魔物たちの参戦 ― “遊び仲間”の絆
遺跡へと続く巨大階段が揺れた。地響きとともに、王国軍の背後から影がぞろぞろと現れる。
――魔物たちだった。
丸石ゴーレムは、山のような身体を揺らしながら前へ出る。
「オォ……守ル(任セロ)」
その声音は低く、しかし確かな決意があった。
続いて、ぷよん、と跳ねながら風船スライムが転がってくる。
「ピュルル〜!(クッションになるね!)」
ルネは思わず目を瞬く。
「ま、魔物が……味方に?」
マリアンヌは当然のようにうなずいた。
「うん! この子たちね、昔ここで一緒に“迷路大運動会”したんだよ。
段差の落とし穴とか、風抜けトンネルとか、全部使い方知ってるの!」
言い終えるより早く、丸石ゴーレムが遺跡内のせり上がる石柱を――まるで合図したかのように――叩き折った。
轟音と共に崩れた石柱が新たな通路を作り出す。
「通路……? いや、まさか計算して……?」
軍人が絶句したその上を、風船スライムがふわりと飛び、罠の床の上に広がった。
ぱん、と音を立てて丸く膨らみ、罠の穴を完全に塞ぐ。
「ピュル〜ン!(これで安全!)」
王国兵たちは、ただただ驚愕するしかなかった。
「ど、どういう連携だこれは……?」
その問いに、冗談のような答えが返ってきた。
「彼女と遊んだ者は、皆“戦友”になるのさ!」
声の主はザハード。つい先日まで敵国の将軍だった男が、盾を構えて歩み出る。
その顔は戦場の猛将ではなく――まるで、昔馴染みの兄のように優しく笑っていた。
「遊びってのはな……本気でやりゃ、心が繋がる。
こいつらはそれを知ってる。だから迷わず助けに来たんだ」
マリアンヌが照れたように頬をかく。
「えへへ……だってみんな、いい子なんだもん」
遺跡内の風が一瞬やみ、奥から低い機械音が響く。
――機神オルド・ガイアが、完全に覚醒しつつある。
それでも。
王国軍、魔物族、かつての敵国将軍。
“遊び”で繋がったものたちが、今ここに集結していた。
誰一人、マリアンヌを見捨てる者はいなかった。




