マリアンヌ、何も考えず祝う
王都の大通りでは、国家遊戯庁設立の号外が舞い、
国民たちが「新しい時代の幕開けだ!」と歓声を上げていた。
その中心人物――マリアンヌ本人はというと。
「へぇ〜、遊び庁ってできたんだ!すごいね!」
パンをかじりながら、まるで天気の話をするような調子で言う。
隣にいたルネは、こめかみを押さえた。
「……君のせいだ」
「えっ、わたし?」
「わたし以外の誰がいる!!」
ルネの絶叫が虚しく空に吸い込まれる中、
マリアンヌは、まるで反省の欠片もなく、両手をぱぁっと広げた。
「じゃあさ!今度は“空飛ぶ宝探し”しよ!」
「………………はい?」
「魔法で気球浮かべて、上から宝を投げるの!」
「やめろォォォ!!」
ルネの叫びが響き渡る。
だが、その声は――周囲の技術者たちの輝く瞳によって、完全にかき消された。
■技術者たち(目が輝いている)
技術者A
「き、気球……新技術への投資案件……!
浮力魔法と組み合わせれば、空中都市計画にも応用できるのでは……!」
技術者B
「宝の落下軌道、魔法で制御できれば……新しいスポーツが……!」
技術者C
「落下物をキャッチする魔法器具も作れそうだ!」
■ルネ
「やめてくれ……!!
誰か……誰か止めてくれぇぇぇ!!」
だが、誰も止めない。
むしろ、マリアンヌが次に何を言い出すのか、期待で胸を膨らませている始末だった。
(ああ……また国の未来が……あの子の思いつきで……)
ルネは天を仰ぎ、深く、深く嘆息した。
――そして、王国の遊戯革命は、さらに加速していくのだった。




