誰も真相を理解していない
封印核の光が落ち着きを取り戻し、
魔王級モンスターが再び沈黙すると――
ダンジョン最深部には、妙な静寂が広がった。
兵士たちはしばらく呆然とし、
学者たちは互いに顔を見合わせ、
精鋭隊の誰もが「何が起きたのか」を理解できなかった。
学者A
「……封印が……勝手に……再起動した?」
学者B
「あり得ん。あの規模の魔力衝突があったのだぞ……?」
軍務官
「しかし魔王級は再び封じられている。
これは……成功……ということか?」
精鋭たち
「何が……どうなった……?」
全員が“成功した事実”だけは見ている。
だが、その因果を誰も説明できない。
◆
丸石ゴーレムはというと、
壁にめり込んだ姿勢からむくりと起き上がり、
まるで誇らしげに胸(?)を張っている。
風船スライムもぷるぷる跳ねながら、
「上手くいったよ!」とでも言いたげに揺れていた。
だが大人たちには、それがただの混乱にしか見えない。
兵士
「……もしかして……彼らが?」
学者
「いや、いやいや……偶然だろう……?」
兵士
「偶然で……魔王級が……?」
学者
「考えるな……混乱する……!」
◆
そんな中で、ただ一人――
王太子ルネだけが、震える手で顔を覆っていた。
ルネ(心の声)
(……違う。
わかってる。
わかってるけど……認めたくないだけだ……)
思い返せば、
魔王級が覚醒しかけた“あの瞬間”。
すさまじい速度で飛来した巨大物体。
その軌道。
その衝撃。
どう考えても、原因はひとつしかない。
――マリアンヌの巨大スリングショット。
ルネ(心の声)
(あれが……世界を救った……?
そんな……そんな馬鹿な……)
だが、
本人はゴーレムの頭を撫でながら、
マリアンヌ
「見て見てルネ!成功!成功だよ!」
と、無邪気に笑っていた。
ルネ
「成功……か……
いや……違う……違わないけど……違う……!!」
結局――
精鋭隊の誰も、王国の学者たちも、
ただの一人も“真相”を認識できなかった。
ただし、ルネだけはうっすら悟り始めている。
最も恐るべきは――
あの少女の“遊び”だ。




