大人たちの「競技魔法」が本領発揮
巨大ホールに飛び込んだ一行を、機神オルド・ガイアの警戒レーザーが迎え撃つ。
赤い光線が床を灼き、天井からは圧縮魔力の砲撃が降り注いだ。
「来た! 防御陣形を――!」
騎士が叫ぶより早く、別方向から声が上がる。
「――任せたまえ!」
職人ギルド、学者団、騎士団の“競技魔法研究班”が前へ飛び出した。
その胸元には、どこか誇らしげに“遊戯技術開発課”の紋章。
「発動! 《スーパーホッピング跳躍魔法》!!」
次の瞬間、大人たちが――信じられない高さへ跳んだ。
「うおおおお!??」
「なんだその跳躍力!? カエル族か!?」
天井近くの監視装置に直接蹴りを入れ、機神の視界を乱す。
続いて別の学者が縄を取り出し、地面に素早く結界を描いた。
「《縄跳び結界魔法》展開!」
輪っかをくぐるような弾性の膜が生まれ、暴走兵器のレーザーを弾いては反射する。
ビィィィィン――ッ!!
反射光が壁を焼き、オルド・ガイアがわずかに後退した。
「ま、まさか……縄跳びでレーザーを……?」
「反射角度、完璧だよ! 実験どおり!」
さらに後方から、紙飛行機がふわりと飛んだ。
「《紙飛行機式索敵魔法》、飛ばします!」
紙飛行機は光の粉をまといながら高速旋回し、敵の死角情報を次々に地図へ描き出す。
ルネ「ちょ、ちょっと待て……」
あまりの光景に、ルネは思わず口を押さえた。
「いや、研究してたの!?!?
“遊び魔法”を……真剣に……???」
学者たちは胸を張った。
「もちろんだ! 遊びは高度な運動論理と創造性の結晶だからね!」
「競技化すれば戦術応用は必然だ!」
「マリアンヌ嬢の理論は、非常に革新的で――」
「理論じゃなくて遊んでただけなんだけど……」
と、マリアンヌは泥だらけのまま首をかしげる。
ルネは頭を抱えた。
(……この国の大人、どこまで本気なんだ……!?)
しかしその“本気の遊び”が、確実に機神を追い詰めていた。
跳び、跳ね、反射し、斜角計算をしながら、
競技魔法のエリートたちが次々と道を切り開く。
大人たち
「……真面目に遊びの研究しておいてよかったな」
「本当にな!」
ルネ「ちょっと待て、やっぱ研究してたのかよ!!」
だがこのとき、誰もが気づいていた。
――遊びを追求した大人たちこそ、今この国の盾になっている。




