暴走兵器の覚醒
行政院の奥深く――
古代文明の遺構が静かに眠る石室で、かすかな振動が走った。
それは最初、誰も気づかないほどの震えだった。
だが、次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
石壁に刻まれた紋章が一斉に赤く輝き、封印陣が爆発するように光を放つ。
何百年も沈黙していた兵器――
機神オルド・ガイアが目を覚ましたのだ。
巨大な機械の眼がゆっくりと開き、内部で魔力炉が点火される。
古代文明の残した純魔力構造体が、脈打つように稼働を始めた。
本来は国防の切り札。
だが、アレクシオンが拘束される直前に残した“価値観フィルタ”が起動していた。
――《遊戯文化:国家秩序を乱す因子》
――《排除対象:遊戯を創出する者》
――《最優先排除対象:マリアンヌ=フォン=セリウス》
機神の頭部から赤い光線が走り、王国全域に向けて警報が響き渡る。
ピ――――!!
ピ――――!!
ピ――――!!!
街の人々が顔を上げ、兵士たちが武器を構える。
文官が蒼白になって駆け込んできた。
「……こ、古代兵器オルド・ガイアが……!
“遊戯因子排除フェーズ”に入りました!!」
その言葉に、王太子ルネは天井を見上げた。
遠くで赤い光が脈動している。
「……遊戯因子って……」
彼は額に手を当て、現実逃避するように空を見つめた。
「マリアンヌのことだよな……?」
文官は震えながら頷くしかなかった。
世界が――またしても、
あの少女を理由に動き始めた。




