ユキの婚約者
ここ最近、いろいろあった。
八重津に俺のことがばれたり、千智ちゃんが暴れたりなどなど。そのせいかもしれないが……。
「テストの点数めっちゃ悪いな」
わかっていたことだ。
桐羅の中間テスト。9月の終わりに開かれた中間テストで赤点ギリギリの点数だった。レベルが高いというのもあるが……いろいろありすぎて復習とか怠っていた。
赤点はぎりぎり回避できたとは言え、ここまで悪いのは普通に恥ずかしいもんだな。
「これは帰って復習しないとなー……。ここ最近いろいろあって本当に……」
桐羅ではテストの順位が掲示板に張り出されるようだ。
1位はまぁ想像できていた通りユキ。5教科500点満点のテストで498点というバカみたいな数字。1問しかミスしてないのもすごい。
2位は……井達くん。外部生だからかほとんど外部生の名前がずらりと並んでいた。
「さっすが帝王様だなー……」
「井達惜しかったなー」
と、外部性がやいやい騒いでいた。
それを面白くなさそうに見る内部生。俺の順位ははるか下のほうだった……。千智ちゃんは4位に名前があったっていうのに恥ずかしいっ!
「生意気ね」
「これだから外部のやつらは」
と、内部生がぶつくさ文句を言っていた。
やれやれ。軋轢はいまだ健在。というかなくなるわけがない。だがしかし……てっきり千智ちゃんとか見に来てるもんだと思ってたけど見に来てないのか。
というかどこにいるんだろ。もしかしてサロン? サロンは俺は入れないしな。
「ん?」
俺は窓の外を見ると、ユキが誰かと話している姿が見えた。ユキは嫌そうにしているが無理に追い返そうとはしていない。
相手は……この学校の女の子ではなく、純白の制服に身を包んだ女の子だ。珍しい。ユキが普通に会話を続けるのは千智ちゃんぐらいだってのに。いったい誰だろうか。
まぁ、それは俺にはどうでもいいこと……。
ユキがちょっと嫌そうにしているあたりあまり得意な人物ではないのは確かなんだが……。
……助けに行ってやるか。ユキは女嫌いだしな。
俺はカバンをもって校門のほうに向かう。
「ユキ」
「ん? 音子」
「どうしたの?」
「いや、なんでも……」
「あら」
と、白い制服を着た女の子が俺を見定めるかのように全身を見てきたかと思うと鼻で笑っていた。
「初めまして。私は聖凛女学園に通っております伊佐波 優里亜といいます」
「あ、私は……万 音子です」
「万……。あの万家のものですか。へぇ。そうですか」
なんか嘲笑っているような感じがする。なんつーかめちゃくちゃ感じ悪い。
「ではわたくしはこれで。幸村様、また今度一緒にディナーでも」
「あぁ……」
といって伊佐波は車に乗って去っていった。
いやな奴……というのが第一印象だが、そんな嫌な奴を追い返そうとしなかったユキが気になる。ユキも俺のその気持ちに気づいているようで、重々しく口を開いた。
「……元婚約者で、俺の父とあいつの父が親しくしているから無下にできん」
「なーる……婚約者!?」
「意外か?」
「婚約者ってマジでいるとは思ってないから……」
「そうか。そういう世界じゃないところで生きてきたからな。まぁ、そういうやつなんだ。嫌な奴だろアイツ」
「……品定めされてるのがどうも気に食わん」
「だろ」
あんな奴ともう関わりたくない。




