アレクシオン、完全敗北
石畳の上に、アレクシオンの剣がカランと転がった。
その場に立つ百人超の群衆は、誰一人として彼の味方をしない。
泥だらけのマリアンヌは、息を切らしながらも胸を張った。
背後には、魔物、子どもたち、職人、学者、そして敵国の将軍ザハードまで。
王太子ルネも静かに佇み、彼女の方へと歩み寄る。
アレクシオンはなおも口を開こうとする。
アレクシオン
「こ、これは……国の秩序のためで……!」
ザハードが鼻で笑った。
ザハード
「秩序? ただの言い訳だ。少女ひとりすら正しく見られぬ者が、何を守る?」
学者たちが書類を掲げて怒鳴る。
学者
「彼女の創造活動は正当な文化行為だ! 拘束は越権行為に該当する!」
職人ギルドの親方
「マリアンヌ嬢はわしらの恩人だ! 閉じ込めた理由を説明してみろ!」
子どもたち
「悪いおじさんー!」
丸石ゴーレム
「オォ……(低く不満げ)」
アレクシオンの顔から血の気が引く。
世論の奔流を前に、彼はもはや抗弁の言葉を失っていた。
そのとき、カミラ副官が一歩前に進み、深く頭を下げた。
カミラ
「……アレクシオン様。私は、あなたに従うべきではありませんでした。
今回の拘束は、明らかに間違いでした。マリアンヌ様、深くお詫びいたします」
マリアンヌ
「ううん、副官さんは優しいよ。泥で滑ったし」
カミラの肩がびくっと震える。
アレクシオンは敗北を悟り、静かにその場へ膝をついた。
アレクシオン
「……どうやら、私は……大切なものを見誤っていたようだ」
ルネは淡々と告げる。
ルネ
「拘束します。多数の証言と記録が揃っている。
今回の件、あなたの権限濫用は明白です」
衛兵たちが彼へと歩み寄る。
アレクシオンは抵抗せず、そのまま連行されていった。
その光景を見届けた群衆の間に、静かな安堵の息が広がる。
そして、泥だらけのマリアンヌがぽつりとつぶやいた。
マリアンヌ
「……あー、なんかお腹すいた」
群衆
「平和だな……」




