新時代の政策:遊びと創造のインフラ整備
新王ルネと“遊び担当大臣”マリアンヌが中心となった新政権は、
従来の常識をひっくり返すような革新的政策を次々と打ち出した。
◆① 王国全土に「創造工房」を設置
最初に実現したのは、王国中に散らばる 半公共の創作スペース――通称「創造工房」の設置だった。
そこでは、子どもたちが木材を削り、学者が奇妙な魔導管を組み、
職人が新型ポンプを叩き、魔法使いが安全結界を張っている。
火花が散ろうが、謎の煙が上がろうが、基本的に誰も止めない。
「危ないので気をつけてくださーい。でも止めはしませーん」
魔法監督官は、今日も温かくもじっとりとした見守りをしている。
その一角で、マリアンヌは子どもたちと一緒になって木材を切り、
風船スライムを抱え込み、ホッピング魔法の改良をしていた。
「もっと跳ぶ!跳ばないと遊びじゃない!」
「大臣、それ以上跳ぶと天井突き抜けます!」
――活気にあふれ、混沌としていて、しかしどこか幸福な空気。
創造工房は、王国の象徴になりつつあった。
◆② 魔物との共生地区の拡大
次に進んだのは、魔物との本格的な共生政策だ。
丸石ゴーレムは土木作業の手伝いをし、
風船スライムは子どもたちのクッション代わりになり、
巨大狼も、子どもに耳を触られてうっとり寝ている。
そして年に一度開かれるのが――
「共遊祭ーー!!」
人と魔物が一緒に競技に参加し、
全力で遊ぶ巨大フェスである。
走るゴーレム、跳ねるスライム、飛び回る子ども。
そこをマリアンヌが審判として走り回り、もはやカオス。
「スライム風船割り競走、スタートー!!」
「ピュルル〜!(割られたくない〜!)」
人と魔物の距離は、かつてないほど近くなった。
◆③ “遊び発明品”の産業化
そして、王国の歴史を動かしたのが、この政策だ。
――巨大水鉄砲事件。
あのとき作られた 高圧ポンプ技術・魔力冷却技術・軽量筐体素材 が
本格的に産業化され、王国の機械技術は急激に飛躍した。
「冷却蒸気炉の効率が三割も上がったぞ!」
「この水圧技術、農業にも使える!」
「スライムタンク方式、すごく便利ですね!」
遊びから生まれた技術が、
農業、工業、軍事、医療……あらゆる分野で革新を起こしていく。
やがて他国が次々と言い始めた。
「遊び大臣の国を視察したい」
「どうやってあの“水鉄砲兵器”を……?」
「我が国にも創造工房を設置したい」
そして王都には、毎週のように視察団の行列ができるようになった。
◆◇◆
ルネは玉座の上からその光景を眺めながら、苦笑する。
「……まさか“遊び”から世界一の技術大国になるとはな」
隣で、マリアンヌが胸を張って言った。
「でしょ!遊んだらね、だいたい何とかなるんだよ!」
「いや……君の“だいたい”は世界を変えるから、怖いんだよ……」
しかし、王は嬉しそうだった。
こうして、王国は本当に “遊び心の王国” へと変貌していくのであった。




