆の焙煎からだな…って言っても()るだけだが」

フライパンを弱火にかけ、珈琲豆を()っていく。


最初は青臭かったが、そのうち珈琲独特の香りがしてくる。

『いい香りだな』

「…⁉︎」

誰かが直接、俺の脳内に語りかけて来た。

『なぁ、(マスター)。そろそろここから出してくれねーか?俺、腹減った』

どこだ⁉︎

どこから脳内に語りかけて来ている…?

『ん?俺を探してるのか?だったらアイテムBOX開けてみな』

メニューを開き、アイテムBOXを確認する。


特に異常は無い。

『サポートエッグを外に出してくれ。何、心配は要らない。爆発とかしねーよ…多分』

多分かよ。

怪しさレベル半端ないぞ?

「…なぁ、俺がサポートエッグ出してメリットあるのか?」

『あぁ、メリットしか無いぞ』

「…よし、出すのやめよ」

爆発したら困るし。

『え、ちょまっ……お願いです出して下さい』


そこまで言うなら仕方が無い。

俺はアイテムBOXからサポートエッグを出した。

貰った時と同じように、特に変化はない。

『悪いな、恩に切るぜ』

ピシッ、パキッ…

パリッ!

「…卵に足が生えた」

『さぁ、行くぜ?この日の為にカッコ良く産まれるイメトレして来たんだ…ぜ!』

バキッ!

卵が弾けた。

欠片が散乱し、その内の幾つかが俺の頬をかすめる。

弾き飛ばした張本人は、決まった…と言わんばかりにドヤ顔をしている。

「…よし、オロして食べるか」

『あ、ちょ、ごめんなさいっ‼︎だから、首根っこ掴んで締めるのやめて下さい!お願いしますっ‼︎』


「…で、お前は何なんだ」

炒り終わった珈琲豆を、今度は()きながら、目の前の小さな黒いドラゴンに視線を落とす。

『俺はドラゴン。名前はまだ無ぃいててててて‼︎痛い痛い痛い‼︎頭痛い‼︎』

ドラゴンの頭を持って、吊るす。

『おま、動物保護法で罰せられるぞ⁉︎』

頭を離し、キッチンテーブルに落とす。

「ドラゴンなのは見れば分かる」

ワニの様なトガったウロコに、鳥の様なクチバシ。

コウモリの羽と、頭から少し突き出たツノ。

()()はドラゴンと呼ぶに相応(ふさわ)しい。


「俺が聞いてるのは、お前は何者か、名前は何なのかを聞いてるんだ」

惹きたての珈琲をお湯に溶かし、味見をする。

うん、美味い。

『俺は(マスター)のサポートパートナーだ。名前は本当に無い。まだ、付けて貰って無いからな』

心なしか、ドラゴンは俺の珈琲をチラチラ見てくる。

飲みたいのか?

「フーン…サポートパートナー、ねぇ…」


二杯目を注ぎ、ドラゴンに差し出す。

『いいのか⁉︎』

ドラゴンは目をキラキラさせて、俺の承諾を待っている。

「飲んで良いぞ。それに、お前がサポートパートナーなのは、何と無く分かってたし…ってどうした?全部飲まないのか?」

俺が飲んで良いと言った後、ドラゴンは顔をカップに沈めたが、しばらくすると飲むのをやめた。

『いや、あの…思ってた味と違ってて…想像以上に…苦い』


不味い、と言うのを遠回しに言いたかったのだろう。

だが安心しろ、苦いと思ってるのは俺もだ。

「ま、そう言う飲み物だからな…ちょっと待ってろ」

調味料棚の砂糖、それも角砂糖瓶を取り出して、一つ入れる。

「もう一度飲んでみ?」

今度は恐る恐る、飲む。

『…美味い』

「だろうな」

ドラゴンは、珈琲を惜しむ様にチビチビ飲む。


しっかし、名前か。

うーん…名前…名前?

…シグムンt…いや、ダメだ。

なんか危険な香りしかしない。

って言っても俺が思いつきそうな名前って大体、他作品に出てる(メメタァ…)からなぁ…

神話から連想して行こう。

まずは、ベースとなる名前だが…うん、黒いからバハムートで。

他に、黒そうな神話のドラゴンは…ヴリトラ?

えーと、あとヘルヘイムにティアマット。

それからエリュシオン。

…やっべぇこれ楽しい。

えーと、他には他には………


「よっしゃ決まった!今日からお前の名前はノヴァだ!」

『バハムートとかはどうした』

途中で捨てました。

「よろしくな、ノヴァ。俺の事は気軽にスグルって読んでくれ」

『こちらこそ、よろしく頼む。スグル』

ノヴァは羽ばたき、俺の肩に乗る。

「さて、そろそろ開店しますか。朝メニューはバタートーストと、フレンチトーストだけだからそんなに大変じゃ無かったな」

どうせ客は来ないしな。

俺は店の〈Close〉と書かれた札をひっくり返して〈Open〉にする。

ゲーム内時刻は午前八時前後。

〈カフェ・スグル〉の初オープンである。


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


……いい匂いがする。

ウチはもふもふの布団から身体を起こし、いい匂いのもとへと歩いていく。

「この、あまくてこうばしい匂いはなんだろう…」

匂いの正体をたしかめたくて、ウチはかいだんを降り、キッチンのドアに手をかけた。

いつ、消されるかビクビクしながらネタを入れてます。

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