マリアンヌはただ遊んで帰るだけ
ダンジョンの奥――さっきまで世界を揺るがす脅威だったはずの巨大魔物の残骸を背にして、一行はぐったりと地面に腰を下ろしていた。
マリアンヌだけは元気いっぱい、今日の遠足の感想会を始めている。
「今日の遠足、めっちゃ楽しかったね!」
満面の笑顔でそう言うマリアンヌに、ルネは地面に突っ伏したまま叫んだ。
「遠足じゃない! 調査だ! あと危機だったんだよ!!」
「え~? でもほら、ちゃんと解決したよ? ねっ、次はもっと“飛ぶやつ”作ろうよ!」
「もうやめてくれェェェェ!!」
ルネの悲鳴は、さっきの魔物よりも響いた。
しかしマリアンヌは首をかしげるばかり。
その背後で、丸石ゴーレムや風船スライムたちが、期待に満ちた目で同意の声を上げる。
「オォォォ!!(賛成!)」
「ほら見て! 魔物たちももっと飛びたいって!」
「だからそれが問題なんだよ!!」
ルネは頭を抱えた。
周囲の精鋭隊も、青ざめた顔で口をそろえる。
「やめてくれ……世界が……世界が保たない……!」
マリアンヌはそんな悲鳴をよそに、すでに次の新作おもちゃの設計図を空中に描き始めていた。
彼女にとっては、世界最深部のダンジョンすら、ただの“ちょっと広い遊び場”なのだろう。
その光景を見届けながら、ナレーションは静かに語る。
――こうして世界の大危機は、
またもや一人の少女の“遊び”によって解決された。
――しかし、これはまだ序の口。
――次章では、ついに“世界規模の遊戯革命”が訪れる。
その中心にいるのが、誰であるかは言うまでもない。
マリアンヌ
「ねぇねぇ、次はもっと高く飛ばそっか! 空の上まで!!」
精鋭隊
「やめろォォォォォ!!」
ルネ
「……本当に世界、もつのか……?」
――そして幕は閉じる。




