ダンジョン最深部:魔王級モンスターが目覚める
変質したダンジョンを、奥へ奥へと進むにつれ――
空気は冷たく、重く、まるで世界そのものが息をひそめているようだった。
そして最深部。
そこには、脈動する巨大な“魔力核”が鎮座していた。
黒い光を吸い込み、赤い鼓動を返す、異様な塊。
学者
「ま、間違いない……魔力核の封印が……崩壊している……!」
魔術師
「魔力流が乱れていたのは、このせいか!」
誰かが息を呑んだその瞬間――
魔力核の中央に、巨大な“影”がゆっくりと姿を現す。
それは角をもち、四肢は岩塊のように太く、
体表には稲妻のような紋様が浮かぶ。
兵士
「な、なんだあれは……!?」
学者
「……魔王級……!
古文書に記されていた“地殻獣バル=ロア”……!
眠ったまま存在するだけで世界の魔力を安定させていたはず……!」
魔王級モンスターは目を開きかけ、
封印の破片がぱらぱらと落ちる。
兵士
「や、やばい! 撤退を!!」
だが――遅かった。
魔王級
「■■■■■■――ッ!!」
咆哮と共に、空気がただ震えるだけでなく、
空間そのものが折れ曲がったような衝撃波が走る。
強化魔術を張っていた騎士でさえ、
壁に叩きつけられるほどの圧。
兵士
「ぐっ……あ、足が……立てない……!」
魔術師
「魔圧が強すぎる……! 魔力循環が乱される……!」
ルネだけが必死に剣を構えて前に出る。
ルネ
「全員下がれ……!
これ以上近づくな! 俺が――」
だがその時。
マリアンヌは。
ルネの横をすり抜けるように、
別方向へ軽快に走り出していた。
ルネ
「ま、待て! どこへ行く気だぁぁぁ!!」
しかし、彼女の視線は魔王級ではなく――
最深部の、巨大な柱の間の空洞をキラキラと見上げていた。
マリアンヌ
「あっ、あのスペース……
うちの“超巨大スリングショット”置くのにピッタリじゃん!!」
ルネ
「絶対違うぅぅぅ!!!」
魔王級が目覚めようとしている最中、
世界の命運が揺らぐ場面で――
マリアンヌの脳内だけは、
**完全に“遊び場の拡張計画”**が発動していた。
次の瞬間。
彼女の言葉が、世界のバランスを“別方向に”揺らすとは、
この時点では誰も知らなかった――。




