マリアンヌ、泥まみれで“抜け道堀り”に成功
魔封牢の中。
普通なら、どんな魔術師でも脱出不能のはずだった。
――はず、である。
「よーし!!今日の“秘密探検ごっこ”は、
地下通路づくりだー!!」
マリアンヌはスコップを構え、元気よく地面へ突き刺した。
ザクッ。
「……あれ、思ったより柔らかい!」
次の瞬間、彼女の瞳がキラッと輝く。
「裏切らないねぇ、土ってさ!!」
そこからの動きは早かった。
掘る。
掘る。
掘って、
掘って、
掘りまくる。
囚人とは思えないテンションで、
ひたすらに地面へトンネルを開けていく。
「ま、待て!やめろ!」
「この床は最高位魔術で補強され――」
ガラガラガラガラッ!!!!
「抜けたぁぁあーー!!」
兵士たちの声をかき消し、
床の一部がまるで砂場のように崩れる。
「な、なんで魔封牢の床が崩れるんだ!?」
「補強魔法より、スコップのほうが強いのか!?」
兵士たちが混乱している間に、
マリアンヌは地面から大量の泥をすくい取った。
「よし、弾薬確保!」
「弾薬……?」
次の瞬間、泥団子が飛んだ。
ビシュッ!
「ぎゃあああ!!目に入った!!」
ビシュシュシュッ!!
「うわぁぁぁ!?なんで泥団子で防衛網が突破されている!?」
「魔術障壁を泥で汚されると弱点が――ッ!?」
魔封牢を設計した魔術師の泣き声が聞こえてきそうだ。
マリアンヌは泥まみれ、服も髪もぐちゃぐちゃになりながらも、
小学生男子のようなテンションで叫ぶ。
「ぬおおおおお!!突撃ぃぃぃ!!」
全身泥だらけのまま、
土の道を全力で駆け抜けて牢の外へ飛び出す。
「逃げたぞぉぉぉ!!」
「なんだこの……泥の怪物は……!!?」
兵士たちが混乱で立ち尽くす中、
マリアンヌは泥だらけの笑顔で拳を突き上げた。
「脱出成功ー!!
――っていうか、これ、めちゃくちゃ楽しいね!!」
この少女が世界を変える理由が、
今、誰の目にもよくわかる瞬間だった。




