マリアンヌ、“遊び担当大臣”に就任
ルネ新王の戴冠式から数日後。
王城の中央講堂では、もう一つの歴史的儀式が行われていた。
――マリアンヌ・クローバー、閣僚就任式。
正式名称こそ「創造文化担当大臣」。
だが、国民の九割はすでに彼女を “遊び大臣” と呼んでいる。
壇上に立った少女は、式典らしさを微塵も気にしていない満面の笑みで、元気よく手を振った。
「みんなーっ! 今日からわたし、遊び担当大臣だよ!!」
場内がざわっ、と揺れた。
側近席では、文官たちが一斉に顔を抱える。
「ま、マリアンヌ殿……正式名称がありますので……!?」
「頼む、せめて“文化大臣”と言ってくれ……!」
しかし、当の本人はいつも通り。
「えっとね!」
ぐっと胸を張り、堂々と言い放った。
「遊びはね、心の燃料!
遊べるときに遊ばなきゃ、人生もったいない!」
講堂全体が静止した。
次の瞬間——
子どもたちの席から、歓声が爆発する。
「わああああっ!!」
「マリアンヌ大臣、最高ーー!!」
魔物たちも尻尾を振ったり、体をぽよんぽよん揺らしたりして喜びを示す。
一方、大人たちは複雑な表情だった。
“国政の場でそんなスローガンを叫ぶ大臣”など聞いたことがない。
肩を落とす側近たちの後ろで、王ルネが苦笑しながらつぶやく。
「……まあ、いいか。
彼女らしいし……それに、嘘じゃない」
視線が重なると、マリアンヌは大きく手を振った。
「ルネー!あとで一緒に遊ぼー!」
「……閣議のあとならな」
講堂に笑いが広がる。
——こうして世界初の“遊び担当大臣”が誕生した。
その瞬間、王国はまた一歩、未来へと踏み出したのだった。




