ルネの即位と、新政権の指針発表
暴走兵器オルド・ガイア事件から、静かに、しかし確実に時は流れた。
数年後の王都。晴れ渡る空の下、王城前広場には国中から集まった人々がぎっしりと埋め尽くし、金色の旗が風にはためいている。
王太子ルネの戴冠式――。
白銀の祭服に身を包んだルネが、堂々と玉座へと歩みを進めるたびに、人々の歓声が波のように押し寄せた。
かつて少年だった彼が、今や一国の王として立つ。その姿には芯の強さと、優しさの両方が宿っていた。
冠がそっと頭上に置かれた瞬間、鐘が鳴り、無数の光魔法が空へ舞い上がった。
「我が名はルネ・リースフェルト。
――本日より、この国を導く王として、ここに立つ」
凛とした声が、王都全域に響き渡る。
そしてそのまま、彼はゆっくりと宣言した。
「我らが王国は、今日より
**“創造と好奇心を尊ぶ国”**として歩み出す!」
一瞬、まるで時間が止まったかのように静まり返る。
しかしすぐ後ろで控える側近たちが、硬直した顔でひそひそと慌て始めた。
「こ、好奇心……? えっ、遊びのことでは……?
陛下、本気ですか……?」
「王国方針に“遊び”を入れるなんて前代未聞ですよ!」
ざわつく大人たちと違い、人々の中からは小さな歓声があがる。
子どもたちが、期待に目を輝かせたのだ。
ルネは微笑んだ。
「創造は、遊び心から生まれる。
私は……あの少女に教わったんだ」
視線の先、式典の控え席に座るマリアンヌが、大きく手を振っていた。
相変わらず緊張感の欠片もない笑顔で。
――その無邪気さこそが、世界を救った。
ルネは胸の内でそっとつぶやく。
(君が教えてくれた。
“遊ぶ”ことは、生きる力になるんだと)
新しい時代が、確かに幕を開けた。




