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#16 響の手料理③

七月某日、学校は既に夏休みへと突入している。

課題は終わっていて、毎日ゴロゴロしていたい気分だ。

「じゃ、行ってくるね、スグル?」

「本当に行くのか?珈琲(コーヒー)の木なんてあるとは思えんのだが」

「探す前から諦めムードは良くないわよ?大丈夫よ!植物系は、ほとんど現実と変わらないし、きっとあるわ」


現在、朝の6時。

朝食はまだ取っていない。

昨晩の宣言通り、朝からログインしている。

そういえば課題終わったのか?

ログイン前にそう聞いたら、無言で肘鉄貰った。

お察しください。

「なぁ、ショウが見えないんだが…もう来てるのか?」

「えぇ、既に手配済みよ」

フーンと生返事をする。

「昨日、街に最初に降り立った所、分かる?」

「あぁ、転移ポイントだろ?」

「そこにショウがいるから。じゃ、行って来ます!」

「行ってらっしゃい」

携帯型転移ポイントを使用して俺とマミナは目的地に飛んだ。


▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎


「遅えよ。何時間待ったと思ってんだ」

「すんません…」

「取っとと行くぞ。眠くて仕方ないんだ」

ショウがノソノソと歩き始める。

目的地は土地社と不動産。

別に建築社でも良かったんだが、家具とか纏めて買うとなると不動産で家のサンプルを選んで、土地に設置した方が安いのだ。


「着いたぞ」

まずは土地社に着いた。

中に入るとスーツを着込んだNPCがお出迎えをしてくれる。

「ようこそお越し頂きました。お客様」

丁寧な態度を取られて少し固まる。

こういうのに慣れていないんだ。

「どのような使い方をお求めですか?」

「え、あー…自宅兼喫茶店の二階建てを建てようかと思いまして…」

その後も色々と説明して行く。

始めての経験で、あたふたしていたはずなのに、NPCの方は嫌な顔ひとつせず、親身になって話を聞いてくれた。

めっちゃいい人やん…


「…なるほど。その様な使い方ですと、こちらの十六坪はどうでしょう?」

カタログを見せられる。

「裏に井戸もありますし、家庭菜園をするのにも適していますよ?」

十六坪って言うと大体三二畳…だっけ?

六畳一間の部屋が五部屋とちょっとか。

なかなかいいんじゃ無いのか?

しかし、である。

「でも、お高いんでしょう?」

問題は値段だ。

どんなに良い立地条件だとしても、買えなければ意味がない。

「そんな事ありません。七千万C程です」

…めまいがして来た。

いくら大金を持ってるからって七千万Cは高すぎる。


「…もっと安いところありませんかねぇ?」

「そうですね、ではこちらはどうでしょう?二千万Cで先程とほぼ同じ立地です」

提示されたカタログを見ると、確かにほぼ同じだ。

しかし、これで二千万になる理由がわからない。

ワケを聞くと。

「実はこの土地、街外れに面していまして。誰も手入れをしないものですから、雑草は生えるわ井戸は汚いわで誰も寄り付かないんです」

なんだ、そんな事か。


「やはり、この土地はお辞めになった方がよろしいかと「ここにします」…え?」

「俺、この土地買います」

「…そ、そうですか‼︎ありがとうございます‼︎早速ご案内致しますので、こちらの契約書にしっかり目を通した上でサインをお願いします」

バタバタと席を立ち、準備を始めるNPCさん。

後ろでうたた寝をしていたショウを起こす。

「…ん?買えたのか?」

「あぁ、良い買い物だった。今から土地を見に行くから目、覚ませとけよ」

「…うぃ」

あ、NPCさんが戻ってきた。

「お待たせ致しました。それから、申し遅れました。(わたくし)、サカキと申します」

サカキさんね。

覚えた。

土地の広さを測るためにわざわざ一坪の大きさをググった無知の作者です。

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