精鋭隊+魔物+子ども軍団+敵国将軍が合流
泥だらけのマリアンヌに追い詰められるアレクシオン。
廊下の奥から聞こえてくる、ざわざわとした地響きのような音。
「……な、何の音だ……?」
アレクシオンが振り返った瞬間――
ドォォォォォン!!!!
行政院の大扉が吹き飛ばんばかりに開き、
そこから押し寄せるように大群が流れ込んできた。
「マリアンヌちゃーん!!」
「捕まえたヤツ出てこい!!」
「返せー!!」
子どもたちの怒号。
「オォォォォ!!」
丸石ゴーレムの威圧的な咆哮。
「ぷにゅるるる!!」
風船スライムのやる気満々の跳ね音。
「マリアンヌ殿ー!! 無事か!!」
精鋭騎士団までもが、剣を構えて突入する。
そして、最後列から堂々と歩み出た巨体。
「貴様――」
ヴァルザード帝国・三獣将軍の一人、ザハード。
彼の背後には帝国兵まで控えている。
「我らが恩人に……手を出したなァァァァ!!」
「えっ敵国!? ここ王国の行政院ですよね!?」
「なんで味方してるの!?!?」
王国高官たちが絶叫する中、ザハードは胸を張った。
「恩返しだ!
この少女の“水滑り台”で我が軍の士気は救われた。
そして今回、我々の国境も魔力の乱れが収まった!
この者は我が国にとっても英雄だ!」
「いや水滑り台って……」
「どんな恩返しの理由だよ……!!」
秩序警備隊が動揺でざわつく。
さらにその後ろ――
学者たちが白衣を翻し、露骨に怒りを宿した目でアレクシオンを睨んだ。
「遊びの自由は文化だ!!」
「彼女の発想がどれほど研究を加速させたか、
あなたには理解できまい!」
職人ギルドも槌を掲げて叫ぶ。
「マリアンヌ様はウチらの未来を開いてくれたんだ!!
閉じ込めるなんて許さねえ!!」
アレクシオンの顔から、すべての血の気が引いた。
「な……なんだこれは……
なぜ、こんなにも……?」
そのとき。
人ごみの中央から、王太子ルネが一歩前へ出た。
紅い瞳に静かな怒りが灯る。
「これだけの人――
これだけの魔物までもが、彼女の味方だ」
ルネはゆっくりとアレクシオンを見据える。
「それが答えだよ」
廊下を埋め尽くす“マリアンヌ側”の数百名が、
一斉にうなずいた。
「………………ひ……」
アレクシオンは言葉を失い、
圧倒的な“民意”と“好意”の塊に呑まれていく。
そしてその中心で、泥まみれの少女はにこにこと笑っていた。
「ねっ、言ったでしょ?外すっごいにぎやかだって!」




