次章への伏線
行政院の騒動が収束し、人々が帰路につき始めた頃。
王都の空には、夕暮れの赤が滲み、祭りの残り香のような喧噪がまだ漂っていた。
泥を落とし終えたマリアンヌは、手を腰に当てて伸びをする。
マリアンヌ
「ふーっ。今日はいっぱい冒険したね!」
ルネは思わず頭を抱えつつ、苦笑する。
だが――この騒動は、終わりではなかった。
◇ ◇ ◇
その夜。
各地から不思議な報告が王城へ届き始める。
「南方で“マリアンヌ式ブランコ砲”の開発が進んでいます!」
「北の村で“巨大泥団子競技会”なる文化祭が……!」
「東の魔物領で、丸石ゴーレムが“遊具建設組合”を発足した模様です!」
「西方帝国でも、子どもを中心に“創造遊戯運動”が広まりつつあると……!」
報告を聞いたルネは、背筋に冷たいものを感じた。
ルネ
「……待って。なんか、思ったより……広がってない?」
文官
「王太子殿下。もはやこれは、王国だけの問題ではございません」
――世界が動き始めている。
たった一人の少女の「楽しいからやる!」という衝動が、
国境を越え、人種を越え、価値観さえ侵食していく。
◇ ◇ ◇
一方、マリアンヌ本人は。
マリアンヌ
「ねえねえルネ、明日も泥団子しよっ!」
ルネ
「世界規模の問題が発生してるんだよ……?」
マリアンヌ
「え? 世界も泥団子すれば仲良くなるよ!」
その無邪気すぎる宣言が、
次の“遊び創造革命”の幕開けになることを、
この時まだ誰も知らなかった。
――新たな章が始まろうとしていた。




