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嫌でも考える来年の事

 クリスマスは今年もやってくる。

 今宵はクリスマス。クリスマスといえばサンタさん。


「うおっ、いいんすか万さん!」

「いいのいいの。今年はあなたがたにも迷惑をかけたから」

「あざーーーす!」


 俺は直虎たちと万家でクリスマスパーティーなるものを開いていた。

 万家の人たちは改めて、俺のバンドメンバーや家族にもお詫びの何かがしたいと言って、クリスマスパーティーを開くので誘ってくれないかと相談を持ち掛けられた。

 直虎たちはタダで飯を食えるのと豪華な飯を食えると二つ返事でOKで、両親はともに沖縄に旅行、妹の声葉だけがやってきたのだった。


「七面鳥だなんて初めて見たであります……」

「マジのクリスマスって感じがしていいね!」

「音子、いつもこんなん食ってんの……? 俺らとはもう程遠い世界にいるんだな……」

「うるさい。黙って食え」


 三人は食べ進めていく。


「お姉ちゃん、そういやUSAの人たちと会ったんだってね」


 と、声葉がいうと三人の手が止まる。


「……マジ?」

「二週間ほど前にね」

「私がお姉ちゃんのことを教えてあげたのが幸いしたね」

「お前なぁ。俺のことは秘密なんだからそう簡単に言いふらすなっての」

「ごめんごめん」


 俺もあまり人のことは言えないけど。


「で、どういう話したんだ?」

「ん? 俺がUSAのもう一人のボーカルにならないかっつー話で」

「……いくのか?」

「いや、俺はお前らとやりたいし……」

「音子ーーーーーっ!」


 直虎が俺に抱き着いてくる。

 汗臭い……。


「すごいでありますな。まぁ、音子は初めてとは思えないほど歌が上手でありますから当然ではありますが」

「才能が違うよねー。僕たちとやるよりUSAでやったほうが輝けるのにもったいねー」

「そんな悲しいこと言うなよ。たしかにそんな類の事も言われたけど」


 俺はネオエスケープを脱退するというのは考えていない。

 脱退するときはそれこそ死んだときぐらいだろう。


「すいません、おかわりいいっすか!?」

「こっちも!」

「僕も!」

「はいはい」


 三人は豪華な料理を腹いっぱい食べようと一生懸命食べている。

 俺も七面鳥を食べながら、来年のことを考えてみた。来年は俺は受験生。受験……。なんで俺は生涯に二度も大学を受験してるんだろうな。

 地獄の受験勉強生活が始まるな……。桐羅はレベルが高いし、国内の難関大学も目指せるぐらいには偏差値もままある。


 どこの大学に行くか……だよな。

 俺が音助として通っていたのはFランではないが難関大学というほどの大学でもない。Bランクぐらいの大学。

 だけど桐羅に関しては桐羅のブランドもあるので高卒は実質ダメ、どこかへ進学一択なんだが、FランとかBランでもあまりいい顔はされないだろう。


「……千智ちゃん来年のこと考えてる?」

「まぁ、この時期になったらみんな考え出すんじゃない?」

「だよねぇ」

「……大学で悩んでるの?」

「うん」

「そっか。お前今高2だもんな。もう一度受験かよ」

「受験勉強の苦しさをもう一度って浪人したみたいな感じだね」

「浪人……うっ、頭が」


 そういや仁は二浪したんだっけか。


「桐羅のブランド的に俺がもともと通っていた高校はいい顔されないだろうしよー……」

「あー、まぁたしかに。うちだと猶更かも」

「となると次はユキと同じ大学ー……つってもユキのスペック高いから絶対Sランクの高校だろ?」

「まぁ、無難に東大かなぁとは言ってたね」

「無理だろ俺これ」


 最低でもAラン。これは絶対条件だと思う。

 俺は頭は悪いほうではない。けど、よくもない。


「……直虎。俺はやっぱ食っていくためにUSAに入ろうと思う」

「さっき俺らとやりたいとか言ってたじゃねえかよ! 俺らの友情はそんなもんかぁ!?」

「無理ゲーだもん……。俺だって一応立教受けて落ちて滑り止めのお前らの大学になってるんだよ……? 無理だろ」

「……」


 直虎も無理そうだと直感でわかったらしい。


「大丈夫じゃない? 音子、テストの順位いつも40位くらいでしょ? お茶の水女子大とかあたりはいけるんじゃないかな」

「そう簡単に言わんといて……」


 受験で一度失敗した苦い記憶があるからそのトラウマが……。


「クリスマスにそんな辛気臭い話題出さないでよお姉ちゃん」

「……ごめん」

「来年のことは来年考えよ! どうにかなるって!」

「それはそれでまずいと思うけどね」







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