地下ダンジョン探検
裏庭での泥団子遊びの余韻に浸りながら、マリアンヌはふと視線を下げた。
城壁の下に、小さな扉がちらりと見える。
「……ん? これ、開くのかな?」
扉には重厚な鉄枠と、古びた魔法陣が描かれている。
注意書きには、「王族以外立入禁止」「危険」の文字が――しかし、マリアンヌにとってはただの冒険の呼び声だった。
小さな手で扉の鍵のような凹凸に触れると――カチッ。
偶然にも幼児の指が封印魔法の解除キーにぴったり合致したのだ。
「わぁ! 開いた!!」
扉がギィィィと開き、淡い光が漏れ出す。
その光の中から、スライムがひとつ、またひとつ――そしてちびゴーレムたちがよたよたと現れた。
「わ、わぁ! 友達だ!」
マリアンヌは両手を広げ、スライムに飛びつく。
ぬるぬると体に吸い付く感触に、嬉しそうに笑い転げる。
ゴーレムも手足をバタバタさせながら近づき、なぜか懐かれてしまう。
「お、お嬢様……危険です! すぐに封印を!!」
騎士団は慌てて駆けつけるが、マリアンヌは全く聞かない。
無邪気な笑顔でスライムとじゃれ合う姿は、もはや誰も止められなかった。
結果、ダンジョンの封印はさらに強化されることに――
しかしマリアンヌは、偶然押した解除方法を完璧に覚えてしまった。
「ふふふ、これで秘密の遊び場ができちゃった!」
無邪気に笑う小さな悪役令嬢。
王城の地下は、今日もゆるやかな混乱に包まれたまま、マリアンヌの手中に収まったのだった。




