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吹雪の朝

 スキー旅行二日目。

 旅館で目を覚まして外を見て驚いた。


「わぁ、すごい吹雪……」


 外はとてつもない吹雪で出られそうにもなかった。

 とりあえずラウンジに向かうと、困った表情の銀太郎たちが立っている。


「すごい吹雪だね」

「あぁ、予報だと安定する予報だったんだけどな」

「これじゃ滑れない……。クソっ!」


 よほど滑りたかったんだなぁ。

 旅館の人も宿泊している人たちに今日は危険だから外に出ないようにと通達しているらしく、女将さんが申し訳なさそうに平謝りしてきたのだった。

 

「朝食も吹雪の都合上あまり良いものをご用意できません……。誠に申し訳ございません」

「いえ、吹雪なので仕方ないでしょう。こちらこそ気にかけていただきすいません」


 ぺこりとお辞儀。

 ものすごい吹雪で、窓の外の景色が分からないくらい視界が悪い。というか、窓に雪がへばりつき、旅館を風が吹きならす。

 

『日本海側では大吹雪になり、北海道、青森、秋田、山形、新潟、富山、石川、長野県に猛吹雪警報が発令されております。なおしばらく続く見込みであり……』


 その瞬間、ばつんとテレビが切れたかと思うと、旅館の電源が切れた。

 

「停電か?」

「吹雪で停電になったんだ」

「本格的にやべえ吹雪だってことか!?」

「俺らからしたらな」

「実際、もう朝の8時だってのにまっくらだもんな。日光が差し込んでこないぐらい厚い雲に覆われてんだろ」

「……竜の巣の中?」

「いや、ここ地上だぜ。ラピュタはねえよ」


 おい、ボケに冷静にツッコミをいれるな銀太郎。

 すると、電気がやっとついた。


「ただいま旅館の非常用電源が作動しました! 落ち着いて部屋に戻り今日は一日我が旅館で休んでください!」

「だってよ」

「しゃあねぇ。部屋でトランプでもしようぜ。あと、俺、百花ちゃんのことも教えてほしいしな」

「そうだな。部屋でトランプでもやりながら……」

「そういえば音子、俵はどうした?」

「あ、部屋で寝てるかも。寝ぼけながら来たから」


 今日は珍しく遅くに起きた。

 寝ぼけながら来たから俵さんを起こすのを忘れてた。俵さんをそろそろ起こして遊びに誘ってあげようと、俺の部屋にみんなが集まる。

 部屋を開けて、電気を付けた時だった。


 だらりと赤い液体が部屋の真ん中に垂れている。


「えっ」


 部屋の中に入ると、血まみれの俵さんが寝ころんでいた……。


「さ、殺人事件ーーーーっ!」

「落ち着け!」

「容疑者は……音子になるよな?」

「私何もしてない!」

「落ち着けって言ってるだろ……。死んでないぞ。何があったか知らんがこれトマトジュースだ」

「……トマトジュース?」

「おい、起きろ」

「ン……」


 俵さんは目を擦り起き上がる。

 俵さんの着ていた浴衣が真っ赤に染まっていた。そして、寝ていたところにはトマトジュースの空き瓶が転がっている。


「おはようございますわ〜……」

「おはよう」

「あら……。音子様たくさん増えましたわね〜……。なんか汗で浴衣がベタつきますわ〜……」


 そう言って俵さんは浴衣に手をかける。


「…………」

「銀太郎、一回出るぞ」

「えっ!」

「……変態」

「音子、着替え終わったら呼んでくれ」

「オッケー」


 名残惜しそうにしている銀太郎を蹴飛ばし外に放り出す。

 一応、この中で女の子は俺だけ……。厳密にゃ純粋な女の子ってわけではないがまぁ女の子。


 俵さんは寝ぼけながら浴衣を着替えていく。

 はらりとトマトジュースが染み込んだ浴衣が下に落ち、私服に着替えていく。

 

「顔洗って」

「はいですわ〜……」


 顔を洗わせ目を覚まさせる。

 俺はその隙にトマトジュースが染み込んだ浴衣を手に取った。

 ……俵さん、すげえおっぱいだったな、なんて思いつつ。


「ふぅ。目が覚めましたわ! 改めておはようございます……ってぎゃーーっ! 人殺したんですの!?」

「いや、これさっきまで俵さんが着てたやつだっての」

「えっ? あーっ、そういえば昨日……。トマトジュースを夜中手に取ってそのまま……記憶が……」

「その結果これだぞ」

「Oh……」


 俵さんは絶句していた。


「旅館の人に謝りますわ……。ところで今何時……9時半っ!? お寝坊しましたわ!? 集合時間は9時でしたわよね!?」

「……今日一日中は旅館で遊ぶってよ」

「なぜですの?」

「外見たらわかる」


 俵さんはカーテンを開けると、ものすごい吹き付けてくる雪に唖然としていた。


「ってわけで帰れないからさ」

「そうですわね……。まぁとりあえず財前様たちと……」

「部屋の前で待機してるよ。ユキー、いいよー」


 そういうとユキたちが部屋に入ってくる。

 銀太郎はじーっと俵さんを見ていた。


「……なんですの?」

「いや、俵ってさ。改めて見るとすげー色っぽいよなって」

「……九条様。どこを見ておっしゃってるか口に出してくださいませ」

「…………」

「変態ですわね」

「ごめんなさい」


 銀太郎がすぐ土下座した。

 弱い……。










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