水鉄砲の暴走
裏庭での泥団子遊びの余韻に浸りつつ、マリアンヌはふと噴水に目を止めた。
「これ……使えるかも!」
小さな手をかざし、魔力を集中させる。
水がキラリと光り、圧縮されて勢いよく飛び出す――まさに水鉄砲だ。しかも威力は通常の三倍。
「わぁ! すごいね! 遠くまで飛ぶ!!」
嬉々として噴水からの水を的に向けて撃つと、庭の彫像に直撃――真っ二つに割れてしまう。
「お、お嬢様ァァァァァァ!!」
騎士の悲鳴が響き渡る。
驚きと絶望の入り混じった表情で、飛び散る水と破片を目にする。
「ふふふ、楽しい! 水って最高だね!!」
マリアンヌは全く反省する気配なし。むしろ笑顔が輝いている。
騎士団は頭を抱え、職人を呼び寄せる。
今日も王城の修繕職人たちは、無邪気な悪役令嬢の“全力遊び”による惨状の後始末に追われることになる。
「……この城、どうしていつもこんな目に遭うんだ……」
騎士たちはため息をつくが、マリアンヌは庭で次なる遊びを企んでいる。
裏庭の平和(?)は、今日も一瞬で消えたのだった。




