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新聞部の取材

 メイド服を着て、クラスメイトを客に見立てて接客をしてみる。

 赤家さんにお茶を運んでいったのだった。


「お嬢様、飲み物をお持ちいたしました」

「ふふ、ありがとう音子さん。砂糖はあるかしら」

「こちらにご用意しております」


 紅茶と砂糖を入れた容器を提供し、その場を離れる。

 すると、教室の扉が開かれたのだった。開けた人物はカメラを首からぶら下げている。


「こんにちはです! し、しし、新聞部ですっ!」

「新聞部ぅ?」


 赤家さんが新聞部と聞くや否や少ししかめっ面になっていた。

 初々しい男子高校生二人が新聞部としてやってきた。正直、顔をしかめるのもわかる。新聞部にはいい思い出がない。

 赤家さんが立ち上がり、新聞部二人に詰め寄っていた。


「何しに来たのかしら」

「ぶ、文化祭の出店の写真を……」

「へぇ? 本当は違うんではなくって?」

「赤家さん……。怖がらせてるよ」

「いいのよ」

「だめだって……」


 赤家さんを取り巻きの子たちに連れて行ってもらい、俺と千智ちゃんが対応することになった。ほかのクラスメイトも対応すればいいと思ったが、赤家さんが絡んで怖がらせてしまったから優しそうな千智ちゃんで中和するしかない。

 ユキはもっと委縮させてしまいそうで論外だし、剣も何考えてるかわからないから論外。知り合いにまともなのが少なすぎる。


「ごめんね。緊張するでしょ?」

「は、はひっ」

「そんな緊張しないでいいから。ね?」


 千智ちゃんに微笑まれてもがっちがちに緊張していた。

 千智ちゃんは俺に耳打ちしてきた。


「多分この子たち外部生で私たちの怖いうわさばかり聞いてガッチガチなんだと思う。新聞部である以上取材にはいかなくちゃならないから来たんだろうけど……」

「外部生って内部生の事あまりよく思ってないもんなぁ……。どうしたものか……」


 まぁ、とりあえず緊張をほどくとしよう。

 新聞部の人たちを中に招き、俺は調理場からハーブティーを持ってきた。ティーカップを二人の前に置いてハーブティーを注ぎ込む。

 ハーブの落ち着いた香りが漂っていた。


「さ、どうぞ」

「あ、ああ、あありがとうございます」

「ありがとうございます……」


 二人はハーブティーに口を付ける。


「どお? 正直な感想言ってちょうだい。私あまりこういうの淹れたことがないからさ、上手くできてるかどうか不安で……」

「お、美味しいです!」

「美味しい、です……」


 む、なんか言葉が詰まってる。


「ごめん、そっちの子はハーブティー苦手だった?」

「そ、そそ、そんなことは……」

「あはは、苦手なものだしてごめんね。これ、口直しに食べて」


 俺はクッキーを差し出した。


「それで、どういった取材をしたいの?」

「あ、ああ、あの、双子メイドを撮影させていただければ……」

「いいよー。じゃ、さっそく撮ろうか」


 俺はお盆を手にして、千智ちゃんと並ぶ。


「おい音子! 写真の構図それだと最悪だ! もうちょっといい感じにだな……」

「銀太郎ってこういうときめちゃくちゃうるさいね」

「うぐぅ!」

「苗字呼びじゃなくなったしくんもつけられなくなったな」

「なんかもう雑に扱っていいよね銀太郎は」

「気づいたな銀太郎の扱いに」


 雑に扱うから調子に乗るんだこいつ。と気づいてからはもう苗字くんで呼ばなくなった。呼びたくなくなった。もう雑に銀太郎でいい。


「まぁ、どうせなら構図にもこだわるか。千智はやりたい構図とかある?」

「構図かぁ。こういう風に斜めに立って……」


 千智ちゃんの指示のもと、俺は定位置に立つ。

 そして、新聞部の一人が震える手でシャッターを切った。パシャリと鳴り響くカメラの音。撮り終えて、新聞部の二人はいそいそと帰ろうとしていた。

 俺はちょっと呼び止めて。


「部長さんによろしく伝えておいて」

「わ、わかりました!」


 そういってそそくさと帰っていった。










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