#22 過去-真美菜編-
目を開けるとそこには、知らない天井が広がっていた。
違う、そうじゃ無い。
それだとまるで、あたしが拉致監禁されたみたいじゃ無い?
言い方を変える。
懐かしい天井が広がっていた。
「…そう。これは夢なのね」
ゆっくりと、その小さい身体を大人三人は余裕で眠れるシングルベッドから起こす。
「夢だけど、しっかり自我が効いてる。VRMMOの使い過ぎかしら?」
辺りをグルリと見渡せば、響がいた。
部屋の入り口でうつらうつらとうたた寝をしている。
響、そう呼ぼうと思って思わず堪える。
この時はまだ優だという事を思い出したからだ。
「優、起きなさい。優!優‼︎」
「…はひ⁉︎」
「優?うたた寝なんかして大丈夫なの?お父さんに叱られない?」
「大丈夫ですよ、真美菜お嬢様。これでも久城家の一族ですよ?役目は果たしています」
役目、その言葉があたしの心を支配する。
だけど、それは一瞬の出来事で、すぐにもとの状態に戻る。
「そう?優がそう言うなら大丈夫なんでしょうけど」
そこでようやく、翔がいない事に気がついた。
「今日は八条さんは来ないの?」
「本来なら来られると困るのですが。なんなら今すぐ八条…さん…をハチの巣にして「ぃよーう。優に真美菜ちゃん。今日も遊びに来たぜー?」…キサマ…また勝手にセキュリティを突破したな?」
「おー怖い怖い。ここがザル警備なのが悪いんだろ?それに俺は愛しの真美菜嬢に会いに来ただけなんだから」
翔はあたしの手を取り、さも当然の様に手の甲にそっとキスをする。
そう言うナルシストなところ、変わってないなぁ…
今でこそ自重する様になったけど、根っこは変わってない。
「そんな事言ってお前はまた二条家の金庫を開けるんだろう?キサマの先代の様に。泥棒め」
「先代は先代、俺は俺。確かに今しがた金庫を開けて来たが何も捕っちゃいねーよ…それから泥棒じゃなくて怪盗って言って欲しいね」
また開けたの?
懲りないなぁ…
そう言えば翔と始めて合ったのも金庫の前だっけ。
懐かしいなぁ…
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うぅ…ねむれない…
今日はとくにねむれない…
ムシあつすぎ…
優のいうとおり、冷房つければよかった…
あついから水でも飲もうかな。
廊下の照明をつけようとしたが、付かない。
……カタン
…金庫室から物音?
「だれかいるの?」
「おおっと。起こしちゃったかな?可愛い子猫ちゃん?」
…だれ?
「安心して、何もしないから」
「…おじさん、もしかしてドロボーさん?」
早く優をよばないと。
「ドロボーじゃないぜ。カイトウだ」
「カイ…トウ?ドロボーさんじゃないの?」
「そーだ、ドロボーさんじゃない」
「翔、余計な事を言うんじゃ無い。それじゃあ、子猫ちゃん?おやすみ」
あ、行っちゃう。
「あの、まって…カイトウのおじさんたち」
「なんだい?」
「おじさんたち、懐中電灯持ってない?あたし、キッチンへ行きたいの」
おじさんたちは少し困ったふうになり、そして何かを思いつき、ゆびを鳴らした。
「…すごぉい」
どういうわけか、目の前に光るチョウが現れ、ひらひらとあたしを先導して行く。
「あのチョウを追いかければキッチンに行けるよ。またね、子猫ちゃん?」
「うん!おじさんたち、ありがとう!」
その後、チョウを追いかけて無事にキッチンへたどり着き、優に叱られて寝室に戻されたのは言うまでもない。
子どもを文字で表すのって難しいですはい…




