王国行政院で不満が爆発
王都が歓声と笑い声に包まれている一方で――
王城の奥深く、重苦しい空気が渦巻いていた。
行政院。
国家運営の要となる重鎮たちが集うこの会議室に、怒りの声が響き渡る。
「――いい加減にせねばならん!」
机を叩きつける音とともに、保守派筆頭の高官アレクシオンが立ち上がった。
白銀の髭を揺らし、額にはこれでもかと深い皺が刻まれている。
「国中が遊びに浮かれている! 魔物を従え、城壁で大縄跳びだと!?
そんなふざけた文化を、国家の柱として認めるなど……断じてあり得ん!」
他の高官たちは視線を逸らしたり、困ったように咳払いをしたりと、口を閉ざしている。
「しかし、アレクシオン卿……結果的には大きな収益にも……」
弱々しく弁明した文官がいたが、彼は即座に切り捨てられた。
「『結果的に』など信用できるか!
魔王級討伐も、ダンジョン安定化も……あれは偶然だ!
一少女の思いつきと、魔物との“遊び”の延長にすぎん!」
アレクシオンの怒号はさらに続く。
「偶然による世界救済など、国の仕組みに組み込んではならん!
あれは国家の根幹を揺るがす悪だ!」
その横で、彼の側近であり“秩序警備隊”を率いるカミラが静かに頷いた。
黒髪をきっちりまとめ、鋭い眼差しを持つ女騎士だ。
「……同意いたします。
遊びが軍事と政治を凌駕するなど、正常ではありません。
このままでは、国に“秩序”という柱が残りません。」
行政院の空気はさらに冷え込む。
「真面目な政治が笑いものになっている!
兵士たちは魔法ドッジに夢中、学者は宝探しゲームの監修!
民はおまけに“遊戯庁バッジ”を誇りにしている始末!」
アレクシオンは深く息を吸い込み、宣言した。
「――国を正すために、まずあの少女を排除せねばならん。」
静まり返る会議室。
だがこの瞬間、王国最大の内部対立が動き始めたのだった。




