ガーデンチェスの平和性が消し飛ぶ
ガーデンチェス競技会場。
広大な庭園に整えられた生垣の迷路、石畳のマス目――
本来なら、静謐で優雅で、知性と戦略を楽しむ高貴な遊び。
……だった。
今日までは。
審判
「それでは、今年度ガーデンチェス大会――」
マリアンヌ
「ねえねえ!チェスの駒って動くんでしょ?」
審判
「え? ……まあ、駒役の人が動きますので」
マリアンヌ
「じゃあさ!
魔物にやってもらおうよ!そっちのが強そう!」
審判
「魔物!?」
観客
「魔物!?」
魔物たち
「マモノ?」
「アソブ?」
「イイ……?」
つる草ウルフはしっぽを振り、
風船スライムはぷよぷよ跳ね、
丸石ゴーレムは「マス……乗ル……」とやる気満々。
あまりに自然に集合する魔物たちに、
審判も何も言えなくなる。
■魔物チェス、爆誕
開始の笛が鳴り響く。
つる草ウルフ(ナイト役)
→“跳び越える”を独自解釈し、
相手駒(人間)を軽々とくわえてぴょんぴょん運ぶ。
観客「それ反則では!?」
別の観客「……いや、ナシではない!」
さらに別の観客「むしろアリだ!!」
風船スライム(ポーン役)
→前にしか進めないはずが、
敵駒に体当たりして“弾む”。
なんか二マスくらい進んでる。
丸石ゴーレム(ルーク役)
→一直線に進むはずが、
なぜか観客席に向かう。
観客
「逃げろ!!」
「いやゴーレムかわいい!」
「私は当たりに行く!!」
選手
「勝敗より命の確保を優先したほうが……!」
■文化、その場で完全に書き換わる
学者A
「これは……チェス……なのか……?」
学者B
「いや……“新しいチェス”だ……!」
技術者
「魔物の安全装備を作らねば!!」
「ヘルメットとひづめカバーを!」
「ウルフ用の噛みつき制御マウスガードも!」
次々と職人が走り出す。
ガーデンチェスは優雅さを失った代わりに――
かつてない迫力と人気を得た。
マリアンヌ(満面の笑み)
「すっごーい!これもっと広い庭でやろ!」
王太子ルネ(頭を抱えながら)
「……また国の文化が進化してしまった……」
しかし会場は熱狂。
誰も止める者はいない。
こうして、廃れかけていた“ガーデンチェス”は、
マリアンヌによって
“魔物チェス”という新スポーツへと革命的進化を遂げたのだった。




