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万 音子、女の子改造計画 ③

 気分は複雑ではあるが、イタリア人がいるというのは非常に大きく、なおかつ家柄も良すぎるためにいろんなところに融通が利くのはいいところだった。

 ローマの観光名所を巡っていると。


「いっ……」


 足が痛い。

 思わず痛さで声が出てしまった。立ちすくんだ俺を心配して駆け寄ってくるユキたち。


「うわぁ……結構ひどい靴擦れ……」

「慣れない靴だからじゃねーの? これ歩くのも困難だろ」

「……面目ない」


 右足にはひどい靴擦れの跡があった。

 少し底上げした靴を履いていたのもあり、靴擦れがひどく血がにじんでいる。


「……ごめんね。無理してそんな靴を履かせたから」

「いや、いいんだよ。千智ちゃ……は私のためにしてくれたんだから」

「責任もって! わたくしがおぶって差し上げますわ!」

「いや、ワタシガ!」


 いや無理だろ。

 女の子といえど成長した人間やぞこちとら。鍛えてない女の子にもてるはずもない。というか、千智ちゃんと身長も同じだし体重も多分同じだから千智ちゃんは無理だってわかってて黙ってる。

 現に俵さんが俺を持ち上げようとしているが持ちあがっていない。ヴィットーリアも同じだった。


「仕方がナイ……。ワタシノ執事を呼び……」

「音子。我慢してくれ」

「えっ?」


 ユキはひょいっと俺をおぶる。

 俺の胸がユキの背中に当たる。


「……軽いな」

「いや……私もそこそこ重いし音子も同じぐらいだよ……」

「いや……痩せてるんじゃないか? 千智より」

「むっ……」

「財前……。それはいくらなんでも……」

「いや……うん。たしかにそうだな」


 ユキがこんなに近く……。

 俺はユキに優しく捕まる。歩けないから仕方なくとはいえど、ちょっとこれは恥ずかしい。どことなく少女漫画のような雰囲気を感じてしまい落ち着かない。

 そ、それにユキが間近にいるせいか、ユキの爽やかな柑橘系の香りが鼻を突き抜ける。


「……お前普段ちゃんと食べてるか?」

「……言うてそこまで」

「だよな。にしてもこの軽さは高校生の女子とは思えないんじゃないか? 前まで寝たきりだったような感じがするが……」

「クローンの体だからじゃない?」


 千智ちゃんが耳打ちすると納得したようにうなずいていた。

 たしかにクローンの体だったら中身がないときは食事すらとれないから体重も……。そしたらここまで成長はしなくないか? 栄養だけ点滴で打ち込まれてたとかそんな感じなのか?

 わからんことだらけだな……。


「ま、ホテルに向かおうぜ。そこなら応急手当のやつはあんだろ」

「ダカラ私が……」

「お前、そこを恩着せがましくやるつもりだろ。そうはいかねえ」

「そうだね。昨日の一件もあるしな」


 どうでもいいけど俺は足が痛いから本当に移動してほしい。

 あと公衆の面前でこの格好はちょっと……。俺的にはドキドキしてよくない。本当に少女漫画の主人公になったみたいで落ち着かない。

 こんな落ち着かない時にこそギター弾きたいのに最悪なことに今手元にないし……。


「くっ……非力な自分が嫌になりますわねっ!」

「まぁ……仕方ないよ」

「男に生まれればワタシもあんな風に……シテヤラレタ!」


 どこに悔しがってるんだお前は。












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