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誕生日当日

 ユキの誕生日、当日。

 俺は招待状を片手に、きちんとしたドレスを身にまとい会場へと足を踏み入れる。千智ちゃんと一緒に入場し、俺は席に着いたのだった。

 席に着くと、なんだか視線を感じる。見られているような気がした。


 そして、その直後に、ドレスを身にまとった伊佐波が堂々と胸を張って入ってくる。


「従姉様があんな事件を犯しておいてよくのこのこと来れますわね」

「というか、誘われないでしょう普通は。誰が誘ったんですのあのお方」

「婚約者の座を盗られみじめな姿をわざわざ見せにくるとは驚きですわ」


 と、陰口が聞こえてきたのだった。

 女って怖え……。入ってきた伊佐波にわざと聞こえるように言ってる。伊佐波はその口撃を無視して俺の隣に座ったのだった。

 そのことがさらに陰口を加速させる。


「またなにかしでかすんじゃありませんの?」

「財前様もこんなものを招待するなんてありえないですわ」


 と、第三者の俺も聞いていてちょっと気分が悪くなるくらいの陰口だった。


「……大丈夫?」

「所詮、みじめな女の戯言ですわ。自分から掴もうとする意欲すらないくせに口だけは一丁前なんですの。気にするだけ無駄ですわ」


 強い……。

 メンタル強すぎるだろ伊佐波。芯が強いと言えばいいんだろうか。


「まぁあまり聞いていて心地よいものではありませんわね。迷惑をかける前に黙らせましょうか」

「できる?」

「音子様の力ならできますわ。このように皆様に言ってくださる?」


 と、セリフを用意されたので私は陰口を言っている女子に先ほど教えられたセリフと同じことを言う。


「私が誘ったんです。伊佐波様と私の間にはすでにわだかまりなどないんです。私の友人として、招待したのですよ。それはユキ……幸村様も認めておりますので」


 というと、一気に押し黙ったのだった。

 さすがにユキが認めている、俺自身との間にもわだかまりがないと言ったらもう何も言えないのか、口をつぐんでいた。

 さてと。今は陰口にかまってる暇はないんだ。


 俺の今一番の心配事はプレゼント。

 一応、喜んでもらえそうなものは用意はできた……っつーかした。用意はしたんだけど……本当に喜んでくれるかどうか。

 お気に召してくれたらいいんだけどな。


「よっ、千智ちゃん、音子ちゃん」

「剣さん」

「剣もこの席? いやだよ」

「なんで? 僕だって招待客の一人だよ。指定されたのはこの席だし文句は幸村に言ってよ」


 剣が少しにやけながら席に着く。

 次々と会場に入ってくる招待客の人。大体はユキの知り合いや友人で埋められているらしく、婚約者も決まったということなので女性客は去年より少ないという。

 聖凛女学園からはさっきの陰口を言っていた女子と伊佐波だけなんだとか。


「今年はなんとか平和に終われそうだねぇ」

「まぁ、音子から奪おうとするような意思を持つ子がいなさそうだからねぇ」

「むしろ音子ちゃん以外になびかないでしょあんな人間嫌い。僕が女の子になっても無理だよあれを篭絡するのは」

「顔は同じなんだけどねぇ私と」

「人間は心ってことなんだよね結局のところ」


 人間は心かぁ。

 俺らが話していると、本日の主役が会場内に入ってきたのだった。











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