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『悪役令嬢に転生したら、今度こそ全力で遊びます!』 ――中年おじさん、完璧令嬢をやめて小学生男子ムーブに全振りする。  作者: 南蛇井


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マリアンヌの“取り戻す時間

王国の朝は、今日もにぎやかだった。


 広場では子どもたちが走り回り、空では凧ゴーレムが風に乗って舞い踊る。

 そしてその中心で、マリアンヌは全力で駆けていた。


「まーりあーんぬー! つかまえるぞー!」

「おいでーっ!こっちだよー!」


 追いかけっこをしていたかと思えば、次の瞬間には巨大滑り台に飛び乗り、歓声を上げながら滑り降りる。

 その勢いは大人の領分を完全に飛び越え、“遊びの王”とでも言うべき輝きがあった。


 ――前世では、中年になるまで働き詰めだった。

 ――遊びたくても時間がなく、やりたいことは「いつか」の箱に詰め込んだままだった。


 その「いつか」が、今ようやく弾けている。


「マリアンヌ様ー! 新型凧ゴーレムできましたー!」

「おっ、飛ばそ飛ばそ!」


 魔法技師が運んできた凧ゴーレムは、鮮やかな色で装飾され、翼をひらひらと揺らしていた。

 マリアンヌが糸を握ると、凧は生き物のように空へ舞い上がる。


「わあっ!すごいすごい!!」


 子どもたちが跳びはね、魔物たちも尻尾を振ってはしゃいだ。

 ドラゴン型の魔物が風を起こし、凧はさらに高く昇る。


 季節ごとに行われる「王国全土宝探し大会」の準備も大忙しだ。


「去年より宝箱の数、倍にしよっか!」

「倍は多すぎます! せめて1.5倍で!」

「じゃあ1.7倍で!」

「増えてます!!」


 そんなドタバタ騒ぎも、王国の恒例行事になっていた。


 マリアンヌは笑う。

 心の底から楽しそうに。


「だってね――遊べるときに遊ばなきゃ損だもん!」


 その言葉は、無邪気でありながら、どこか切なさを含んでいた。

 かつて失われた時間を、今取り戻しているのだ。


 子どもたちも、大人たちも、魔物までもがその笑顔につられて笑い出す。

 遊んではしゃぐ姿を見るうちに、いつしか王国中が柔らかな空気で満たされていった。


 マリアンヌが笑うと、世界も笑う。

 そんな日々が、当たり前のように続いていた。


 ――彼女の「取り戻す時間」は、まだ終わらない。

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